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昨日総合評価600pt超え、ブクマ100件を超えたと思ったら

今日総合評価700pt超え、ブクマも130件超えと急に増えて驚いています…w

評価してくださった方も50人超えました! 嬉しいです。


読んでくださる方がいると思うだけで続きを書く意欲がわきます。

お読みくださっている皆様本当にありがとうございます!

 魔法とは何ぞや、と言う所から考えて一番最初に疑問に思ったのは実は魔力回復薬の存在だった。存在そのものがおかしい。

 仮に魔法使いの魔力が〇になっても、大きくも重くもない回復薬を使うと集団を殲滅できる魔法が使えるまで回復する。ゲーム中は便利だった。

 便利とはいえ魔法にエネルギー保存の法則なんぞを持ち出してもしょうがないが、いくらなんでもおかしい。魔力回復薬にそれだけの魔力があるなら投げつけた方が破壊力ありそうなもんだ。

 もしくはガソリンのように回復薬を別の燃料か何かに転用するとか。


 とまで考えたとき、案外これが正答に近いのではないかと気が付いた。別、つまり魔力は二種類あるのではないかと。


 例えて言えばスマホとネットの関係だ。スマホの電力が無ければネットに膨大な情報があってもスマホとしてはただの箱だ。いや板か?

 逆に言えばスマホを通さなければネットの情報はただの信号でしかない。信号そのものは使いようが無い。


 だとすると、だ。魔力回復薬で回復するのがスマホの電力だと仮定すると、ネットの信号にあたる魔力はスマホ電力の方の魔力がないと何もできないのではないか。

 仮に人体魔力と自然魔力と呼ぶことにする。自然魔力は人体魔力を経由しないと力が出せない。回復薬は人体魔力の回復程度なら効果を発揮する。外付けバッテリーだな。


 スマホがネットの信号を情報に変化させるように、人体魔力は自然魔力を炎やら吹雪やらの力に変換するのが役目ではないかと。

 クラスやスキルはそれを特定の方向にむけて効率的に行うOSやアプリなのだろう。《槍術》スキルを持っている俺が槍を使っている間は疲労が極端に少ないように。

 クラスとスキルのどっちがOSでどっちがアプリなのかはもうちょっと実験しないとわからんが、まあそれは後回しでもいいだろう。


 さてそうすると、スマホを狭い範囲で大多数が同時に使うと回線が混雑してネットそのものが遅くなるような状況が起きたとき、魔力ならどうなるのか?

 魔法発動と言うダウンロードのスピードが遅くなるのか。それとも回線エラーが発生するように途中で発動が出来なくなるのか。今回はその実験だった。


 密集した状況を作り様々な魔道具を持ち込み、手当たり次第に自然魔力を消費させる。消費と言うか浪費かも知れん。

 先にその魔力消費密集状態を作ったうえで魔法を発動させると、明らかに威力が低下していた。サイトは表示できたが画像が表示されなかったような状況だと思って多分間違いない。

 つまり魔法の本体である自然魔力は一定範囲内で一度に使える限界量があるという事だ。どこの地形でもそうなのか、自然魔力の密度が高い場所があるのかなどは調べる必要はありそうだが。


 もちろんこれには欠点もある。自分たちの使う魔法も効果が落ちるという点だ。一定範囲でより自然魔力を浪費すれば発動さえしなくなるかもしれないな。

 だが目に見えるメリットもある。魔法のアイロンより攻撃魔法の方が威力が高いのは当然だが、攻撃魔法の方が効果が下がった。魔法の順番が後の方ほど影響を顕著に受けるようだ。

