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総合評価1,400点、ブクマ280件超えの形で応援と、誤字報告もありがとうございますー
コメントも複数いただけてるので嬉しいです。
やっと花粉も落ち着いてきた(なくなってはいませんが)ので気分上向きで頑張ります!
俺は寄り道をしてから王都の救護所に足を向けた。先日の負傷した労働者や兵士などが教会に付設してある救護所で手当てを受けているはず。
何とか三桁の人数を救出支援することはできたが、労働者として働いていた非戦闘員はともかく騎士や兵士と言った戦闘力のある人物は数十人にとどまった。クナープ侯本人は士心を得ていたと言えるんだろうな。
ちなみに騎士と貴族は別の治療施設がある。別々になっている理由とか治療内容はまあ察してくれ。
ゲームだと宿屋で一泊すれば回復するがこの世界ではそうもいかないらしい。これもゲームとの差だな。
あるいは教会の神様の扱いが違うのか? わからん。いや宿に泊まると怪我が回復するという方がおかしいと言えばおかしいが。回復役がいれば夜のうちに治療したと言えるんだろうけど。
ともかく救護所に向かう。治療施設でもいいんだが証言の数が欲しい。負けた貴族だと相手の強さを三割増しで言う事もあるらしいし。弱い相手に負けると面子が立たんと言う事だろう。
「ようこそ、救護所へ。どのようなご用件でしょうか」
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトと言う。先日のヴェリーザ砦での怪我人に話を聞きたくてな」
「さようでございましたか」
「これは救護所への寄付金だ」
袋でカネを渡す。わざわざ屋敷に寄ってきたのはこいつの為だ。何のかんのと言ってもまず誠意を見せた方が扱いは格段に良くなる。
「ありがとうございます。お話を聞かれるのでしたらこちらにどうぞ」
軽傷者のいる部屋に案内してもらった。重症で唸ってる相手に話を聞くのは無理だしな。
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトと言う。礼儀は気にしないでくれ」
貴族が来たという事で何人かが立ち上がりそうになったが抑える。面倒くさいのは俺もごめんだ。
「済まないが聴きたい事があってな」
「なんでしょうか」
敵の外見や数、そして何より砦の内部に関して質問をしていく。思い出させるのは少々気が引けるが敵の情報を集めておくのは大事だ。
それに砦内部の壁の配置は設計図でも調べられるだろうが、クナープ侯が内部をどうカスタマイズしていたのかとかは現場で働いていた人にしかわからない。そもそも設計図が閲覧できるかどうかも怪しいし。
扉が設置された場所とか、設置前に襲撃された場所とか、改装工事中だけのつもりで物置部屋に使っていたとかもあるだろうしな。
結論。出現する敵の種類に関してはゲームと大差はなさそうだ。もちろん強さに関しては解らんが。
砦内部の図面も荒っぽくだが出来上がった。魔物が扉増設とかしていたら別だがあんまりそういう事はしないような気がする。
しかし砦のマップは当たり前だがゲームとはだいぶ違うな。と言うよりゲームのマップの方が普段人が生活することもある砦らしくないんだが。
トイレのうちのひとつが北西の隅にあるのか。ふむ。あいつらはトイレは使わないだろうな。
「悪かったな。見舞い金だ。受け取ってくれ。秘密にしておいてくれよ」
部屋の人たちに銀貨を渡しておく。治療費の足しぐらいにはなるだろう。国費からも出るらしいが全額じゃないだろうし。
同時に銀貨欲しさに人が群がってくると困るんで秘密にしてもらった。自衛のためだ。
本当は先に渡した方が口は軽くなる。軽くはなるが余計なサービス精神発揮されてしまっても困る。だと思うとかそう思ったとかの本人の感覚情報はこの場合ノイズになるからな。このあたりの線引きは難しい。
隣の部屋でも聞いて情報のダブルチェックをしようかと思ったところで思わず足が止まった。見覚えのあるというか記憶の中の人物が負傷者の治療にあたっていたからだ。
そういえばこのあたりで勇者パーティーに入っていてもおかしくないのか。いやまてよ。これは引き留めておく必要があるんじゃないか。そう思いながら声をかける。
