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「簡単さ、刻んだ相手よりも力を上回る奴がそれをかき消して上書きすることができる。 そしたら前に刻んだやつは手出しができなくなる」
昂輝の首をなでながら男はつぶやく。
男の言葉に昂輝は瞳に涙を浮かべた。 心の底から男を拒否する昂輝はなんとか逃げようと身を揺すり、嗚咽をもらす。
がくがくと身を震わせてやめてくれとつぶやく昂輝の姿。
「まれに夫婦になる奴らが刻印をつけたりするけども、こいつの場合はどうなんだろうなぁ」
男の吐きだした言葉。
由希がなにかを言う前に男は昂輝の剥きだしの首に食らいついた。
と同時に昂輝の口が大きく開く。 悲鳴としてこぼれたそこに指を押しこんだ。
ぱきんという音が響いたと同時に昂輝の首にある紋様が消え、蒼い紋様が浮かび上がる。
それは男の物になったという証。
「さて、これからはお楽しみだ。 ま、由希も観客としてみとけばいいだろう。 意外に面白いのかもしれないぞ」
呆然自失となってしまい、ただぽろぽろと涙をこぼす昂輝の姿をただ見ているしかなかった。
助けたいのに蒼い炎が邪魔をして近づくこともできない。
「…… 大和」
昂輝がつぶやく。
そして世界は変わる。
「邪魔が入るか」
男がつぶやくと同時に部屋は真っ白な世界へと変貌する。 あっという間に真っ白の世界に変わったと思うと中心から赤い炎が見えたと同時に部屋一面が真っ赤に染まった。
由希を捕えていた蒼い炎も掻き消え、自由になる。
「お前だけでも」
昂輝の上にいた男はまっすぐに由希に突進して、手を伸ばす。 あと少しでつかまる。
由希が目を閉じたとき、由希の体は後ろから抱きしめられた。
誰がと姿を確認する前に由希の視界は後ろの誰かによって塞がれる。
「なるほど」
男のつぶやきが聞こえた。
そして世界が炎に飲まれて、由希の視界も真っ暗に染まった。
次に由希が気がついたときは、なぜか公園にいた。
たしかに学校の校門で引きずり込まれたはずなのに、どうしてこんなところにいるのか。
「なにしてんのさ、由希」
拍子抜けしたような、聞きなれた声が由希の耳に入ってきた。
由希が振り返るといつものおかしいと笑う辰美の姿が。
いつの間に辰美が現れたのだろうか、疑問の瞳をむける由希に辰美は笑う。
「昂輝さんは!? 」
由希の問いに辰美は帰ったよとあっけらかんと答えた。