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ここ数日気温の変化が凄いですが健康に気を付けつつ更新頑張りますー!
「終わればいくらでも寝れる! あとでゆっくり寝かしてやるから今は進め!」
「ははっ!」
「騎士の誇りを見せろっ!」
「おうっ!」
事情は説明済みと言うこともあり、俺の無茶な指示に不満も言わず全員が付き従う。ノイラートの激励もいいタイミングだ。ほんとすまないな。馬も随分疲弊している。かわいそうだがもうちょっと頑張ってくれ。今はただ時間が全てだ。
深夜のうちにヴァレリッツを出発してほぼ丸一日駆け通し。その前日から数えれば丸二日間徹夜してるようなもんだ。ここまで無茶をしたのは前世でもなかったんじゃないだろうか。三日間で合計十時間も寝ていない。アレクサンドロスを化け物とか言えた義理じゃないな。
これだけタフなのはゲーム世界だからかも。ポーションと言う前世にはなかった物があるのは大きいのは否定しない。そのポーションは疲労回復にも使えるがそろそろ残量がさすがにやばい。怪我人がでた時のためにどうしても少しは残しておきたいし。
時間的な猶予はどうだろう。マゼルの活躍を見て情報収集をし、出身地を聞いた敵が外にいる敵軍に伝えて、敵の一部がアーレア村に向かう時間。フェリが大神殿を抜け出して俺のところに到着した時間。こっちが一歩遅れているぐらいか。
相手の情報収集にかかる時間か、大神殿の外にいるベリウレスに情報が届くのが遅れていることを祈るしかないな。
ぶっちゃけ俺がやってることは明白な違反だ。部隊指揮官が部隊ほっぽり出して少数行動しているんだからな。マックスたちは押しとどめたし代わりに自分が行くとも言った。
だが実際のところアーレア村の場所を知っているのは今の段階では俺しかいない。いや俺だって正確な場所は知らないが。それでも方角とかおおよその位置は解るし、それだけでも利点だ。今は少しでも良いカードを切らないと手遅れになりかねない。
道に出るのは大回りなんで林の小道を一気に突っ切る方を選んだがこの選択肢が正しかったのかどうか自分で自分を疑いたくなる。くそ、こんなことならせめて
そもそも鋼鉄の鎚のメンバーが王都にいる保証もなければ
乗馬と空馬とを交換したり食事等で多少の休養を挟みつつだが丸一日走り続け、夕闇と言うよりそろそろ日没って時間帯になって小道を抜けて丘陵地みたいなところに出た。ゲームだと大体この辺りのはずなんだけどな。
ゲームだと森と平原しかないが現実の地形は坂とか窪地とかいろいろあるんで同じペースでは走り続けることはできない。当たり前の事なんだが急いでいるときは何で走りやすい平地じゃないのかと恨み言を言いたくもなる。言ってもしょうがないから言わないが。それは解っているんだが気ばかり急いてどうにもならない。俺自身のクールダウンも含めともかく一旦馬を休ませよう。
「もうすぐのはずだ、ここで馬の乗り換えを……」
「ヴェルナー様!」
突然騎士の一人が丘を下った先の向かいにある森の奥を指さした。いや指さされれば俺にもわかる。火の手が勢いよく上がり、あそこで何かが起きているということぐらいは。
「行くぞ!」
「遅れた者は後から来い!」
俺が指示を出すまでもなく非常事態だということは全員が理解している。シュンツェルの指示は正しい。だがさすがに選び抜かれた一〇人だ。誰一人欠けることなくアーレア村に到着した。
阿鼻叫喚、と言うには人数が少ないかもしれないが状況は似たり寄ったりだ。建物が燃え上がりその明かりの中を村人が逃げまどう。逃げ惑う村人たちに魔物が襲い掛かる。いちいち全体を把握している暇はない。
「全員村人を守れ! 火を消すのは後でいい!」
「ははっ!!」
「ノイラートは二人連れて左手から回れ! シュンツェルは中央に! 敵と一対一になるなよ! 右手は俺が行く、二人続け!」
もう返答は聴いている暇もない。村人も逃げまどい混乱してる村の中で馬は逆に邪魔になる。馬から飛び降りるとそれだけ指示して俺は駆けだした。
村のマップがゲームと同じなら村の入り口近くにマゼルの実家の宿屋があるはずだ。ただゲームと違い村正面から入ったんじゃなく村の側面から入ったことになるんで、むしろ宿が遠い。
少し移動するとやはりと言うか差はすぐに判った。ゲームと違って人家が多いがたぶん大体の位置は同じのはず。と言うかゲームが人家少なすぎるのか。よく考えればRPGの田舎の村ってあれでよく社会生活成り立ってるよな。
「邪魔だぁっ!」
一撃で敵一体を串刺しにする。槍術スキルがありがたいと思った瞬間だ。俺の腕でも槍を使ってる限り平均的な騎士や兵士よりは役に立つ。それにこの槍は星数えの塔より先でも使えるレベル。フィノイの大神殿で出てくる敵には強すぎるぐらい。
フィノイの大神殿で登場する? 二匹目の首を刺し貫きながら俺は周囲を一度確認した。今倒したのは
とりあえず一対一なら負けないとわかったからには遠慮する必要もない。ついてきてる二人には悪いが宿まで走ろう。あの炎の上がってる場所は目的の宿あたりのはずだからなくそっ!
鎧も中盤あたりまで使える装備だ。その動きやすさも味方したのか。ついてくる騎士二人を置いていく速さで何かの店の隣を曲がると、地面に倒れている人影をかばっている別の人影、そしてそれに曲刀を振りかざす人ならざる者の影を視認した。
確認と同時に前傾姿勢になって鎧の重さも利用し一気に距離を詰める。加速も含めて全力で槍を突き出すと穂先がその魔物の背中から腹までをぶち抜いた。青黒い色の鮮血が吹きあがる。
勢いあまって体当たりまでする格好になったが間に合ったんで気にしない。
「大丈夫ですか、怪我は!?」
倒れた魔物の死体に足をかけて槍を引き抜きながら人影に声をかける。中年ぐらいの男性は斬られたのか血まみれで横たわっており、その妻だろう女性が抱きしめて庇おうとしていたようだ。気丈だな。
よく見ると確かにマゼルの母親だ。ゲームのスチルとかはなかったがどこかマゼルに似ている。それに女性が着てる服は挨拶代わりに俺が贈ったものだ。まさかこんなところで確認の役に立つとは。
って言うかマゼルの母親、俺と同い年の息子がいるとは思えないぐらい若くて美人だな。
一瞬そんなバカげたことを考えたが、次の瞬間そんな感想は吹っ飛んだ。
「む、娘が……娘が、連れ去られて……っ」
「っ! どっちに行った!?」
「あ、あちら……」
震える手で指さしたのはまさかの村の外。畜生っ!
「ケガ人の治療してこの二人を守れ!」
ようやく追いついてきた騎士にそれだけ言うと俺はもう一度駆けだした。ここまで無理と無茶を通したんだから最後まで成功させてやる。