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ブックマークも40件超えました。

興味を持っていただけたり読んでくださったり、本当にありがとうございます。

 色々説明を終えて多少疲れたが続いて隣の傭兵ギルドに顔を出す。と言っても建物内を移動するだけだ。こっちの方がやや酒臭く感じるのは先入観だろうか。


 「傭兵ギルドにようこそ。何の御用で?」

 「商隊警護の依頼をしたくてね」

 「奥へどうぞ」


 冒険者ギルドと違ってこっちは結構な年のおっさんが窓口。荒事前提の傭兵に仕事を依頼するようなのに美人の愛想はいらんしな。

 あのおっさんは元傭兵で年取ったか怪我が理由で一線を退いた人だろう。福利厚生と言うほどでもないが第二の人生の手伝いもギルドの存在意義の一つだ。


 傭兵と冒険者の違いはと問われると説明は結構難しい。まあダンジョンに入ったりするのは冒険者、フィールド対応が多いのが傭兵だと思えば基本間違いはない。

 一番の違いは汎用性だろうか。冒険者は基本何でも屋だ。ダンジョンにも入るしさっきのように調査のみの依頼でも受ける。反面、少人数での行動が多い。

 またその分、個々人に応用力や様々な状況に対応するだけの知識や経験がないといけない。ない奴から死んでいくとも言う。


 傭兵は基本的に戦闘が想定される状況で雇われる。調査や薬草採取、迷宮探索とかは傭兵はほぼ受けない。遺跡調査もまず受けないな。遺跡調査の研究者護衛、ならギリであり。

 あと冒険者の中には対人戦闘を好まない人もいて、山賊退治とかは断る場合もあるが傭兵は基本断らない。戦闘面のスペシャリストってところか。


 そのほか、市中警備や治安維持任務とかを受ける事もあるので長期にわたる依頼だと傭兵の方が多い。冒険者は短期任務は受けるがいろいろやりたがる傾向があるように思う。

 今回の俺の例でいえばA町からB町までの商隊護衛だけなら冒険者でも可。A町からB、C、D町と移動しE町を経てA町に戻るという長期商隊護衛任務だと傭兵向き。

 特にルールとかじゃなくてそういう傾向と言うだけではあるけどな。商人と仲のいい冒険者なら長期護衛を受ける事もあるし。


 雇う側は傭兵団と言う形で集団を丸ごと雇い入れたりもする。傭兵団の内部には経理担当とか結構役割分担がされていて、一つの組織として運用されている場合も多い。

 組織が初めから出来てるんで護衛任務とか警備任務とかの際に手間がかからないという一面はある。冒険者だと組織だって動くのは苦手な奴も多い。

 ただ、傭兵団の場合、指導者の力量ひとつで集団能力が激変するんで見極めが重要。職業倫理の高い傭兵団もあるが中には山賊と区別つかんような集団もいたりする。

 そういうやつらは戦闘力だけは高いんで国と国との争いなんかでは役に立ったりするんだが嫌われる事も多いな。


 「警護のご依頼とか」

 「ああ、具体的には……」


 商隊が向かう予定の町の名前を伝える。移動する商隊の規模予定や今までの魔物出現状況などを加味しての日程調整、町での商売に必要な期間などをここで大体擦り合わせた。

 話を聞いてるうちに相手が驚いた表情を浮かべたのは貴族のお遊び商売には思えなくなったからだろう。

 まあ話を持ってきたのが学生の年齢の俺だからな。本気だと思えないのは無理もない。


 「では、護衛人数はどの程度の規模になるでしょうか」

 「馬車七~八台、人数は荷物持ち含め四〇人ぐらいになるだろう。荷馬は別だ」

 「護衛も交代要員を含めると同数かそれ以上になるかと」

 「だろうな。総勢一五〇人前後か、やや下回るぐらいか」


 危険地帯を経由し複数の町を梯子する商隊規模としてはそこそこと言うところか。大規模商隊と言うほどではない。少なくとも伯爵家クラスから見れば。マゼルあたりからは突っ込まれそうだ。

 荷が多くなるのは普段の流通に関係しているところが多い。地方だと服がまず貴重品だったりするからだ。


 服の大量生産は産業革命後の事なので、この世界でも基本新品の服はオーダーメイドになる。お仕着せの統一デザインですら新品だと割と高い。布そのものを作るのにも手間と人手が必要だからな。

 市民ではどうなっているかと言うと、オーダーメイドで服作らせる人間が着なくなった古着や城などで従者や使用人が着ていた普段着が町の古着屋に流れるわけだ。

 古着でも十分高価だから商売になる。庶民はそういった古着を修復したりして着る事になるが、オーダーメイドで服を作れる階級の人間が多いと古着もそれなりに流通する。

 余談だが仕事着は端切れにしてからそういう店に卸す。仕事着のままだと変装道具に使われるからな。出入りの商会が複数あるのは一カ所に全部のパーツを卸すと再生される危険性があるから。


 話がそれた。逆にそういった階層の人間があまり住んでいない町だとそもそも古着の流通が少なくなるんで、自分たちで布から作るか古着屋のある町まで買い物に行かなきゃならない。

 結果、そこそこ綺麗な古着なら地方中堅の町で売るとかなりおいしい商売となる。ビアステッド氏も王都から古着を運ぶ気満々だった。

 たまにだが一部贅沢貴族の中には一度袖を通した服は二度と着ない、なんてのもいるがそこまで行くと浪費だろうとしか思えない。悪役の貴族や令嬢はそのぐらいでないと恰好がつかないか?


 ちなみに服だけってこともまずない。大体陶器とかの緩衝材に古着や古布を使う。スペースの有効活用だな。

 そういうのを馬車に乗せて荷馬に乗せるのは塩やら砂糖やらと言ったものになる。何かあったら馬車を見捨てて荷馬だけ引いて逃げるわけだ。

 そうすれば荷馬の荷物だけでも最低限、次の商売の元手が作れる。塩は価格さえ考えなければ大体の町で売れるし。

 まあ今回は護衛も付けるんでそんなことにはならないだろう。ならないんじゃないかな。ならないといいな。


 「後は人選ですが」

 「ルゲンツ・ラーザーとオリヴァー・ゲッケの二人に人選の下準備を頼んである」

 「なるほど、あのお二人に。流石ですな」


 何が流石なのか良くわからん。お世辞だろうと思って流す。


 「大筋では以上だ」

 「解りました。後は人数を見繕いましょう」

 「頼む」


 ああもうほんと忙しい。そう思いながら傭兵ギルドを立ち去ろうとしたら横から声を掛けられた。元気のいい、聞き覚えのある声だ。


 「なあなあ、子爵様。なんかお仕事あるんだって?」


 ……驚いた。ラウラもだけどこいつも王都にいたのか。


 「おいらフェリってんだけどさ。おいらにも話聞かせてくんない?」

この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…


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