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男の尾が絡みつく。
着ていた衣服に腕が忍びこむ。 背中から倒されて顎をつかまれた。
「人、か。 もう何十年と見てなかったからえらく久々な気がするな」
つぶやいた男は由希の唇に食らいつく。 猫特有のざらついた舌が由希を求めて絡みついていく。 時折、唇を離してもう一度。
「放してください! いやだ」
「そんなに嫌がるな。 別に痛いことをしようってわけじゃないから」
由希の服をまくりあげ、ズボンに手をかける。 男の肩を押すも反対に強く押し返されて、うまく抵抗もできなかった。
「なにもしないって言ったのに」
「ははっ、そんな言葉を信じるのか。 なんともまぁ純真なことだ」
ズボンを勢いよく引きずり降ろされ、左右に足を開かれた。 体を密着され、いやだと由希が声をもらしたのと扉が開くのが同時だった。
「なにしてんの」
不服そうに声をもらした大之助。 その腕には黒猫が抱えられており、男に対してしゃあっと高い声をもらした同時に飛びかかった。
「うわっちょっ姉さん、悪かったって」
男に対して爪をたてる黒猫をよそに男のそばから由希をひっぱりだした大之助は乱れていた衣服を整えて、由希をそばに座らせた。
「なんで由希がここにいるのさ」
由希を膝に座らせた大之助。 満足した黒猫が由希の上に戻ってくる。
部屋の隅で黒猫のひっかかれてぼろぼろになった男が由希たちのもとへ戻ってきた。 痛いといいながら腰を下ろした男はため息をこぼす。
「ここに来るときに襲われているのを見つけて拾ってきたのさ」
黒猫をなでる由希の姿をちらりとだけ見て大之助はもう一度、視線を男に戻した。
「なんで大之助さんがここに? 」
「こいつにたまには猫カフェに行かないかって誘われたから。 そしたら由希がいた」
由希のそばによってきた三毛猫の姿に黒猫は唸り声をもらす。 それで近寄れなくなった三毛猫はゆっくりと部屋から出ていく。
「ほら、黒猫が唸り声をもらすから」
大之助の言葉に黒猫はぷいと顔を横にそらした。
「そういえば由希、名前を名乗っていなかったな。 甚一郎だ」
甚一郎、と名乗った大之助の兄はがははと声をあげて笑った。