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入り口から入ってきたここの主人、大之助。
大之助の存在に視線を向けた由希だったが、いつもと違う大之助の雰囲気に息を飲んだ。 いつものおおらかでひょうひょうとしていた大之助が大和を襲った獣たちに嫌悪の瞳を向ける。
見たことのない、普段は隠しているだろう牙をむきだしにした大之助は由希を抱きしめていた大和を己の腕にひきずりこむと力任せに大和の服をひっぱり、大和の翼をその場に出現させる。 片方の翼からはうっすらと血が垂れている。 それは獣たちによって引っ張られたものだった。
「大和に手をだしたのか」
そして服をぼろぼろに、首に噛み跡を残した由希の姿にも舌を打った大之助は大和を由希に押しつけて獣たちの前に立った。
「いつまでも大和にかみつきやがって」
大之助の耳がぴんと立ち上がり、二つある尾を分かれさせる。 その尾でさえもピンと立ち上がり、指の先から爪を伸ばす。
「兄上、だめです! 」
大和が叫ぶ。
大之助の爪は獣たちを捕え、その尾にむきだしにした牙をつきたてる。 悲鳴をあげた獣たちに大和はだめだと兄を止めようと手を伸ばす。
獣たちを店の外へ。 とどめと言わんばかりに蹴飛ばした大之助の背中を大和がつかんだ。
「兄上、私は大丈夫なので」
「いい加減、しつこい」
足蹴にした大之助はつぶやくともう一度、大和を胸に抱きしめる。 何度も確認するように大和の体をなでて服をめくりあげてほかに傷がないかと確認。
なにもないと確認が終わると安堵の息をもらして大和の頭をなでた。
「なんでそんな出来損ないがいいいんですか! 」
獣が悲痛な声をもらす。
あとからきた由希の体の確認も終わると由希の頭も撫でて、二人に店に入れと背中を押した。
「そいつばっかり! ほかの兄弟は」
その叫びに由希が疑問を抱く前に大之助は店の扉を完全に閉め切ってしまった。
あとに扉を叩く音が聞こえるも、大之助が店の柱を思い切り蹴飛ばすと音はひとつもしなくなり、大和の足から力が抜けてその場にしりもちをつく。
ゆっくりと息を吐きだす大和を肩に抱えた大之助は由希の背中を押しながら居間に戻ると大和を下ろした。