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「昂輝! 」
蒼い炎から昂輝をひっぱりだした大和は昂輝の顔を叩いた。
なぜ己のいないときにこんなことが起きるのか。 大和は舌を打つ。
なにより腹が立ったのは昂輝の首につけられた蒼い紋様。 己のつけた黒い紋様がかき消されている。 昂輝の首には無数の噛み跡。
無理につけられたのは明白だった。
「大丈夫ですか、昂輝さんは」
眉をひそめた大和に声をかけたのは、昂輝と同じように蒼い炎から助けだした由希を腕に抱えた辰美の姿だった。
辰美の肩が蒼く燃えている。 それを指で払った辰美は息を吐きだすと大和たちのそばに腰をおろす。
痛みと精神的なショックで意識を失った昂輝を心配そうに見つめる大和の姿。 その首につけられている蒼い紋様に舌を打つ。
「俺の紋様をかき消したようだ」
「全く横暴だ」
昂輝を大和が抱きしめたとき、昂輝がぶるりと身を震わせた。
ゆっくりとまぶたをあげる。 しばらく呆然としていた昂輝だったが目の前に大和がいるのがわかるとすぐに顔をひきつらせて涙をこぼした。
「昂輝、大丈夫か」
ぼろぼろとこぼれた涙を拭おうともせず、昂輝は己の首に触れる。
昂輝の首に爪が食いこんでいく。 ぷつりと皮膚が裂け、そこから血がにじみでてくる。 その姿にやめろと大和が声をあげた。
「だめだ、昂輝」
「こんなのいらねぇ! こんなの… お前じゃなきゃ… 」
嗚咽をもらしながら昂輝は声を絞りだす。
抱きしめようとした大和を昂輝は突き飛ばした。 しりもちをついた大和をよそに昂輝は己の爪を鋭く伸ばした。 首に狙いを定める。
「昂輝! 」
間に合わない!
大和が必死に手を伸ばすも昂輝の首に爪が食いこまれる。 血が滴り落ちる。 と同時に昂輝の体はゆっくりと倒れた。
「昂輝! 」
悲鳴と声を震わせて大和が叫んだ。
倒れた昂輝に駆け寄り、頬に触れる。 血が止まらない。 次から次へと溢れてくる。
「だめだ、死んだらだめだ! 」
昂輝を呼ぶ大和の声に涙声が混じる。
なんとか血を止めようと己の制服を脱ぎ捨てて傷口に押し当てるも制服はすぐに真っ赤に染まっていく。 大和の瞳からぼろぼろと涙がこぼれて、地面に染みこんでいく。
「昂輝! 」
大和の呼ぶ声が辺りに響き渡った。
何度も昂輝を呼ぶ。 どうすれば血を止められる? どうすれば助けられる?
頭が真っ白に染まっていく。
抱きかかえた大和のズボンに赤い染みをつくっていく。
誰でもいい、昂輝を助けてほしい。
涙にぬれた昂輝の体を大和が強く強く抱きしめた。