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総合評価が83,000pt超えていましたー!

評価してくださった方が5,000名様、

ブクマ登録してくださった方も18,000名様超えました!

やっぱりこういう形で評価、応援してくださるほうがやる気出ます!

更新や誤字報告もありがとうございます、更新も頑張りますよー!

 話を聴き終わってため息をついてしまった俺は悪くない、と思う。ノイラートがそれをフォローするように続けた。


 「ただ、さすがに敵が大神殿に向かおうとすると王国軍も一斉に攻勢に出ますので」

 「敵もあからさまにはこっちに背中は向けられない、と」

 「はい。それに各貴族家の方も臆病ではありませんので、指揮階級の方々には戦意があるのです。むしろ意欲のありすぎるものを抑える事さえあります」

 「さすがにフィノイを敵の手に渡すわけにはいかない、と言う点では将兵が共通の意識を持っておりますから」


 シュンツェルが付け加えた内容まで聴いて頭痛を感じてしまう。王国軍にはとりあえず敵には自由にさせない以外の共通目的がないのか。

 いや分けようと思えば目的意識の違いで分けられるんだろうけど、見事なまでにまとまりはない状況だな。かき集められた軍だからむしろ良く統率されているとさえ言えるのかこれ。しかしまあ。


 「公爵の目論見が半分は当たっているようだな。問題はどこでいつまで膠着していられるか、か」

 「は?」


 ノイラートとシュンツェルがよくわからない、と言う表情を浮かべた。ちょっと飛躍しすぎたか。こっちは二日間ぐっすり寝て考える時間があったからな。体動かせないんで考えるしかなかったと言うか。


 「順を追って考えてみるとしよう。まず二人もヴァレリッツの様子は見たな」

 「はい」

 「忘れられません」


 そう、ヴァレリッツの住民を含む生き物は文字通りむさぼり食われていた。つまり爬虫類軍は死霊兵と異なり物を食うんだ。


 「連中も食事はする。だが王国軍が野戦陣で半包囲しているとなると敵は食い物を狩りには行けない」


 王国軍の将兵を餌とする考え方もあるだろうが、草食動物じゃないんだから向こうにも損害は出る。奴らは人肉食うのに抵抗はなかろうが王国軍の将兵だって一方的に食われる気はないからな。

 そうなると敵だって食料が潤沢と言うわけでもないだろう。戦場で王国軍の将兵を食っていたというのは、案外敵も腹を空かせているのかもしれない。


 「ということは野戦で敵を兵糧攻めにしていることになる。ここまではいいんだ」


 こっち側の問題。まずフィノイの大神殿。そりゃ少しは備蓄もあるだろうが果たして長期の籠城に耐えられるのか? と言う問題がある。

 それにもともと神官とかには荒事向きの性格してない人も多いし、長期戦になるとダレてしまう危険性も高い。早く助けに来いと王国軍が煽られる可能性もある。


 「そして王国軍。相手を飢えで消耗させるという選択肢はありだったと思うが、こっちも兵数が多すぎる」


 一部貴族の方々がやる気出しすぎたんだろう。人間はゲームのように決まった予定通りには動かない。もとはと言えば脳筋世界である上に、宰相閣下が緊急出動令を出したことにもあると思うが、敵の狙いがフィノイだったということもあるだろうな。

 現状では王家や貴族と神殿の関係は悪くないが、王権と神権で権力のいがみ合いが発生することはままある。神殿側に恩を押し売りするのにいい機会だと思った面は間違いなくあるだろう。疫病とかが発生した時には僧侶系の魔法が頼りになることもあるから、神殿に恩を売りたい気持ちはわかる。

 もう一つの理由に関しては想像だけなんで今は言及しないでおこう。


 そして別の誤算は周辺状況だ。これは自分の目で確認はしていないが多分間違っていない。


 「補給不足の解消として現地で魔物を狩ろうにも、魔軍が行軍中に食いつくしてしまったんで絶対数が少ないんだろう」


 ヴァレリッツの街ひとつ食いつくすほどの食欲だ。フィノイに向かうまでも遭遇したものは何でも食いつくして来ているに違いない。軍に合流する前に確認したデンハン村も酷い状態だったし。見た目爬虫類の癖に軍隊アリだなまるで。

