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総合評価はもうすぐ1,600点、ブクマは310件超えましたー!
評価ポイントももうすぐ四桁が見えてきました。
評価やブクマしてくださる方がいるの本当に嬉しいです。
興味を持っていただけたり読んでくださったり、ありがとうございます。
事情は理解できたが状況が変化しすぎて流石にいろいろ困る。こっちにも都合ってもんがあるしな。
幸い軍というか伯爵家隊の準備は父がやってくれるらしいので、ノルベルトを借りて冒険者ギルドから
難民の中に魔獣が入り込んだらパニックが起きて軍にも被害が出る。そうさせないためにも接近してきた魔物や魔獣を被害の出ないうちに撃退するのが基本だ。そのためには周辺警戒要員が絶対に必要になる。そしてその辺はプロに任せるのが一番手っ取り早い。
ついでに地図も必要なので使用人を派遣して王宮で地図の写しを作ってもらう。このぐらいは国にもやってもらわんと困る。軍事機密かもしれんがこれは軍事活動だ。
その一方でマゼルにも使者を出して伯爵家に来てもらう。ルゲンツも来られれば来てもらいたいが最悪マゼルだけで用は足りる。
幸いというかまだマゼルは学生寮にいるんで捕まえるのは難しくない。そのうち旅に出たら連絡が取りにくくなりそうだ。どうにかしたいけどスマホはないしなあ。
武装を確認し物資の手配をするためのリストを読み込む。秘書が欲しい。前世でも秘書なんかいなかったが、前世より忙しいんだからいいじゃないか。俺外見年齢的には学生なんだけどな。
内心で脈絡もない愚痴を言っていたらマゼルが到着した。幸いルゲンツも一緒だ。というかマゼルがわざわざ連れてきてくれたらしい。
「こんな時間に急な呼び出しって何事かと思ったよ」
「悪いな。ルゲンツも済まない」
「別に構わんがな」
そう言いながら剣を佩いてるのはあれか、冒険者の常在戦場ってやつですかね。マゼルの方が軽装なんでどっちが常識だかわからなくなってくるな。
メイドのティルラさんが名人芸で淹れた紅茶を並べて部屋を出ていく。もうマゼルやルゲンツともすっかり顔見知りになったな。とりあえず紅茶で喉を潤す。なお茶菓子は出来合いのクッキー。
同じように一口紅茶を飲んだマゼルがまっすぐこっちを見た。
「で、何だい?」
「他言無用だがトライオットが攻め滅ぼされたらしい」
がちゃん、という音が部屋に響く。マゼルとルゲンツがティーカップをソーサーに戻すときに立った音だ。割るなよ。
「……なんだって?」
「大量の難民が発生してるらしくてな。その対応に行かなきゃいけなくなった」
ルゲンツの腹の底から出ている声に対して平静に聞こえるように返す。というか俺だってそんな詳しくないんだよ。だから睨まないでくれ。
マゼルが真剣そのものの顔でこっちを見る。
「ヴェルナーが行くのは決定なんだね。つまり事実だということかな」
「どうもそうらしい。ただどのぐらいの期間か俺にもわからん。そこでだ」
まずやっておくのはエリッヒとの顔合わせだ。本来なら俺が立ち会いたかったがそんな暇はなさそうだし、マゼルに直接行ってもらうしかない。
「頼りになりそうな人と知り合いになってな。二人は回復魔法とか得意じゃないだろ」
今はな。そのうちマゼルはそこそこ使えるようになるはずだ。勇者補正というか主人公補正というか。ともかく万能型だもんな。
「少しはできるけど得意というほどじゃないね」
「マジか」
驚いた。俺が思うよりマゼルのレベルは高くなっているのか。ルゲンツの方に視線を向けると黙って首を振ったが、自分は魔法は使えないという意味なのかどうか分からん。まあいいや。
「まあ、回復魔法も使えるしかなり腕の立ちそうな人と知り合ってな。本当なら俺が紹介したかったがちょっと時間が怪しい。そこでだ」
「解った。ヴェルナーの紹介なら会ってみるよ」
何も疑いがないのは助かるんだが大丈夫か不安にもなる。お人よしめ。いやゲームの主人公ならこんなもんか。ゲーム中は街での情報を疑うってことしなかったもんな。これで嫌みがないのが主人公補正なのかもしれん。
「名前はエリッヒ・クルーガー。宿はここだ。相手にも俺から断りを入れておく」
「解った」
「俺も同行させてもらうぜ」
「むしろお願いしたい。そのうえで、だ」
ルゲンツも同行してくれるらしいのでそっちは任せると同時にもう一つの件も触れておく。こっちはこっちで重要だ。
「手配はしておくし父やノルベルトにも伝えておくが、俺が王都に戻るより先に商隊が戻って来たら、入手してきた武器や防具を適当に持って行ってくれ」
「は?」
マゼルとルゲンツの声が奇妙に一致した。そんな変なことを言ってるか?
