<< 前へ次へ >>  更新
26/110

――26――

季節の変わり目で体調崩しました (´_`。)グスン

花粉とのダブルパンチでぐったりしてます

皆様もお体にはお気をつけて…


総合評価400点、ブクマ60件超えの形で応援と、誤字報告もありがとうございますー

 「次にこっちの状況だが」


 地図を広げる。町の名前と場所の外に橋などの目立つポイントを記入した図でそこに人名がいくつも記入してある。


 「この町とかこの橋の近くにあるこの村とかにここに書かれた斥候を派遣してある。状況をそいつらに確認してくれ。状況を確認してもし危険だと思ったらルート変更も認める」

 「ルートの最終決定権は?」

 「伯爵家の執事補を同行させるが、危険に関する感度は現場の方が強いだろうからゲッケに決定権を持ってもらう。書面にも記す」


 むしろ執事補辺りだと伯爵様の為にも危険でも進むのだ、とか無茶を言い出しかねん。忠誠心高い奴ってのは別の意味で扱いに困る。

 臆病な奴を偵察に出すべきだって言ったのは武田信玄だったか? まあ正直誰でもいい。とにかく今は【いのちをだいじに】だ。


 「ここまで手配しておいていただけたのは助かりますな」


 アヴァンが感心したように頷く。地図はやらん。そう何が何でも頭の中に刻み込んでやると言わんばかりの目で見るな。さっさと仕舞う事にしよう。


 「相変わらず学生離れしてるよね、ヴェルナー」

 「まったくだ」


 ルゲンツまで頷きやがる。何を言ってるんだ。工数管理は大事だぞ。時間のかかるところに先に人手を手配しておくのは当然だろうが。


 「それと、ヴェリーザ砦の修復が始まったのは知ってるか?」

 「ああ」


 代表して答えたのはゲッケだがそれ自体は全員が知っているはずだ。名目は次の魔物暴走に備えての対策と言う事になってるけどな。

 違うと解ってるのは俺とマゼルぐらいか。


 「俺に言わせればあれは悪手だ」

 「悪手?」

 「王都からの避難所と言う事だが防御力も中途半端だし距離だけは近い。俺が魔族ならほどほどに改修できた所であそこを襲撃して橋頭堡にするね」


 シナリオをネタバレするだけだ。とは言えヴェリーザ砦が落城する時に近くにいるのは俺以外にはマゼルとルゲンツだけになるだろうが。

 それをわざわざ口にしたのにはわけがある。


 「可能性は無いとは言えないな」

 「相当に面倒なことにならないか?」


 ゲッケとルゲンツが顔を見合わせて唸る。傭兵とか冒険者ならそういう危機意識もあるだろう。ゲッケの方がそういう戦略的価値に敏感なのは元貴族だからだろうか。

 フェリが口の中のお菓子を飲み込んでから口を開いた。


 「で、兄貴はどうするの?」


 誰が兄貴だ、と思いながらフェリに応じる。


 「俺が出来るのは忠告までだしそれは終えている。ここで皆に伝えたいのはその時の行動指針だ」


 一息置く。


 「まず砦陥落の情報が聞こえても予定を切り上げないでくれ。商隊組は急いで戻るようなまねは不要だ」

 「理由は?」

 「ヴェリーザ砦奪還目的を理由に装備を没収されかねん。自分の為だ」


 ゲッケの疑問にきっぱりと断言する。実際はそれだけでもないが、この方が解り易いし納得もしやすいだろう。と思ったらマゼルがやや納得できないように口を開く。


 「それもどうなのかなあ」

 「ヴェリーザ砦の奪還が簡単に済むならそれもしょうがないと思うけどな。もし砦を占拠されたとして、魔族がそれだけで満足すると思うか」


 そう言われてマゼルも理解した表情を浮かべる。


 「そのまま王都の襲撃の可能性もあると」

 「すぐにかどうかは別だが、確実にな。占拠された砦を攻めて取り返すより砦から出て来てもらった方が相手をしやすい」


 本心としては異なる。と言うか奪還はマゼルにやってもらわんと困るんだ。ヴェリーザ砦を奪還する事でマゼルが勇者と認められることになるんだからな。

 多分向こうから打って出てきたりはしないと思う。思いたい。変な言い方だが魔物暴走で騎士団の損害が少なかったために国の動きが読めないんで判断が難しい。

 とは言えマゼルが強くなるまでは騎士団に大人しくしておいて欲しいぐらいだ。ほとんど悪党の思考だな。


 「だから少々遅れてもいい。迎撃作戦時に間に合えばな。可能な限りいい装備を手に入れてから戻って来てくれ」

 「承りました」


 アヴァンが頷いてくれた。その横でゲッケも無言で首肯している。助かる。


 「マゼルとルゲンツは腕を磨いておいてくれ。反撃の時に活躍してもらいたいからな」

 「解った。その時は暴れさせてもらおう」

 「だいたい理解したけど、砦の人たちはどうするんだい?」


 マゼルがそんなことを言い出した。うん、主人公らしい配慮だな。


 「完全に被害ゼロは無理だろうが、念のためにと王太子殿下にいくつか提案はする。後は受け入れてもらえてることを祈るさ」


 実際そうなのだ。俺としてもなるべく被害は出したくないが、俺の権限などたかが知れている。損害を少なくするための準備はするが恐らく恨む人も出てくるだろう。

 そう思うのは俺がこれから起きる事を知っていて、しかもそれを口に出していないからか。けど口に出しても信用してもらえるかは別なんだよな。

 信用されてもそれはそれで怖いし。何で知ってるんだとか裏で魔族とつながっているとか父の敵対派閥の貴族から足引っ張られたらたまらん。

 正確さが事実にならない貴族社会の怖さだ。ゲームは単純で良かった。


 「ま、神ならざる身なんで何でもかんでもは無理だ。出来る範囲を可能な限りでいこう」


 最後にそう言ってこの日は解散となった。無い物ねだりはできん。失敗してゲームオーバーだけは避けないといけないけどな。

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…


作品・続きにご興味をお持ちいただけたのでしたら下の★をクリックしていただけると嬉しいです。

<< 前へ次へ >>目次  更新