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総合評価3,050pt超え、ブクマ登録600件越え……?

急にどーんと増えたんで何事!? と思っていたのですが

ついに総合の方で日間ランキングに入っていました! 嬉しいです!

評価してくださった方も200人超えました!

評価とかブクマで応援してくださる皆様ありがとうございます! 更新頑張りますー!

 ひとまず冒険者や傭兵隊長を解散させた後で副隊長のマックスと打ち合わせをする。警備もそうだが夜営陣の設営にかかる時間なども考えると工兵経験者がごっそりいなくなったらかなりきつい。


 「難民に代金を払って手伝わせるしかないか」

 「それしかありますまいな」


 顔を見合わせ思わずため息。続いて口から出たのが愚痴だったのは悪くないはず。


 「あんの馬鹿野郎」

 「クナープ侯はインゴ様とは別派閥でしたがあそこまで愚かではなかったのですがなあ。ご子息があそこまで」


 そこで口を閉じたのは騎士としての立場もあったんだろう。父も俺もそのあたりはあまり気にしないが騎士が爵位貴族を批判するのも本来はタブーに近い。マックスは見た目豪快だがこの辺りは繊細だよな。


 「将爵に許可を得てインゴ様に使者を出してはいかがでしょう」

 「それも手だな」


 どうにも情報が足りん。父に聞くのは確かに手だな。斥候(スカウト)の誰かに王都まで駆け戻ってもらうか。


 「一番いいのは王都に付くまで何事もないことですな」

 「ついでにマンゴルトの奴がどっかで野垂れ死んでいてくれることを祈るわ」


 いや一応向こうの方が目上なんだけどね。爵位は同じ子爵相当の副爵だけど親の地位とか年齢的に。とは言え他に人もいないしこのぐらいの発言は許されるだろう。マックスも頷いただけで異論は口にしなかった。


 「うちの兵にはまだ伝えなくていいけど、体調不良者とかがいないかを確認しておいてくれ」

 「承知しました」

 「それと難民の中で中心人物になりそうな人物にあたりを付けたいな」

 「兵だけでなく傭兵や冒険者にも意見を聴いてまいりましょう」

 「頼む」


 そのあたりの手配はマックスに任せ、万一の時に備えてフォーグラー伯爵との相談内容をまとめることにする。特に面倒なのが輜重部隊の護衛と難民対策。

 魔物の怖さは理解しているはずなんだが、冒険者や傭兵団で処理してるせいか、この辺の魔物はあまり強くないんじゃないかと実に自分に都合よく考える奴が出始めてるんだよな。いや確かにゲームスタート付近だから弱いのしか出てこないが。

 甘く見て怪我されても困るが、脱走して山賊化なんてのも怖い。そういえば某有名ゲームのフィールドで出現する山賊とか盗賊って魔物に襲われないのかしらん。その辺よくわからんなあ。まあ考えても仕方がないか。

 それよりも現実的なことを考える。対魔物の計画をいろいろ考えては没にしていたところでふと全く別のことに思考が向いた。


 「そういえばヴェリーザ砦の敵は死霊系だったよなあ」


 死霊なら魔獣よりもやりやすい一面はあるだろう。基本的に動くものを襲うだけだからだ。魔獣の方が知恵と言うか本能があるだけ面倒なこともある。あれ?


 「……うーん? ひょっとするとこれは有効なんじゃないか?」


 思わず口に出してしまった。現状の打開には何の役にも立たない。しかしこのアイディアは捨てるのは惜しい。

 そう考えると早いうちに他人に相談に行く方向に思考をチェンジした。こういう時に自分一人だけで考えていると穴に気が付かないことがあるからな。ホウレンソウ大事。

 俺はがりがりと大雑把な図面を描き上げると、ツェアフェルト隊陣地を離れ本陣に向かって足を進めた。




 ふた手間ぐらいかけてセイファート将爵に面会させてもらえる。まあ将爵も忙しいだろうから多少待つぐらいはしょうがない。本陣の天幕に入ると何やら書類にペンを走らせていた将爵が顔を上げた。

 手を胸に当てて軍事礼。ボウ・アンド・スクレープの簡易版と言ったところか。と言うか板金鎧着てボウ・アンド・スクレープはできんわな。将爵は軽くうなずいて口を開いた。


 「ヴェルナー卿、何かあったかね?」

 「いえ、むしろこれからのことで許可とご提案の陳情をさせていただきたく」


 怪訝そうな顔を浮かべる将爵にまず王都に使者を送る許可をもらう。将爵は少し考えてから頷いてくれた。


 「そうじゃな。儂のところにも連絡はあるがほかの視点もあった方がよいじゃろう。卿の聞いた話を儂にも聞かせてもらえるかの」

 「承知いたしました」


 まあ当然だわな。俺も秘密のやり取りをする気はない。ともかく許可をもらえたんでその点は安心。


 「それと、これは敵が応じて王都近郊に襲来してきてしまった場合の案なのですが」

 「ふむ」


 口で説明はめんどくさい上に難しいので図面を描いてきた。図が汚いのは勘弁してほしい。戦陣だからと言うのもあるが黒インクしかないせいだきっと。その図面を机の上に広げて内容を説明する。順番に説明すればいいんで多分わかってくれるはずだ。

 大雑把に説明を終えると将爵が妙な表情を向けてきた。


 「なるほど。興味深いがこれは卿が考えたのかね」

 「似たような前例はどこかにあるかもしれません」


 実際この世界の戦史に詳しいわけじゃないんだよな。基本的に脳筋世界だから勝った負けた以外の戦争に関する記録が豊富とはいいがたいし。

 俺の作戦はあくまでも前世の記憶に基づくものだ。しかも俺自身が実践したことがあるわけじゃないんである意味机上の空論。とは言え今回は有効なんじゃないかと思う。


 「ヴェリーザ砦の魔物は動く死体などでしたし、仮に魔族が指揮をしていたとしても軍事の専門家ではありません。想定外の状況には対応が遅れるのではないでしょうか」

 「一理あるの。解った。この件は儂から使者を出そう」

 「有難う御座います。その際なのですが、将爵のお名前での提案とさせていただけませんでしょうか」

 「それはなぜかね」

 「いや、私のような若造の発言では印象がよくないと思いますので」


 年齢的には学生だし立場は父の代理だからな。聞き流されると意味がない。


 「ふむ。しかしそれでは卿の功績にならなくなってしまうが?」

 「私の提案だとしたらそれ以前の段階でしょうから」

 「敵の排除が先、か。わかった。じゃが儂の名でも通るかどうかはわからんぞ」

 「承知しております」


 とりあえず聴いてもらえればそれでいい。もし提案が通ったとしたら実戦での運用面では現場の人たちが補正かけてくれるだろう。そもそも俺にはそんな作戦立案の義務も権限もないんだが。

 とは言え提案が届くだけ恵まれているとはいえるのか。貴族階級ってのは確かにメリットだな。これが冒険者とかやってたら普通貴族には話聴いてもらえないだろうし。歴戦の傭兵ぐらいになったら聴いてもらえるだろうか。


 そんなことを考えつつ本陣を離れた。今度はフォーグラー伯爵と居残りになった時の打ち合わせだ。格下の俺が訪ねていかなきゃならんから夜営陣内を移動しまくり。足が丈夫になりそうだな。

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…

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