「全部持ってくようなマゼルじゃないだろ」
「それはもちろん……そのつもりだけど」
「いいのかよ」
マゼルとルゲンツがまだ何を言ってるのかよくわからんという表情で聞き返してくる。こっちは最初からそのつもりだったんだが。
「飾るために購入したわけじゃないしな。俺は槍が一本あればいいし、必要ならまた購入できる」
スキルが《槍術》の俺は剣とかあってもしょうがない。いやたしなみというか平均程度には剣も使えるけど。学園で剣技授業の成績は中の下かよくて中の中ってところだ。マゼルとは比較にならん。
それに、商隊に仕入れさせたのは国へのサンプルだ。どうせなら有用性も証明できればその方がいいに決まってる。現実に問題が起きた際に倉庫に突っ込んであってもしょうがないという言い方もできるが、使える人に使ってもらうのがベストだろう。
「気になるなら貸し出す、ということでもいい。俺にしてみれば二人が強くなってくれる方が助かるしな」
「前から思ってたんだが」
ルゲンツが心底わからんと顔に描いたまま声を出す。
「お前さん、何でそこまでやるんだ?」
「どれの話か解らないけど……個人で言えばマゼルは俺の友人だから」
これは嘘じゃない。カリスマってやつなのかもしれんがマゼルに協力するのには抵抗がない。基本的にいいやつだしな。そういえばゲームでも主人公には皆友好的だ。無償で協力する奴も多い。
そもそもゲーム中は主人公騙す奴も人間の中にはいないし、家の中勝手に漁られても逮捕されたり罪に問われたりもしない。後者はこれ犯罪だよなあ。流石に実際は他人の家勝手に漁ったりはしてないようだが。
そう考えると俺もゲーム世界に引っ張られているんだろうか。
「公的に言えばマゼルに協力するのは王太子からの依頼もあるけど。まあそんなもんなくても協力はしてるだろうな」
「俺はどうなんだ」
「信用はできそうだし、魔族に対抗できる戦力は多い方がいい」
魔王討伐の投資だ、という表現は使わない。というか投資なんて言葉はこの世界じゃ一般的じゃない。友人関係とその仲間に協力、というのは嘘じゃないしな。
しかしそうか。ゲームのストーリーを知ってるからだとか言えるはずもないし、意外と説明は難しいな。俺がそんなことを思いながら沈黙してるとルゲンツが何とも言えない表情で唸った。
「マゼルもそうだがお前さんも相当にお人よしだな」
「心外な言われような気がする」
マゼルほどいい人じゃない。生き残るためにというのが俺の基本行動だ。言い訳として
反応に困ってるとマゼルがはっきりとこっちを見て口を開いた。
「いろいろ借りておくよ、ヴェルナー。いつか返す」
「おう、貸しておくぜ」
今はそれで十分だぜ、マゼル。いずれ魔王の首持ってきてもらうんだからな。
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
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