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「由希、大和は? 」
店の中で本を読んでいる大和を指さすと大之助はため息をこぼした。 由希を抱えなおして、大之助が店の中に入るといままでの出来事がなんでもなかったように読書にふける大和の姿がある。
そんな大和のそばまでやってきた大之助は大和の周りにある本を一冊拾い上げる。 それをまっすぐに大和の頭に振り下ろした。
「この愚弟が」
「いった、なんですか、兄上」
「由希が襲われて泣いてんのに、なにのんきに本なんか読んでんの」
いままでのやりとりを全く知らない大和はえっと声をもらすと大之助の肩に抱えられている由希を見つけた。
「本が好きで読むのは全然かまわないけど、由希が危ない目にあっているなら気がついてよ。 あやうく連れていかれそうになっていたし」
大之助の言葉に大和はやってしまったと息をつまらせた。 いまだ大之助に抱かれている由希の頬に触れてごめんとつぶやいた。 大之助から由希を受け取った大和は由希の頭をなでてぎゅっと抱きしめる。
「ケガをしたわけではないですから、大丈夫ですよ」
「良くない。 俺のせいで危ない目にあったんだから」
由希を解放すると大和は己の周りに散らばっていた本を片付けていく。 その姿を眺めつつ由希は店のお菓子を補充する大之助の隣に。 何種類とあるお菓子をわかっている大之助はすべてきれいに補充をし終えるとふうと息を吐きだして店の中へと入っていく。
「おわびになにか奢るから、どこかいこう」
大之助についていこうとした由希を大和は引き留めた。 己の鞄を手に、もう片方の手で由希の腕を引いていく。
「おいしいケーキをだしてくれる喫茶店があるんだ」
大和の甘い言葉に由希はつられてついていった。