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少しずつ評価とかブクマが増えているのでうれしいです。

お読みくださっている皆様ありがとうございます。

 騎士団が追撃戦に入ったという事もあり、奇妙に弛緩していた空気の中でのその声は本陣には異質なものに聞こえた。


 「何者か調べてまいります」

 「いや、構わん。通せ」


 妙に切羽詰まった声だ。あるいは誰か高級士官の負傷か戦死が遅れて確認されたのかもしれないと考え、王太子は声の主を通すように命じた。

 進言と言う言葉とは違う予想であったが、それだけ苦戦と苦悩の後に気が緩んでいたのだろう。

 招き入れられ膝をついた騎士は全身が返り血や泥まみれだ。若いのは解るが顔ははっきりわからないぐらいに汚れ、前線で働いていたのが見て取れる。王太孫がその姿を見て息をのんだ。

 それを横目に見てまだ戦場は早かったかな、と思いながら王太子は声をかける。


 「何者か?」

 「ツェアフェルト伯爵家のヴェルナー・ファン・ツェアフェルトと申します」

 「典礼大臣のご子息か。聞き覚えがある。若いが優秀らしいな」


 礼儀は少々問題があるもののここは戦場だ。今は厳しく言う必要はないだろう。それに若い人材は大切にしなければ、と考え発言を促した。

 だが次の一言には眉をしかめて怪訝な表情を向けざるを得なくなる。


 「王太子殿下、兵を引かせて下さい」




 「王太子殿下、兵を引かせて下さい」


 そういえば努力家の俺の名前は王家にも届いていたんだったな。発言を聞いてくれる下地になった過去の俺良くやった。そんなことを考えながら発言を続けた。

 案の定と言うべきか、周囲の騎士が何を言ってるんだこいつは、と言う表情を浮かべる。俺だって驚きだよ。冷静さを失った前線はあっさりこんな手に引っかかるんだな。


 「何を……」

 「待て。ヴェルナー卿、何故にか」


 幸か不幸か王太子は俺の緊張感を把握できる程度には冷静であったらしい。横の騎士を手を挙げて制してくれた。

 正確な情報が伝わってたら俺が来る必要もなかったのかもな。


 「敵の動きが奇妙です」

 「奇妙?」

 「敵の首魁と思しき魔物は騎士団が倒している。何もおかしなことはあるまい」


 若い奴はこれだから、と言わんばかりに横から王太子の取り巻き……もとい、側近が割り込んでくる。気にするもんか。


 「敵は逃亡でも退却でもなく、後退しております。知恵のないと思われる虫型も含めて、一斉に」


 事実だけを一気に口にする。そう、敵は一斉に、全部が森目がけて後退したのだ。散り散りになって逃げだしたのとは違う。

 相手は虫やら獣やらと、森の中でも行動の自由度は高い。一方で重い鎧を着た騎士が森の中に入ればどうなるか。

 王太子は一瞬でその言葉の意味を理解したらしい。血相を変えて立ち上がった。


 「引き鐘を鳴らせ! 騎士団を呼び戻す! それと残っている人員ですぐに陣を組みなおせ!」

 「で、殿下?」

 「急げ!」


 顔を向けられた騎士が飛び出していく。なるほど、これが命令し慣れている人間の声か。俺ですら思わず反射的に応じそうになったぜ。

 そう思いながら更に一言、これは俺個人の意見を追加する。


 「殿下、僭越ながら、王太孫殿下には王都城門の守備をお任せになられてはいかがかと存じます」


 言外に言う。足手まといの子供は先に王都に帰してはどうかと。

 言葉通りに取ったのか、言外の意味を理解したのか。王太子は頷いた。


 「そうだな。メーリング、ファスビンダー。ルーウェンを補佐し補給部隊と共に負傷兵を連れて王都北門の守備に入れ」

 「……はっ」

 「承りました」


 騎士二人がまだ戸惑っている王太孫を連れて本陣を出ていく。王太孫ってルーウェンって名前なのか。ゲームだと名無しで死亡報告しかなかったから気にしてなかったぜ。


 「ヴェルナー卿、卿の隊は本隊に合流せよ。もう少し働いてもらうぞ」


 甲高い金属の鐘音が響き出す中でとんでもないことを仰せになられましたよ、王太子殿下。

 断るわけにはいかないだろうなあ。


 「かしこまりました。すぐに部隊に戻ります」


 もう少し頑張るとしますかね……はあ。

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…


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