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「僕だって聞きたいさ。 なんで大之助さんがそんなに僕を気に入っているのか」
気に食わない少女は由希の頬をつまむ。 つまんだとき、その柔らかさにほうと表情をほころばせた。 撫でて、揉んでほうともう一度。
いきなり揉まれる頬にいててと思いつつ、少女はそれが気に入ったというように何度も撫でる。
「これを兄様が気に入っているのかな」
頬をなでて、由希の首に指を這わせて、唇に触れる。 どこまでも柔らかい由希の体に少女は気に入ったと上着をつかむと勢いよく左右に引き裂いた。
弾けたボタンが茂みの中へと落ちていく。 また服を破かれたとひっそり由希がため息をこぼすも聞こえていない少女は由希の体を眺めている。
「なんか、柔らかくて、おいしそう」
「食べないでね! 」
ごくりと喉を鳴らした少女に由希は身震いした。 思わず口からでた言葉に少女はへの字に口を結んだ。 少しくらいとつぶやく少女にもう一度ため息をこぼしたとき、茂みが揺れた。
風は吹いていない。 誰か、もしくは墨たちが来てくれたのだろうかと期待をこめて視線を送った。
しかしそこにいたのは木に紛れそうなほど緑色の体をもった巨躯、由希の何倍も大きい二の腕をもったその男。 一目見てわかる、この男は人ではない。
視線がぶつかって、ひっと息を飲む。 ふっと男が笑った気がした。 獲物を見つけた、と。
「いいのがいるじゃないか」
男がそばへとのっそりと大きな足をもちあげてやってくる。 由希の上着をつかんでいた少女は一旦、由希から手を離すと男へと向き直った。
「これはあたしの獲物だよ!! よそ者はどっかいきな!! 」
耳と尾をぴんと立たせて男をにらみつける少女。 その姿に男はがははと盛大に声をあげて笑うと少女の腕をつかんだ。 少女がなにかを言う前にその体が宙に浮いた。 あっと由希は声をもらす。
少女の体はいとも簡単に茂みへと飛ばされた。
「邪魔なんだよ、化け猫が」
少女をいとも容易く投げ飛ばした男はそばに倒れていた由希の腕をつかみ、上に持ち上げた。 縛られた腕がひりひりと痛み、負荷のかかった肩が痛んだ。 顔をしかめた由希の顎をつかまれて視線がぶつかった。
「たしか、人の体は気持ちがいいって言ったな。 女も……男も」
男が己の唇を舐めた。