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猫カフェ日和

 外は曇っている。

 由希が家をでた頃までは太陽が雲に隠されることなく空に君臨し、辺りを己の力で温めていた。 何度、太陽に手をかざしても涼しくなることはなく肌を焼いていく。

 今日は太陽が空を君臨したままだろうとなにも考えずに家をでた由希だったが、それは間違いだった。

 家をでて一時間もせずに空は雲に覆われていった。 いまにも雨が降りだしそうなくすんだ空にため息をこぼす。

「最悪、これは絶対なにか嫌なことが起きそうな気がする。 早く帰ろう」

 そんなことをつぶやく。 

 と同時に伸びてきた緑色の手に路地裏へと引きずり込まれた。 ほらやっぱり、と心の中でつぶやいた。

 由希を引きずり込んだ獣は壁に由希の背中を押しつけると口を塞ぐ。 それはまた大きな獣だった。

 よく路地裏に入れたものだと由希は獣に抑えられながら冷静に考える。 獣は体と同じ緑色の舌をのぞかせるとそれは由希の頬を撫でた。

「人、人、人」

 獣は呪文のようにつぶやく。 由希の頬に触れ、首に触れ。 体中を撫でまわして満足した獣は由希を壁から剥がして由希を抱きしめる。

「放してください」

「満足、したらな」

 獣は由希の尻をわしづかんだ。 力加減なく握られて由希は顔をゆがめる。 由希の尻を揉みしだきながら、その奥にある秘部に触れる。 びくりと体を震わせた由希に獣は口角をあげて笑みを浮かべる。

「ケガをしたくなかったら、おとなしく、していろ」

 たどたどしく間を開けながら話す獣は由希のズボンに手をかける。 嫌だと首を振った由希は獣から逃れようと獣の肩を叩く。 獣は由希の顔を壁に押しつけてズボンを引きずり下ろした。

 逃れようとした由希の両腕を後ろ手に交差させて固定した獣は己のズボンに触れる。 悲鳴をあげた由希の足を開かせようと由希の剥き出しの太ももに触れた。

「ほう、面白そうだ」

 あと少し、というところでそんな声が由希の頭上で響いた。 

 顔をあげるとにゃあと鳴いた二匹の猫と猫又の男が、壁の上に腰を下ろしていた。 己の唇を舐めて由希たちのそばへと降りてきたその猫又に由希は見覚えがあった。

「あなたは、大之助さんのところにいた…… 」

「久しぶりだな、由希といったか」

猫又は由希の姿に手をあげて答える。 と同時に己よりも何倍も大きい獣の体をえんやと蹴飛ばした。

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