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異世界転生/転移の日間と週間で2位、日間総合12位、週間総合だと3位にランクインしていました。
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王城での書類業務といった仕事を終えて一度館に戻り、今度はフレンセンを連れて外出。父のような大臣はともかく、俺程度の立場だと仕事が終わっていれば夕方には帰宅できる。こういう所はホワイトだ。
兄が生きてたら一生代官職続けていてもよかったなあ。
「これからどちらに」
「あー、確定事項は冒険者ギルドと孤児院だ」
「フェリ殿の孤児院ですな」
「そういう事」
そういえばフレンセンは商隊でフェリと結構長期間同行してたんだったな。フェリに対してあたりが柔らかいのはそれもあるのか。
いろいろやることが多いがまずは冒険者ギルドに顔を出す。と言うかすぐに始められて時間がかかるものを先にやらないと工数管理が面倒。めんどくさがると結果的に仕事が増えるんだよ。
「おう、ヴェルナー様。またなんか面倒ごとですかい」
「面倒ごとは酷いな。ちゃんと対価は払っているだろ」
「いやあ、ヴェルナー様の仕事は面倒ですぜ」
「打ち上げの時に二日酔いになるまで飲んだお前が言うか!?」
ギルドに顔を出したら早速顔見知りが声をかけてきた。冒険者たちに軽口を叩きながら奥に向かう俺にフレンセンが苦笑いを浮かべてやがる。貴族らしくないのは認める。いいじゃないか、こっちのほうが気楽なんだよ。
実際のところ、難民護衛の際にはいろいろ迷惑をかけたという自覚もあるんで、報酬は俺の裁量の範囲で頑張ったし、俺の方が年下のことが多いんで相手の顔も立てられるところは立てた。
護衛の道中も村とかが近くにあった時は自腹を切って酒を購入し、非番の連中にふるまったりもした。水道橋の時にもらった報酬万歳。
そんなこんなで一か月も一緒に行動していれば顔も覚えられるし気心も知れる。「貴族もピンキリだがツェアフェルト伯爵家は話が分かる」となんだかんだで冒険者ギルドや傭兵ギルドでの評判は悪くないらしい。俺としてもそういう評判は素直にうれしい。
どうでもいいが何でピンキリって言葉が通じるんだこの似非中世西洋世界。似非だからか。
「お久しぶりです、ツェアフェルト子爵」
「お久しぶりです。早速ですが依頼……と言うか、お使いをお願いしたいのですが」
美人の受付嬢だとついこっちも敬語になってしまう。健全な男子なんだからしょうがない。俺は悪くない。
「お使いですか」
「ええ、アーレア村まで」
マゼルの生まれ故郷で家族が宿を経営している。ゲームではそうなんだが一応そのあたりも確認したい。内容は近況報告とかその程度のつもりだがマゼルにも頼まれてるしな。それにちょっと気にもなってるし。
「なら俺らが行きましょうか?」
横からそう話しかけてきたのは偶然傍にいた冒険者パーティー
「そりゃ助かるが、いいのか?」
「実は別件で向かう予定もありましてね」
あっさりと理由を説明してくれる。なるほど。お使いならついででも十分だしな。
「フィノイへの巡礼者護衛なんですよ。巡礼者はアーレアに泊まるらしいんで現地解散になってますから、帰りに大回りすればいい事ですし」
「あー、ならなおの事ちょうどいいな」
受付嬢さんも交えて簡単に報酬のやり取りをする。向こうはついでなんで安くてもいいと言ってくれたがこっちはそうもいかない。面倒なことに貴族の面子と言う奴がね。冒険者相手に値切ったとか評判になったら領の財政状況が疑われたりもする。
まあこういう時は単純なお使いにプラスアルファして報酬金額を上げるのが常道だ。それに調べてもらうことがあるのは事実だし。
「と言うわけで、アーレアの宿屋にいるマゼルの親父さんに近況報告の手紙とこっちの土産を渡してもらいたいってのが一つ」
土産と言ってもマゼルの親父さんには酒、母親と妹の女性二人には王都の服だ。軽さと比較的受け取りやすい程度のもの。会ったこともない相手なんでデザインとかは無難なものを選んだ。俺のセンスなのは勘弁してほしい。
地方だと既製品でも服は高級品だがアクセサリーとかよりはいいだろう。なおサイズはフリーサイズの物だ。
「もう一つはそれとなくでいいんで村の中の様子を確認してきてもらえないかな」
「はあ。何でです?」
「いやそれが俺にもわからん」
マゼルが妙に連絡を躊躇していたのがどうにも気になるんだが理由は解らない。なので様子を見てもらいたいと頼んだ。報酬は常識的な範疇。快く依頼を受けてくれたんでほっとしているのは事実だ。人間関係大事。
「今回はギルドを通さなくても結構ですよ」
と受付嬢さんのご厚意もありがたく受け入れた。「近いうちに別件で依頼を入れさせてもらいます」と言うことも忘れない。実際、依頼する事もあるんだが仲介手数料がメイン収入のギルドだから厚意にすがり続けるわけにもいかんのよ。
そのあたりは大人の対応をしないとね。決して美人の笑顔に負けたわけじゃないぞ。
冒険者ギルドの方を終えると王都の端にある古びた建物に向かう。どっちかと言うと
って言うか門から離れたこんなところに宿? 宿は宿でもいかがわしい方じゃないのか? とも思うが既に潰れてるぐらいだから儲からなかったんだろうな。
この世界の孤児院は教会が運営してるものが多いが、貴族家が運営しているものや各種ギルドが運営しているもの、さらには資産家が個人で運営してるものまで様々だ。もちろん理由もいろいろ。