 そして何より魔道具なら魔力のない人間でも使えるのだ。魔道具の密度を上げるなり、魔力を無駄にドカ食いするような道具があれば相手の魔法を阻害する事が出来るはず。

 スキルの方への影響も研究の必要はあるがそれは野外実証研究でなくてもいいだろう。


 そして俺の知識でいえば、一定範囲内における自然魔力量は実はそんなに多くないんじゃないかと思える。そうでなきゃ勇者パーティーは物量作戦もできたはずだ。

 勇者パーティーがその能力をフルスペックで発揮する為には、魔力を使う人数を少なくした少数精鋭でなければいけなかったんじゃないか。

 また魔物暴走時の記録も調べてみたが、暴走する魔物が魔法を使った例も少ない。単体攻撃魔法ならともかく範囲型攻撃魔法を使った例に至っちゃ皆無だ。あれだけの集団になると魔法を使うこと自体が困難になるのでは。

 そう考えたとき、この自然魔力浪費作戦が王城襲撃イベントの突破口になるんじゃないかと気が付いた。


 王城に結界があるのは知ってるがそれが有効なら王城破壊イベントは起きないだろう。結界なんぞに頼る気は初めからない。

 だが襲撃をかけてくる奴も含む、魔王四天王はいずれも魔法攻撃型の魔族だ。ちなみに魔軍三将軍が物理攻撃型になる。

 襲撃をかけてくるのが魔法攻撃型の相手になら、この処理落ち(ウラワザ)は意外と有効なんじゃないか。


 ただ王城全体の自然魔力を使い切るような魔道具はもちろん存在しない。だが敵は一般人じゃ絶対に勝てない相手だ。正面から戦って生き残ると言う選択肢が取れない俺にとっては暗夜の灯だ。

 この部分をもっと突き詰めて考える必要があるな。


 「見事な発想だよ、ツェアフェルト子爵」

 「本当に恐れ入りました」


 シャンデール伯爵とフォグト魔術師が寄ってきて賞賛してくれる。ここは素直に応じておこう。


 「ありがとうございます。思ったよりもうまく行ってほっとしておりますが」

 「いやこの発見は新しい結果をもたらすよ。敵対国家の軍に魔力を消費するだけの道具を投げ込めば、相手の魔術師隊の攻撃力が下がるのだからね」


 フォグトさん、だから魔族との戦いが本格化する前だというのにまず国家間紛争で使うこと考えないでください。

 政治ってそんなもんではあるし相手もすぐ同じものを作って来るだろうが。A国で成功した兵器はすぐB国でも作られるのが歴史の事実だ。

 そりゃそうだよな。B国はゴールがあるとわかってるんだからその分よほど楽だ。アルキメデスぐらい時代をぶっ飛んだ天才が作ったものはその時代には真似しにくいようだが。

 惜しむらくはアルキメデスの考案兵器を実際に作った職人の名前が知られてない事だよなあ。原理・内容を理解して作ってたんだろうか。俺はそっちの方がよっぽど興味あるぞ。


 「魔力の消費量が大きいだけの使い捨て魔道具を開発する必要があるな」

 「はい、早急に研究を進言いたします」


 何処に使う気なのか気にはなるがそれを口に出す気はない。むしろ早く開発してくれ。運用だけ考える方が楽なんだよ。開発する能力はないしさ。


 「それにしても、今まで集団戦で魔術師隊の威力低下は話題になったりしなかったのですか」

 「そもそも検証した事もありませんでしたのでな」


 フォグトさんの発言に納得する。そりゃそうか。こんな仮定が無ければ実験する事もないし、実戦での魔法のダメージ減少は装備のせいか相手の防御魔法かも区別できん。

 そもそも戦場で死ぬか生きるかの戦いやってるとき呑気に検証は出来んわな。やる事が両手で余るほどあるのは以前の魔物暴走でいやと言うほど実感したし。

 発展の研究開発は行われてきたが防御ではなく阻害を、装備ではなく道具でと言うのは今までなかったと言われればそれもわかる。

 魔法阻害って装備以外でのダメージ減少と言う発想はなかったんだろうな。


 「とりあえず、実験結果は結果として、演習の方の準備も始めたいのですが」

 「おお、そうだったな」


 こっちもこっちで重要なんで忘れないでください伯爵。

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…


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