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総合評価23,700pt超え、ブクマ5,200件超え、評価してくださっている方も1,400人を超えました。
読み飛ばして終わり、じゃない方が1,400人以上いらっしゃるって言うのは本当に嬉しいです。
それと一日でブックマークが1,000件以上増えたのが嬉しい反面びっくりしています(笑)
読んでくださる方、評価してくださる方、ブクマで応援してくださる方に感想をくださる方もどんどん増えているので、その分これからも更新頑張りますー!
フレンセンに合図をして青い箱を持ってきてもらう。各地を回った商隊が購入してきた物を入れてある。ゲームと同じようなアイテムが複数種類ちゃんと手に入ったんで俺にとってもいろいろ手助けにはなるだろう。
今回はそのうちの一つを取り出す。本当は実験してから使いたかったがゲームでも実験したりしないんで大丈夫だろう。たぶん。
「こいつについて伝えておきたい」
「これは……?」
「見覚えあるなー。どっかの町で買ってきた奴だっけ?」
箱の中にしまってあった物にフェリが気が付いたらしく
ただどっかの町はやめてほしい。フェリの記憶が重要になるんだから。
「これは?」
「
マゼルが興味津々という感じで聴いてくる。知ってる人は多くないのか。確かにゲームでも王都ではこのアイテムの使い方は聴けなかったが。やっぱり変にゲーム的なところがあるな。
「どうやって使うんだい?」
「あー、まず基本的にはパーティーと言うかチーム単位で使うアイテムだ。個人でも使えると思うが」
本来、マゼルの勇者パーティーには今いる面子に
まずはハーフェンの町あたりでテストだ。フレンセンにしっかり箱を持っておくように伝えるとフェリに飛行靴を渡す。
「フェリ、こいつを手に持ってハーフェンの町を思い出してくれ。思い出せたら『ハーフェンへ』と宣言してくれるか」
「よくわかんないけどいいよ。ハーフェンへ」
フェリがそう言った瞬間、周囲の風景が歪んだ。一昔前のアニメのワープみたいだが効果音までそれっぽいのはなんか妙にチープだ。三半規管が揺らされて結構気持ち悪い。
そして気が付いた時にはハーフェンの町の目の前に全員で立っていた。うん、成功だ。どうでもいいが日本式に家の中で靴を脱いでたら問題だったな。
「……おい、こりゃどういうことだ!?」
ルゲンツがこっちに詰め寄ってくる。そりゃそうか。
「まず町の中に入ろう。町の外だと魔物が来たら面倒だ」
「……そうだね。ヴェルナー、ちゃんと説明してくれるんだろうね」
あ、マゼルまで何か言いたげ。まあそりゃそうか。とは言え
門番にはフレンセンが対応した。お忍びで護衛を連れた貴族が遊びに来たって感じだ。フレンセンだって動揺してるだろうにきっちり対応できてた。意外とできる男かもしれん。
そういえばテレポート先は人目につかないところに出るんだな。突然現れたら騒動が起きるからだろうか。
「さて、聴こうか」
「そう睨むなよ」
酒場に入って軽く注文し、品がテーブルに並ぶとすぐにマゼルやエリッヒがこちらに視線を向けてきた。ルゲンツに至ってはほとんど尋問してるような顔だ。
「あのアイテムは
「あっ」
突然フェリが手を広げて声を上げる。ああ、使い捨てのアイテムだから消えちゃってるのか。って言うかゲームみたいに消えるんだな。
「あれは一回こっきりの使い捨てで、ご覧のように行ったことのある街なら魔法であっという間に移動できる。体験してもらった通りだ」
「こんなものがあったのですか」
フレンセンが思わずと言う感じで口を開いた。うーむ、王都で購入できないとはいえ貴族家に仕えている人も知らないというのはやはり多少の違和感を感じる。この違和感も一応覚えておく必要がありそうだ。
「どうやって作ったのかは俺も知らんが、古代王国の遺物らしい。使い方は簡単だろ」
