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異世界転移/転生日間ランキングで瞬間風速ですが10位…え、10位!?
嬉しいのですがちょっと動揺もしています(^^;)
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※今日から数話、三人称でヴェルナーとは別の場面となります
ヴェリーザ砦から魔軍が出撃してきたのが確認されてから二日後、王都の城壁近郊、背水の陣ならぬ背壁の陣で王太子ヒュベルトゥスが率いる軍が展開を始めていた。
「流石に死霊の軍は昼夜問わぬな」
「とは言え歩兵のみですから、行軍速度に限界はあります。接敵は翌朝ぐらいになりましょう」
参謀はヴェリーザ砦が襲撃された際に対範囲魔法実験部隊を率いていたシャンデール伯爵が拝命している。王太子の腹心の一人でもありヴェリーザ砦に関する情報は最も詳しい一人と言っていいだろう。
幸か不幸か死霊ばかりの相手の動きは遅く、また移動速度も一定であるため接敵のタイミングを選ぶ事ができる。夜明けぐらいに敵が見えるぐらいがちょうどよいだろう。間違っても夜間に死霊の軍と戦う気はない。
「補給部隊は」
「十五日分の物資も含め城内にて準備滞りなく」
「敵の状況は」
「
「素人だな」
死霊は疲労しないとはいえ、敏捷性と言う点で見れば動く死体は魔獣はおろか人間にも劣る。骸骨兵は俊敏性はほどほどだが動く死体と違って攻撃に対する耐久力は動く死体より低い。
個別の集団にして計画的に運用されれば相応の配慮も必要になったが、敵の集団はただの混成軍である。統一した動きなど望むべくもない。この時点でヒュベルトゥスは勝利を確信した。
「よし、軍議を始める。全員を集めよ」
「はっ」
王太子の指示を受けてシャンデール伯の指揮下に配属されている伝令兵が将を集めに駆け出していく。さほど時間を置かずに全員が集まった。
今回はいささか皮肉なことにいつもと逆の状況になっている。普段武断派、もしくは軍備派と称される面々がおとなしく、文治派と評される貴族たちの方がやる気があるのだ。
武断派がおとなしいのは怯えや恐れではなく、派閥の領袖である前クナープ侯の死亡とその息子の暴走の結果、敵が出撃してきたと思われる状況からさすがに発言を自重しているためである。
一方の文治派からみれば王都付近が荒らされるのは我慢ならない。単純だが切実な理由。そんな両方の手綱をうまく取らねばならない王太子だが、今回は魔物暴走に続き王都の防衛戦であり貴族たちも我を抑え気味である。
そういう意味では武断派がおとなしいのは幸いであったかもしれない。
「皆集まりました」
「ご苦労。では翌朝に備えての布陣を説明する」
前置きも何もない。そもそも布陣段階で儀礼的な会話をする必要もないのだが。王太子としては前回の魔物討伐を経験しているだけに油断もしないが王都を蹂躙されるのは断固阻止すると言う確固たる決意で戦陣に臨んでいた。
王都の城壁外に前日から布陣する事には反対意見もあり、翌朝に城門から出撃するという選択肢もあったであろうが、敵の数と対応の関係上ほぼ丸一日は確実に必要であると首脳部は判断している。
なまじ死霊の軍だけに疲労する事はなく、一日のうちに殲滅しなければ夜間になると敵の有利な時間となってしまう。日の出から戦闘を始めて日没までに戦いを終える、と言うのが総意となっていった。
そのような前提で始められた軍議であったが、王太子から布陣の概要を説明されると全体に驚きが広がっていく。
「これはまた、独創的ですな」
「いつでも通じるかどうかはともかく今回は有効かと推察いたします」
「この布陣は殿下が?」
魔物暴走時に続き今回も一翼を担うことになるノルポト侯爵がそう疑問を呈した。それに対し王太子は簡潔にセイファート将爵からの提案がもとになっている、と短く応じる。
「なるほど。流石将爵ですな」
「あの御歳で発想が柔軟ですね」
「論評はよい。細部を詰めるぞ」
