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今日は別視点なのでちょっと短めです…
昨日ああ書きましたが今日には早くも総合評価1,600人超え、ブックマークも320件超えました。
評価ポイントも1,000pt超えました!
最初の目標達成できました、ありがとうございます!
色々な形で応援してくださる方のためにも頑張って続き書きますー!
ツェアフェルト家の執事に見送られて屋敷の門から外に出ると、マゼルとルゲンツは期せずして揃って建物を振り返り、次いで同時にため息をついた。
「……あいつはおかしい」
「言い方はともかく内容には賛成してしまいそうになるかな」
ルゲンツが唸りながら呟いたのに対し、マゼルも苦笑交じりに応じた。友人ではあるが、ヴェルナーの思考についていくのはマゼルにとっても困難である。
もっともそれも無理のないことではあるだろう。ヴェルナーの考え方の基本にあるのはゲームの知識と前世日本人としての経験、それにここが異世界という認識、更にはシナリオ上の死亡フラグを回避することが目的なのだから。
利害とか損得とかはおろか、この世界の常識とも別の基準で行動しているので他人からはなかなか理解はし難い。
「本物のお貴族様ってのはああなのかね」
「あるいは本物の天才なのかもしれないとも思う」
ヴェルナー自身が聴けば紅茶を噴き出していたかもしれない。天才どころか凡才だという自覚もあるし貴族の基準からはかけ離れていると本人は認識している。
だがマゼルやルゲンツから見れば状況が異なっていた。
ヴェルナーの知らない事ではあるが、マゼルたちは魔物暴走の黒幕と言える魔族を斃した際、その捨て台詞から騎士団に大損害が出ていると思っていた。
ところが急いで戻ってみると騎士団に損害は出ているものの想像よりはるかに軽微で、しかもそれがヴェルナーの活躍によるものだと聴いたのである。
魔族の目論見を正面から突き崩したのだ、とマゼルは驚かざるを得なかった。
その後も地図と人員を用意しての商隊発足の手際の良さを見せられたと思えば、予想通りにヴェリーザ砦は陥落している、とマゼルたちから見ればここまでのヴェルナーの判断はことごとく正確なのである。
ゲームのストーリーをなぞっているという事実を知らない以上、二人の誤解も無理からぬものであるかもしれない。
「おいていかれないようにするのも大変だけど。友人と呼んでくれている以上頑張らないと」
「お前さんも苦労するねえ」
マゼルの決意を聞きルゲンツが軽く笑う。ヴェルナーは
ヴェルナーが驚いたマゼルのレベルだが、そもそもの原因はヴェルナーの行動がマゼルの努力につながっていたのである。もし全知の人物が第三者視点で見れば相互の認識のずれが大きすぎて笑ってしまうかもしれない。
「ま、まずは明日会う相手のことだな」
「そうだね。どんな人だろう」
そうは言いつつヴェルナーの推薦ならたぶん大丈夫だろう、とマゼルは楽観している。その信用しきっている表情を見ながらルゲンツがからかった。
「お前が女だったらヴェルナーに惚れてたんじゃないのか」
「うーん、どうだろう? 顔じゃないのは確かだろうけど」
真顔で考え込んだマゼルに今度こそルゲンツが苦笑を浮かべる。その苦笑に気が付かなかったマゼルは言葉を継いだ。
「ただ、女の子に人気はあるよ」
「あー、かもしれんなあ」
この国は個人の武勇が重んじられる。そのため、入学直後のヴェルナーのように「典礼大臣の子息」「伯爵家嫡子」というだけでは決して高く評価されるような存在ではなかった。だが現在の評価は一変している。
個人として魔物暴走で勇戦した事実は伝わっているし、その魔物暴走やその後の砦での戦術指揮官として、騎士団を中心にツェアフェルト家の嫡子は若き勇将であるとして評判になった。
さらに副爵として次期伯爵を王家が公認しており、王太子のお気に入りという噂も広がっている。露骨に言えば貴族子女からすれば「美味しい婚約相手」と言う評価が急速に高まっているのである。
皮肉なことにヴェルナー自身はここ最近忙しかったため学園に行く暇もなく、自身の評判を聞く機会がないためそのことに全く気が付いていないのではあるが。
「あとは最後に渡されたあれの確認か」
「だね」
帰り際に「まだ途中だったんだが」という発言とともに渡されたのはヴェリーザ砦内部の図面である。線と書き込みだけの簡単なものだが、清書前であるためだろう。もっともヴェルナーに絵心がないのは確かなのだが。
解読作業に近いものは必要になるだろうが、確認しておいて損はないと渡されたものなので、可能な限り確認しておくつもりである。本来国家機密に類するものであるがそれは三人とも理解していても言わなかった。
「ヴェルナーって図にこだわるよね」
「そういえばそうだな」
ゲーム認識の影響かもしれないが、ヴェルナーはとにかく
設計図ならともかく理解するための図という概念がないため、ヴェルナーのこだわりが異端に見えるのだとは言える。空撮や測量図と言ったそもそもそれに値する水準の実物が乏しいのだから無理もない。
「いずれにしても面白ぇ」
「ヴェルナーは面白がるなって言いそうだなあ」
そう言って笑いながら二人は夜道を戻った。そして翌日に二人そろってエリッヒ・クルーガーと会い、双方納得してパーティーを組むことになる。
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
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