 魔軍同士の場合は共食いするのか、それとも彷徨う魔物ワンダリングモンスターと魔将の直属は別物なんだろうか。実際、人間から見れば全部魔物には違いないが、人間同士で国ごと、階級ごとにいさかいがあるように魔軍にもなにかこう格差のようなものはあるのかもしれない。この辺は正直謎だが魔物に聞いたって答えてくれるとも思えんしなあ。

 それはともかく、王国軍は緊急出動なんで補給面はどうしても後手に回っているだろうし、魔物を狩るという現地調達の手段が失われ、フィノイ近隣で大軍の拠点になりえたヴァレリッツは崩壊状態。


 「敵を飢えさせているつもりがこっちまで飢えそうになっている、って言うんじゃ笑えない。陛下や王太子殿下も苦労されているんじゃないか」

 「王太子殿下が?」

 「なぜでしょう」

 「ここにいないのが何よりの証拠だ」


 国王陛下自身はこういう時は指示を出すだけだからな。補給面での手配、外交面での対応、兵がごっそりいなくなった貴族領の状況の確認。おそらく王太子殿下や担当の軍務大臣あたりは王都から離れられないほどやることがあるに違いない。

 むしろここまで物資が不足気味でも飢えてないあたり殿下の手腕がすげぇ。あの人実は天才なんじゃね。


 「外交、ですか?」

 「フィノイは別にわが国だけの大神殿じゃないぞ」


 前世で言えばバチカンみたいなもんだ。他国からもフィノイには巡礼が来る。情報伝達速度にもよるとはいえ、当然ながらこの状況は少しずつ近隣国にも漏れているだろう。多分王太子殿下とか外務大臣とかは情報封鎖に忙しいはず。

 それにしても考えてみれば、外国からの巡礼者も通るアーレア村はもっと大きくなっててもおかしくないんだよなあ。あの村長じゃ無理か。落ちた金を何に使ってたんだろうね。


 「フィノイの状況が伝われば近隣国も出兵の意向を見せてくるだろう。けど現状はご覧のありさまだ」


 この世界だとよほどの状況でもなきゃ援軍に対しては食料などの提供をしなきゃならない。この場合、相手が魔軍なのだからこっちが食糧出すのが当然となるだろうが、現状自軍ですら食料が危険な状態だ。

 これで義勇軍と言う名目で数が増えでもしたら補給線の問題で戦線が崩壊する。なまじ宗教が絡んでるんでいつまでも拒否し続けるわけにもいかんだろうし。


 それに何より近隣国にしてみればここでヴァイン王国に恩を売るチャンスでもある。利用できるときは利用し、恩を売れるときは売り、敵対するときは敵対する。外交なんてそんなもんだ。指導者と指導者個人の関係はどうあれ、国と国なら国益が優先される。

 ローマによる平和(パクス・ロマーナ)なんてもんはローマによる安定が周辺国にとっても都合がよかった時代の産物でしかないからな。


 「想像だがそうだなあ、長くても二〇日程度で決着付けたほうがいいだろうな。それまでになんかいい手があれば」


 いいけどね、と言いかけたら交代したばかりの衛兵の内、片方が笑い出し……え・い・へ・い? えーと。

 俺の視線に気が付いたのだろう、後ろにいた二人が衛兵が被る量産品の兜を脱ぐと見覚えのある顔がそこにあった。ノイラートとシュンツェルが硬い表情してたのはこのせいか。


 「どうかね公爵、子爵の見識は一〇代のものではなかろう」

 「うむ。ヒルデア平原の勝利が子爵の手によるものだというのも理解せざるを得ぬ」


 まあ確かに前世も含めれば俺の人生経験は一〇代じゃありませんがね。

 セイファート将爵閣下とグリュンディング公爵閣下、なんでまた衛兵の格好してまでこんなところにいらっしゃったんですか。

前回のお願いに答えてくださいました皆様、ありがとうございます!

サブタイトルはともかく章分けはあった方が便利みたいですね。

時間が取れる週末辺りに頑張って対応します。

勉強にもなるんでやりかたしらべよ…(笑)


キャラ紹介はちょっと考えますねー。

それ以外もいろいろなご意見、ありがとうございます!

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