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緊急出動令。陛下の出す緊急勅令ほどではないが、国内トップクラスの招集命令だ。内容としては各貴族家騎士団の可能な限り迅速な出陣準備などだ。王族のほか宰相と軍務大臣のみが発令できる。
ぶっちゃけ
現実感がないこともあり思わずフレンセンと顔を見合わせてしまう。正直いまいちピンとこなかったが、今の大きな声が聞こえたんだろう。マックスたちが駆けつけてきたんでようやく俺も頭のスイッチを切り替える。
「ヴェルナー様、なにが?」
「俺も今緊急出動令が発令されたと聴いたばかりだ。説明してくれ」
ツェアフェルト家の軍務に関係する首脳陣全員を前にしたキッテルからの報告はちょっとした爆弾だった。
「はっ。ヴァレリッツが魔族軍に攻め落とされそうだとの第一報が届いたそうです。現在王都では緊急の会議が開催されております」
「何っ!?」
俺、マックス、オーゲンが異口同音に驚きの声を上げる。バルケイは沈黙したままだったが衝撃は大きいだろう。想像もしない内容だっただけに俺も驚きは大きい。
ヴァレリッツはフリートハイム辺境伯爵領の中央都市だ。ツェアフェルト伯爵家の本拠であるツェアブルクと規模も大して変わらない。ゲームに出てこなかった街なんで目ぼしい物はないが国内中規模都市ではあるだろう。貴族家騎士団も人数で言えばツェアフェルト家とそうそう差はないはず。少なくともそう簡単に攻め落とされそうになる規模の街じゃない。
「伯爵はどうなされた?」
「情報が錯綜しておりますので現時点では不明とのこと」
バルケイが質問した内容を聞いて伯爵の無事は期待薄だと察する。まあ生きてりゃすぐに判るだろう。フリートハイム伯爵は文治派なんで父のお仲間だが、俺個人は顔も覚えていないんで心配するより現実感を感じないと言う方が近い。
これ以上は聴いてもしょうがないだろうな。多分、キッテル自身も第一報を受けてここに来たんだろうし。
「そこまでは解った。父は会議に出ているな」
「はっ」
ツェアフェルト伯爵家として父が出ているなら今の俺にできることはない。代官でもあり現場指揮官でしかないとも言える俺としては次の指示があるまでやれることをやることにしよう。
「解った。キッテルはすぐに王都に戻り父からの連絡を待っていると伝えてくれ」
「はっ、すぐに」
「バルケイ、第四隊の夜勤出発は次の連絡があるまで待て。マックスとオーゲン、第二隊と第三隊の全員を第二出撃体制で待機。俺は巡邏の手順と引継ぎのための資料をまとめる。フレンセン、手伝え」
「かしこまりました」
第二出撃体制は隊列を整えるまではいかないが、装備を整えたうえで声が届く距離にいる事を指示している。第一出撃体制は今すぐレッツゴーできる体制なんでそれよりは低いが、これは父の連絡がいつ来るかわからんからだ。緊張しっぱなしってわけにはいかんのよな。
「マックス、ノイラートとシュンツェルに第一隊を第二出撃体制にさせるように伝達。後で様子を見てくれ。問題があった時には二人に助言を頼む」
胃痛を堪えつつ指示を出す。ノイラートやシュンツェルには俺から指示が届かないときの指揮官になることも求められているんで、こういう時は役目を振って経験を積ませなきゃいけない。
それはわかっているんだが俺、学生。少なくとも外見年齢と言うか肉体年齢は。本当は俺が経験を積む側じゃないのか? こんな年で貴族になんかなるもんじゃないなほんと。指導はマックスに丸投げしておく。
「すべて了解いたしました」
マックスたちが頭を下げて退出する。思わずため息。何が起きてるんだ一体。気にはなるが考えていてもどうにかなるわけじゃないんで、とりあえず目の前の仕事を見つけてそれをやることにする。
「ヴェルナー様、手順書と言うのは」
「巡邏の順番とかやり方がころころ変わったら工事に携わってる人たちも困るだろ。俺たちはこうやってましたって言うやり方を記録してあるんだよ」
橋脚の位置と目印になる自然物で警戒範囲を区分けし、どのルートで巡邏するのかを決めてある程度のものだ。時計は一般的じゃないんで時間での経過に関しては残念ながら手順書に記していない。まあこれはしょうがないだろう。
ただ、こういう巡邏とかのやり方が属人的すぎると、現場で何かあった時にどこに救助を求めればいいのかわからなくなる。コースがある程度決まっていれば救援要請を求める先が明快なので無駄な時間を過ごさなくて済む。なので巡邏の方は一定のパターンを作っておくほうが現場の人たちも安心すると言う訳だ。
この世界ほんと脳筋ばっかりなんでこういう作業をマニュアル化する人が少ない。いやまあ、マニュアルって作ればいいもんでもないので、一概に俺のやり方がいいとは限らんが。
あと副産物として魔物の発生パターンとかが解ればいいと思い、日報的に記録してあったんだがどうもこっちはランダムっぽいな。まだ母数が少ないが何となくそう感じる。しかし本当に魔物の発生原理は謎だな。
「なるほど。そのようなものまで」
「経験に頼るだけってのは嫌いなんだ」
ローマみたいになんでもマニュアル化してあればド新人が来ても最低限の作業はできる。ぶっちゃけ巡邏にオリジナリティなんぞ要らんし。この通りに巡回して何かあったら報告ね、でいいんだ。
もうちょっと時間があれば
その辺が全部先任者の経験則なのは問題あるんじゃないかと思うんだけどな。これは脳筋世界のせいなのかゲーム世界のせいなのか。いやそれこそ考えてもしょうがないか。
非常時に備えたポーション類を保管してある箱と一緒に、青い箱も忘れずに手元に持ってこさせる。使わないに越したことはないが緊急事態ならこういうのが必要になりそうな気配がする。ろくでもないことは確かだが何が起こっているのやら。
※ノウハウが属人的すぎているとその人が病気になった時に困ります、はい
(体験談)