教会は一応善意からと言うことになっている。貴族家の場合は名声込みも多いな。「なんとあの家は慈悲深いんだ」と言う評判を期待してるわけだ。ギルドの場合はギルドごとに理由が違う。
商人ギルドとか鍛冶ギルドだと下働き候補を育ててるってことになるし、例外的に冒険者ギルドが運営しているものもある。両親ともに冒険者で二人とも冒険から帰ってこなかった子供なんかを育ててるわけだ。
食事の面倒を見る程度でも孤児院と言えるあたり、前世の知識がある俺から見るとかなり世知辛いと言えなくもない。
「どちら様でございましょうか」
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトと言う。フェリックスから話は聞いていると思うが」
「……ようこそおいでくださいました」
ノックに応じて出てきた老婆は警戒していた感じだったが、俺の名乗りを聞いて中に入れてもらえた。何かあるんだろうか。テンプレなら美人に誰か悪党(偏見)が言い寄ってたりするパターンだが。
話を聴いてみると半分テンプレだった。この建物がある土地の借地権の問題があるんで追い出されそうになっているらしい。ただ別に悪意とかではないようでむしろ理はあっちにある。
ちなみに老婆の名前はアーネートさんと言うらしい。血のつながりはないという事なのでフェリの姓はアーネートさんの名前を名乗っていたのか。二人のつながりが垣間見える話だ。
しかし結構な人数がいるのか二階からは走り回る足音も聞こえるな。床抜けたりしないだろうか。フレンセンも時々心配そうに天井を見上げている。
「先々代様の頃はそれでも資金の援助があったのですが」
先々代様、と言うのは老婆が若いころの雇い主で、公衆浴場主をやっていたらしい。王都に公衆浴場はいくつかあるが職人街に近いところにある奴だそうだ。
先代の頃は援助はなかったが別に取り立てもなく、ぎりぎりの水準ではあるが何とか子供たちを引き取って育てることはできていた。
ところが当主が変わった最近になると経営があまり思わしくなく、もともと所有していたこの土地を別に転用する気になったと。だんだん悪化していくパターンの典型例だな。それにしても。
「公衆浴場ねえ」
経営悪化って水不足のせいなんじゃないか、と思ったがこれは口に出せない。水不足は秘密と言うことになってるし。そのかわり思ったことを率直に言わせてもらう。
「しかし、こんなところの土地を転用しても何にもならんだろう」
「わたくしもそう思うのですが」
老婆も困り果てているようだ。貧すれば鈍すと言う奴だろう。そもそも先々代様とやらがここを孤児院に転用したのも安かったからだろうし。
そんなことを考えていたら視線を感じる。フレンセンが横を向いていたんで、その視線を追いかけると、襤褸を着ているが可愛らしい感じの女の子が半開きのドアからこっちをのぞき込んでいた。
「あ、あの……」
俺と視線が合うとその子が恐る恐ると言う感じで部屋に入ってくる。初対面だよな?
「あのっ、お薬、ありがとうございました」
「は?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。が、記憶のパーツがかみ合うまでにそれほど時間がかからなかったことは褒めてほしい。
「フェリが言ってた子かい?」
「は、はい。イルゼって言います」
フェリが言っていた病気だったって子か。年齢的にはフェリよりちょっと下ぐらい。前世で言えば小学校高学年になってるかいないかぐらいだろう。そっか、こんなかわいい子だったのか。なるほどねえ。
「気にしないでくれ。フェリにはこっちもいろいろ頼ってるしな」
「あの、フェリお兄ちゃんは、大丈夫でしょうか……?」
「心配ないぞ」
なんせ勇者パーティーの一員だから大丈夫だろう。根拠はそれだけだがこういう時は自信満々な態度で言わないとな。不安がらせちゃ駄目だろ。
断言した俺に安心したのか、ほっとした表情でぺこりと頭を下げるとトコトコと擬音が付きそうな感じで部屋を出て行った。何あれ小動物っぽい。庇護欲そそるわ。
老婆の方に向き直ると何やら済まなさそうな顔をしていた。いや話に割り込まれたからって怒らないから。
「かわいい子ですね。フェリに妹が?」
「いえ、血のつながりはない……と思います」
断定できないのはどっちも赤ん坊のころに捨てられていたかららしい。まあ確かにあんまり似てはいなかった。フェリもイルゼちゃんも外見偏差値は高いが。
まーしかしそういう事ね。あんな子が病気だったんならフェリが恩に着るのもわからなくもないわ。
しかし困ったな。父に多少白眼を向けられたが孤児院のバックアップは伯爵家として行うことを認めてもらった。ただ父はこの点甘くもない。
孤児院だけならどうにかなるだろうが、下手に予算を出したら公衆浴場の経営者が口をはさんでくることは確実だ。ここの孤児院を守ろうとするとその経営が傾いてる公衆浴場の方まで面倒を見ることになりかねない。それは絶対に無理。
……んー? いやちょっと待てよ? 前から気になっていたことをまとめて押し込むチャンスかこれは。
「とりあえず、今日のところは寄付金を置いていきます。近いうちにまた」
「は? はい」
突然の俺の行動に老婆が困惑してるようだが今は放置。今の段階ではかなり大雑把な案だが結構いけるんじゃないだろうか。問題なのは予算だな。とりあえず帰ってから詰めてみよう。
※冒険者ギルドのところまでだと短かったので、孤児院まで書いたら今度は長くなりました。
難しいです。