「確かに簡単だけどこんなものがあったなんて」
どこで知ったのか? と言いたげにマゼルが顔を向けてくる。まあこの言い訳は考えてある。
「装備品の関係で古代王国のことを調べていたらたまたまな」
「ふーん」
マゼルがしげしげとフレンセンが持っていた箱の中に複数残っている飛行靴を見やった。箱の中にポーションとは違う薬瓶も入れてある。そういやこっちの薬もあったな。説明したほうがいいだろうか。
そう思っていたら同じように箱の中を見ていたエリッヒがこちらに視線を向ける。
「この力は国の秘密とかなのではないでしょうか」
「それはないと思う」
少なくとも俺は聞いたことがない。だが考えてみれば妙な話だ。たいして使い方も知られていない品が高額で売買されるというのは何か理由があるんだろう。
売る方は発掘品だから高く売れると考えているだけかもしれないが、販売価格がどこでも一定と言うのも考えてみればおかしい。いやゲームだからで済ませてしまってもいいんだが。
特定の人物とか特定の職業だけが使い方を知っているとかあるのかもしれないな。だがそんなことは知ったこっちゃない。使えりゃいいんだ使えりゃ。
「それに、マゼルたちなら知っても問題はないはずだ。今後があるからな」
「今後?」
マゼルが怪訝な表情を浮かべる。面倒ごとではあるんだよな。
「魔軍の将軍を斃したマゼルたちが今後色々な政治がらみに巻き込まれる可能性がある」
「……まあ、ありえるだろうな」
ルゲンツは多少なりとも想像がついたようだ。エリッヒも頷いている。
「けどまあ王太子殿下はそういう形でマゼルたちを束縛する気はなさそうだ。少なくとも今の段階では」
「つまり?」
マゼルが確認するように問いかけてくるんで俺も肩をすくめて応じる。
「最悪、馬鹿貴族がいちゃもん付けてきたらこいつを使って他の町に移動してくれ」
「解りやすいなあ」
フェリが笑った。そのあと真顔になる。
「兄貴、それはおいらも?」
「マゼルたちと一緒だったと知られているだろうからな。それにフェリには頼みもある」
「頼み?」
今のところ多くの町に足を踏み入れたのはフェリとフレンセンの二人だけだ。しかもフレンセンは戦いの専門家じゃない。マゼルたちの旅が楽になるためにはフェリに同行してもらう形の方がいいだろう。
それにもともとヴェリーザ砦イベントの後にフェリが参入するはずだしな。そのイベントをすっ飛ばすだけだ。
「あちこちの町回っただろ。マゼルたちの案内を頼みたいんだ」
「この靴があれば全部回るのもあっという間じゃないの?」
フェリの言い分ももっともだが、そうはうまく行かない。
「これ一つで王都なら剣が三本買えるぞ」
「げ」
そう、意外と高いんだ。ぶっちゃけフェリと最初に会った時に渡した金貨と銀貨の金額じゃ買えない。と言うかゲームだと王都に売ってないとはいえスタート時点での全額分より高い。王様ケチすぎだろ。
もう一つ問題があるとすると敵の強さにマゼルたちが付いていけなくなる可能性があることだ。敵の出現状況が変わっているのは商隊の報告書で確認してある。おそらく今後加速度的に敵が強くなるはずだ。
今のまま先走ってもらっても困る。今のところチートなのは素質と設定と装備であって実力ではないからな。
「なのでフェリも同行して確実にあちこちの町を回ってほしい。ついでに新しい情報とか変わった話とかあったら教えてくれると助かる」
「解った」
フェリはもちろんマゼルもあっさり了解してくれたが、俺が今のマゼルたちの実力を危惧してることもある程度気が付いているっぽいな。本当なら信用してないのかと怒るところだろうけど。
「そのかわり、ヴェルナーに頼みがあるんだ」
「おう、聴くぜ」
こっちに負い目もあるしな。
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