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初感想をいただきました! すっごい嬉しい。
日間ファンタジー異世界転生/転移ランキングBEST300に236位でランクインしていました。
初ランクイン、読んでくださっている皆様ありがとうございますー!
商業ギルドを後にして冒険者・傭兵ギルドに向かう。文字通り冒険者や傭兵が集まるところだ。
もともとは別組織……と言うか今でも別組織ではあるんだが、仕事が被る事もあるので同じ大きな建物の中で並設している状態。情報交換とか仕事斡旋の場になっている。
一階が酒場なのはまあこの手の店のお約束か。王都でもここにしかないのは元がゲームだからか?
ゲームに出ない街だとどうなっているのか確認しておく必要はありそうだ。
建物の中に入ると一度視線がこちらに刺さるがそれ以上の事はない。お約束の新人いじめのようなものが無いのは先日の魔物暴走の件の結果だ。
俺は最前線で槍を振り続けていたし冒険者隊の面子にポーションを分けたりもした。どの程度評価されているかどうかはわからないがここで俺を知らないとなるともぐりだろう。
意外と冒険者や傭兵も情報には敏感である。そりゃそうだ。変な奴や馬鹿な奴に雇われたら命の危機だからな。まあ中にはそういうのに雇われるかわりに吹っ掛けるのもいるが。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。今日のご用件は?」
「何人か雇いたいんだが」
「ご依頼ですね。こちらにどうぞ」
受付のお姉さんは美人だった。冒険者みたいな荒くれ者を相手にできるんだろうか。いや案外あのぐらいになると逆に手を出しにくいのかもしれない。
奥の部屋は防音室になっている。依頼内容によっては情報漏れがはばかられることもあるからな。
奥で話を聞いてくれる職員は男性だった。悔しくなんかない。
「どのようなご用件ですか?」
「調査依頼だ。
「それなりと言うと」
「調査先が複数でね。だから総数は判断し辛い。全部で20人ぐらいを見越しているが単独で優秀ならあるポイントには一人で行ってもらうとかになるだろうしな」
「なるほど」
おじさんが手元の板に書き込んでいく。メモ帳代わりの記録板だ。内容を羊皮紙や魔皮紙に清書した後に板の表面を薄く削ればメモ帳としての効果復活。
削った木くずは焚き付けに使うので捨てるとむしろ怒られる。ゴミが出ないという意味ではエコだな。
「調査目的の優先順位はこちらでつけてある。グループで雇われたいというやつや単独で仕事したい、と言う相手ごとにこっちから調査先を振る事になるだろう」
「解りました。その場合、話を聞いてから断るという選択肢は」
「有りだ。安全な調査ばかりでもないからな。危険手当も出す」
頷きながらがりがりと板の上でペンが走る。羽ペンだがこれも鳥型魔獣の羽だ。よくわからんが普通の鳥の羽ペンより長持ちするらしい。板に書くと言うか削った所にインクが入り込むというか。
魔物の血を加工したインクとかもある。イカスミみたいなものか。魔獣や魔物の素材買取とかってこういうところでも使われるんだな。
ちなみに黒板もどきもある。ただチョークの質が良くないのでちょっと擦るとすぐに読めなくなるんで使いにくい。
高級チョークは
「しかしそうすると報酬が記載できませんが」
「最低報酬にプラスで調査先により上乗せされる形になるな。ギルドには当然同じ方式で支払うし色も付ける」
「ありがとうございます」
当たり前だがギルドもボランティアじゃない。スタッフの給与もいる。建物の維持管理も結構カネがかかるらしい。荒くれが飲んで暴れたりするし。
そのほか、身寄りのない死亡した冒険者の合同葬儀なんかも実はギルドの受け持ちだ。そんな必要あるのかって? 死体から疫病発生したら困るんだよ。
だから子供がギルドに登録できない理由もその辺にある。身も蓋もない言い方になるがすぐに死ぬようなやつをギルドに登録すると葬儀代でマイナスにしかならん。
そのギルドの主な収入は買い取った魔獣や魔物の素材売却と依頼仲介の手数料だ。だから面倒なこういう依頼の仕方をしたときには多めにギルドに払う。大体二割増しなのは不文律みたいなものだな。
なお、よくギルドの壁に張り出してあるパターンがあるが、あれは必要最低限の情報しか書いていないことの方が実は多い。
まあ当然だ。注意事項まで全部書き込むにはスペースが足りない。依頼人が気難しいとかお忍び護衛の時とか、オープンにできない情報もあるしな。
だから冒険者が依頼を確認したら受ける前に窓口で細々とした注意点を聞くわけだが、その際に備えて依頼する側もギルドに細かい内容を説明しておく必要がある。
ここで齟齬が無いようにギルドに説明するとなると結構な時間がかかる。依頼する内容説明だけで数時間かかるなんてこともざらだ。
ちなみに大雑把に模様で仕事内容が把握できるようにもなっている。右上のマークが二重丸なら討伐依頼、三角と丸なら護衛依頼って具合。文字の読めない冒険者にも最低限の情報が解るようになっているわけだな。
その他色々なギルドのルールもあるんで費用も含めて依頼する側も意外と手間がかかる。迷子の猫さがし依頼とかなら依頼する側はそんなに手間はかからないけど。
細かく説明できないときは依頼人に直接確認してくれ、とギルドから冒険者に言うわけだ。今回の俺の依頼はこのパターンになるだろう。
「では調査先ですが、いくつか例をお伺いしても?」
「今言えるのはグーベルク近郊で魔物の出現頻度調査、デルメルン付近陽炎遺跡の魔物出現状況、ビーレリッツの橋の警備状況あたりかな」
外国の地名もちらほら出たんでギルド関係者がこっちを伺うような視線を向けてくる。戦争準備と見えなくもないか。
例を聞いたのは国内貴族の素行調査とかだったりすると面倒だからだな。政争には等距離を維持するのがギルドの賢い立ち回りだ。
「ちょっと手広く商品を仕入れる必要があってね。商隊を派遣するんだが先日特殊な魔物暴走があっただろ」
「ああ、なるほど」
魔族が魔物暴走を引き起こしたという情報ぐらいは当然ギルドも手に入れているだろう。同じことがほかの地域で起きていることも視野に入れなければならない。
単純に領主が無能で山賊が増えているとかならギルドで情報を購入すればいいことだが、今回のようなパターンだと情報がリアルタイムに近い形でないと困る。
「だから
「承りました。その分は」
「商隊警備に参加する場合、その分の日当も出す。ただし本来の調査任務で必要な情報漏れがあった場合はペナルティで減額」
「先に王都に戻りたい場合の許可は」
「商隊責任者に言ってもらえればそれでいい。その場合は当初契約分の報酬だけだが」
「当然でございます。調査にかかる費用ですが」
「調査先によるな。街中での聞き込みがタダで済むとは思わないが無制限と言うわけにもいかない。そこは本人と相談だ」
こんな感じで依頼の細部の条件までギルドには伝えておく。言えないことは言えないと断りつつ可能な限り話しておかないとあとが面倒。
恐らく
そのあたりは当然の事として受け取らないといけないし、実の所魔王復活の結果、今までと魔物発生分布が激変するだろうからむしろギルドにも最新情報を持ってもらった方がいい。
正確な情報があれば死人の数は減るだろうからな。
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
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