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総合評価600pt超え、ブックマークも100件超えました。

増えていくの本当に嬉しいです、ありがとうございますー!

たくさんの人に読んでいただけているのだと思うと頑張れます。

 俺は一〇〇人隊長として王都とヴェリーザ砦との中間あたりの平原にいる。それも平日に。やったぜ、合法的に授業サボりだ。いやそういう話じゃないか。

 ゲームでは名もないフィールドだがこの世界ではヒルデア平原って名前がついている。この辺もゲームとは違うよな。単純にデータ量の問題かもしれんが。

 全体では三〇〇人の正規軍、と言っても騎士と従卒による軍も含むが、ともかく三〇〇人ほどの兵士が今回集団戦闘訓練と言う事でこの平原に展開している。期間は一週間だ。


 三〇〇人と言う人数は少ないがそれでも結構な補給物資を必要とする。一食に一人パンを一個消費するとしよう。一日三食で一人三個だ。三〇〇人いるから九〇〇個。

 一週間、一人パン一個でもパンだけで六三〇〇個必要になる。ここにチーズとか肉一切れずつとかワイン一袋とか追加していくと食い物だけで荷物が膨大な量に。

 更に馬の食う餌やら補給部隊がいれば補給部隊の人数分の食料やらで荷物が加速度的に増えていく。補給・輜重部隊は戦闘が苦手かまったくできないんで護衛も必要だ。

 輜重隊の人員に護衛隊の食料まで考えると食い物だけでどれだけ必要かって話になる。さらに武器やら防具やら雨具やら防寒具やらがあるんだから軍ってのは本質的に金食い虫だってことだ。

 人や金がどっかから湧いて出てくると思ってる奴は気にしないんだろうが。前世には札なんか刷ればいくらでも出来るとか言ったバカもいたな。この世界は金貨とか銀貨だが。


 まあそれは今回はどうでもいい。演習の目的はヴェリーザ砦対策ではあるが、同時に演習しておきたいのは集団戦と対範囲魔法戦だ。対魔法戦と言う方が正しいのか? 面倒だから対範囲魔法でいいか。


 騎士とか兵士とかの場合だけ見れば中世からせいぜい近世世界だが、範囲魔法に関して言えば手榴弾とかナパーム弾とか火炎放射器とかの現代戦兵器に近い。

 そして王都付近の魔軍舐めプ雑魚なら範囲魔法は使わないが、四天王のいるダンジョン雑魚ぐらいになれば範囲魔法を当たり前に使いだす。そう言う奴らが王城襲撃をしてくると考えておく必要がある。

 つまり王城破壊と大量被害を食い止めるためにはどうしても対魔法戦のシステムを確立させなくてはならない。

 今までは王都からどうやって逃げるかを考えていたからこの問題に向き合ってこなかったが、これからは本気で考える必要が出てきたわけだ。


 しかしこれが難題だ。ぶっちゃけ野戦なら塹壕戦をすればどうにかなる事が多いだろう。騎士に塹壕戦やらせるのもそれはそれで一苦労だろうが。

 しかし攻城・籠城戦では? まさか王城の床に穴掘るわけにもいかない。対抗魔法だって攻撃魔法を使う魔族の数が多ければジリ貧だ。そして人間の対抗魔法使いより魔法を使える敵の方が数が多い。

 何とか抜け道はないかと学園で魔法のシステムを研究したり、宮廷魔術師長や国の有力者に相談を持ちかけたりと、この一週間脳細胞がストライキを起こしかねないぐらい色々調査してきた。

 宰相閣下がその対策を確立させることが出来ればヴァイン王国の有利さが一段と高まると期待していたが、そういう方面での期待はしないでくれほんと。


 「それでは、実験を開始したいと思います」

 「うむ、頼む」


 俺たちに声をかけてきたのはフォグト魔術師。宮廷魔術師団の一人で若手の実力者。若手と言っても俺より十歳は年長。いや俺が若すぎるんだが。

 応じたのはこの演習隊の指揮官であるクレス・ゲオルク・シャンデール伯爵である。伯爵は四十代半ばでこれまたハンサムだ。悔しくないぞ。

 俺はあくまでも一〇〇人隊長。ただ俺の指揮するツェアフェルト伯爵家隊は集団戦のエキスパート扱い――俺自身は否定したい――なので、今回の演習では中核部隊となっている。

 ちなみに一〇〇人隊長という肩書だが実際に率いてるのは六〇人。それ以外の二四〇人の内二二〇人はシャンデール伯爵やそれ以外の貴族からの選抜隊。

 一〇人は実力さまざまながら宮廷魔術師団に所属している若手魔術師だ。そのほか一〇人は戦場事務官と言う文官で記録係になる。


 一〇人の魔術師隊が平地に設置された的に向かって攻撃魔法を一斉に打ち出す。確かな轟音と爆風、閃光が的に直撃し物理的な損壊を与えたことを伝えてくる。

 同じ魔法でも術者によって差が出るし同じ術者が同じ魔法を打ち込んでも威力に多少のばらつきが出るのはこの際避けられないか。

 このランダム性はゲームのシステムの問題かなどと思ってる俺の横でシャンデール伯と伯爵の補佐役であるグレルマン子爵が砕け散った的の痕を見ながら頷いた。


 「見事な破壊力ですな」

 「研鑚は積んでいるようだ」


 まあ、そうな。頷きつつ内心でまあまあと評価する。いや、一応の破壊力はあるんだ確かに。少なくとも魔法をほとんど使えない俺よりよっぽど威力がある。

 ただ比較対象を勇者パーティーにしたり魔族と戦うには何と言うかいろいろ足りない。もっともそれを知ってるのは俺ぐらいか。

 それもあくまで俺の知識でひょっとしたら桁一つぐらい足りないのかもしれないがそこまでは解らない。ゲーム中での相手の強さも覚えてないし鑑定能力はないので魔術師隊の実力も不明。

 くう、チート能力が欲しいぜ。


 バカなことを考えている間に事務官が新しい的を設置し終えたらしい。シャンデール伯が声を上げる。


 「それでは、第二実験を始める」

 「魔術師隊、用意!」

 「各員、配置に付け。魔道具用意」


 俺も声を上げる。実験内容は決して大げさなものではない。誤差以上の数字が出れば十分と言う範疇だ。大規模実験はまた別の機会にできるだろうしな。


 「配置に付きました」

 「各員、魔道具起動」

 「起動よし」


 魔術師隊と的を囲む人員が一斉に魔道具を起動する。大した魔道具ではないものも多い。かき集めてきたものばかりだから当然だ。

 しかし夜に使う魔道ランプあたりはまだしも魔道具式アイロンとか魔石の力で熱を発する携帯型魔道コンロとかを騎士が両手で抱え上げている様は滑稽と言えば滑稽だな。


 「撃て」


 伯爵が指示をすると魔術師隊が的に向かって、さっきと同じ魔法を打ち込む。再び的の周囲で爆発が起きた。だが先程よりも多少音や爆風が小さいような気はする。

 やがて煙が晴れると先程と異なり、ボロボロに壊れてはいるものの原型をとどめている的が現れた。


 「おお……」

 「成功だ」

 「信じられん……」


 驚きの声、感心する声、唖然とする声があちこちから上がる。中には自分のアイロンをまじまじと見てる騎士もいる。危ないからスイッチ切ってから触れよ。

 何度か実験を繰り返す必要はありそうだが、どうやら仮説は正しかったようだ。

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…


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