敵情確認、軍の配置や指揮官の任命、さらには状況に応じた合図の打ち合わせ。必要なことはこの日のうちに済ませねばならない。なすべきことを済ませると各自に武器や防具の手入れを念入りに行うように命じ、その日は解散となった。
そして翌日、王都近辺ヒルデア平原の戦いが幕を開ける。
「ふふん、向こうから出てくるとは愚かな」
死霊軍のほぼ中央にいる魔軍黒魔導士ベリスは王都近辺に布陣している軍隊を見て鼻で笑った。
ヴェルナーの言う舐めプは魔軍に限って言えばある程度正しかったであろう。個々の戦闘力でいえば魔獣ですら並みの兵士より強いことも珍しくなく、数は人間の兵士より圧倒的に多い。まして死霊軍は恐れも疲労も知らない。
負けるはずはない、と思っているベリスははっきりと愚者を見る目でヴァイン王国軍を眺めやった。
「まあよい。あの軍隊もドレアクス様の軍の一部となるだけのことよ」
ベリスは全軍に前進を命じた。何かを引きずる音、硬い骨がぶつかる音など、通常の軍とは異なる音とともに臭気が立ち上る。数千の動く死体が発する死臭は常人であれば吐き気を催すものであっただろう。
「うむ、心地よい香りよな」
その中にあってベリスは平然としているどころかかすかに恍惚の表情すら浮かべている。魔族のベリスにしてみれば心地よい香りであり、戦いに対する楽観も相まって遠足気分でさえあった。
本気度が違いすぎたがゆえに戦況をつぶさに確認することをせず、押し一辺倒の指示が足元をすくわれることになる。
凸陣形の王国軍とほぼ横一線の死霊兵軍中央隊が激突したのは朝日が地上を照らしてからさほど時間を経ない時刻であった。
ヴァイン王国軍中央隊は走らない程度の速度で前進すると、死霊兵を前にして立ち止まり陣形を整える。
この先鋒隊は若い歩兵中心に揃えられており、経験は乏しいが体力はあり、動く死体や骸骨兵などを恐れはしても逃げ出すまでの臆病さは見せなかった。
「攻撃開始!」
「押せっ!」
先鋒隊の前線指揮を務めるクランク子爵とミッターク子爵は二人とも先の魔物暴走の際に当主と家臣団の中核を失い、今回は多くの若い重装歩兵と長槍装備の兵を借り受け指揮する形となっている。
ただ二人の戦い方はむしろ両極端で、アヴァン・シモン・クランク新子爵は集団指揮を得意とし、冷静に死霊兵を細かく分断してから各個撃破する形で相手を消耗させていく。
もう一人のヴォイテク・ラフェド・ミッターク新子爵は経験を積めば猛将と呼ばれるようになるであろう。自らが
特にミッターク新子爵は戦死した先代当主と兄弟の敵討ちとの意識から戦意が高く、恐れるよりも積極果敢に攻めようとさえしており、むしろ若い両子爵を抑えるのに数少ない家臣たちが苦慮するほどであった。
「慌てずともよい。まず確実に相手を抑え、それから緩やかに後退する。押し返すのはもう少し後だ」
落ち着いて指示を飛ばすのは両子爵の間で軍を指揮するクフェルナーゲル男爵である。老練と言う方が近い年齢の男爵は作戦行動の一環であることを自覚しており、いわば軍監とでも言うべき立場で先鋒隊で指示を飛ばしていた。
男爵家と言うことで直属兵の数は少ないが、ヴェリーザ砦陥落後の撤退戦にも参加し、それ以後集団戦の訓練も務めており、王太子の信任厚い人材でもある。
この三家の後方にシャンデール伯爵の軍が布陣して前線を支え、さらにその後方に近衛の最精鋭が待機している。そのため、死霊軍がいくら押し込もうとしても簡単には崩れず、逆に王国軍の都合に合わせての前進を余儀なくされていた。
徐々に後退する王国軍先鋒隊であるが、さらにその中でも中央軍の両翼は後方に下がることをせず、中央全体が緩やかに凸から凹陣に移行していく。死霊軍の中央隊は徐々に徐々に中央に向かって傾込むように集まり始めていた。
そしてそこで王国軍先鋒中央軍が踏みとどまり、死霊軍の左右両翼が中央に向かう途中で足を止めることになった結果、死霊軍は二等辺三角形のような形で中途半端に集合した格好になった。まさにその期にヴァイン王国軍の両翼が動き始める。
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
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