「申し訳ない。少しお話をよろしいですか」
「ひと段落したところです。構いませんよ」
がっしりとした体つきに温和な表情。まちがいない。
ゲームにも登場した勇者パーティーの一人、エリッヒ・クルーガーだ。
エリッヒ・クルーガーはあのころのゲームでは珍しかった
ラウラの魔力が上がって攻撃にも魔法を使えるようになると逆に回復専門になるんだが。中級全体回復魔法にはお世話になりました。いやそれはこの際どうでもいいか。
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトと言います」
なんか今日は自己紹介ばかりだな。名刺があったらカラになってそうではある。初めて来たところだとこんなもんか。
「エリッヒ・クルーガーと言います。修行中の身です」
「負傷者の治療をしていただいたようで。この国の貴族の一人としてお礼を申し上げます」
頭を下げたらおやという表情を浮かべられた。まあ普通の貴族らしからぬ態度であることは認める。年齢相応ではあるんだが。
「お気になさらず。それにしても失礼ながら」
「年齢らしくありませんか」
それとも貴族らしくないか? 苦笑してしまう。自覚はあるしな。主におっさんの自覚が。
「個人的には好感が持てます」
「そう言っていただけるとありがたいです。ところで……」
いくつか話の接ぎ穂を挟む。負傷者の状況や傷跡などから敵の武器や注意すべきことなどあえてこっちの知っている知識は出さずに質問し、率直な意見のみをメモしていく。
「なるほど、参考になります」
「いえ。それよりもやはり砦が奪われたことは問題になっておりますか」
「もちろんそれもですが」
どうせどこかから漏れることだ。俺はクナープ侯の最後というか死後の扱いを詳しく説明した。みるみるエリッヒの表情がゆがんでいく。
「その挙句次は王都だ、ですからね。落ち着いてもいられません」
「ごもっともです……まさかそのような外道だったとは」
それだけ言ってエリッヒが沈黙する。いい傾向だ。うまくいってくれることを祈るが。
「もしよろしければ、もう少しお話をお伺いしても? 何かお力になれるかもしれません」
よし来た! 内心でそう思いはしたが表情に出さず、かといって演技力に自信があるわけでもないので目を見開いて驚いたふりだけする。
このぐらいは会社員時代に嫌でもできるようになる。ああ狡い大人だ我ながら。外見は学生だがな。
「それはありがたいのですが、よろしいのですか?」
「ええ、そのような話を聞いてしまうと無視もできません」
さすが勇者パーティーのメンバー。まじめだ。俺としてみれば本当に助かる。
「解りました。エリッヒ卿は今日はどちらにお泊りですか」
「今日は宿を決めてしまっております」
「そうですか。時間も時間ですし、後日改めてお話をさせていただければ。会っていただきたい友人もおりますし迎えを差し向けます」
「解りました。では後日よろしく」
これで良し。確実にマゼルに会わせることができるだろう。顔に出さないように努力してるが内心では安堵のため息つきまくりである。
ゲームではエリッヒは壊滅した騎士団の代わりに何かできないかと王都にとどまり、マゼルと会うことになっていた。
ところが現在では騎士団は壊滅していない。エリッヒが王都にとどまる理由がないまま旅に出られると色々不都合が起きそうで怖い。だからどうしても足止めしたかった。
ゲームの強制力が働いているんならこんなことをする必要もないが、ゲームであることを過剰に信用するのは危険だと思い知ったばかりだからな。
そんなことを考えながら帰宅した俺だったが、いきなりの父の発言に面食らうしかなかった。
「ヴェルナー、急な話だが明日から学校も休みだ。兵を率いてもらう」
「はい?」
どうしてこうなった。
活動報告にちょっとお願い(誤字報告システムについて)を追記いたしました。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2068404/blogkey/2769222/
私以外の執筆者の方も同じようにお困りの方もいらっしゃると思いますので、
お時間がある方はぜひご一読いただけますよう、お願いいたします。