――16――
総合評価が100ポイント超えましたー!
お読みくださっている皆様ありがとうございます。続きを書く励みになります。
「と言うわけだよ。ぜひマゼル君には一度うちの娘に会ってみてもらえんかね」
「ウンガー子爵、子爵の娘さんは確か三歳ぐらいではありませんでしたか」
「……が、学生の身分ですのでいずれ機会がありましたら」
俺の横槍にマゼルですらかすかに引き攣った表情を浮かべたが、賢明にも拒絶の声を上げるのは堪えて逃げ口上でお断りする。
さっきからこれだよ。と言うかほぼ同年代ならともかく、五十近い伯母とか十歳未満の子供とかまでマゼルに押し付けようとするのやめろ。それだけ一般庶民出身で《勇者》スキルの魔族退治者は美味しい獲物に見えるんだろうが。
なお俺にも話が無いわけでもないがマゼルと比べるとかなり少ない。顔か。顔のせいか。
それにしてもやっぱりおかしい。ゲームだとこんなシーンはなかった。当然か。
そもそも貴族に言及はなかったゲームだし、もしあったとしてもあの魔物暴走で貴族も多数出陣していたんだ。王太子まで戦死していたあの後では多数の貴族も戦場に屍さらしたんだろう。敗戦後にはこんなお気楽やってる暇はなかったに違いない。と言うかこれからもお気楽やる暇ないんだけどなあ。
「……本当に助かったよ」
「おう、今度昼メシおごれ」
「三食おごってもいい」
珍しく心底疲れた表情でマゼルが言う。俺も疲れた。怒涛のお貴族様ご挨拶時間中しゃべりっぱなしだったからな。先日治した喉が痛くなりそう。
この世界での宮廷作法とかの勉強が此処まで役に立つとは。人生何が役に立つかわからん。
「それにしてもすごかったね」
「お前さんは学園でも人気者だろうが」
事実マゼルはそこそこ人気がある。顔も良く人柄もいいので普通にもてる。いい意味でフェミニストでもあるしな。
家の将来を見据えての貴族狙いの女子ももちろんいるが、そういう女子でも「あれで爵位があれば」という言い方で好意は持っている。
そういう独り言を聞くと貴族の子女の中には自由恋愛なんかはじめからありえないって子もいるんで逆に同情してしまう。同情したって近づいてきてくれるわけでもないがな。
話がそれた。とにかくマゼルは普通に優良物件ではあるんだ。しかもこれからもっと価値が上がっていく。
ただ価値が上がる理由は魔物とか魔族討伐の結果に伴うものだ。
本来ならこんな宮廷漫才……もとい、宮廷活動なんてしている暇もないはずなのに、この状況。この先どうなるのか逆に想像もつかん。
「お話中申し訳ありません」
「あ、はい……」
「問題はございませんが、御用でしょうか?」
突然聞き覚えのある女性の声で話かけられた俺は相手の顔を見て絶句した。
マゼルは知らないからだろう、普通に応じたが俺の方はそう落ち着いてもいられない。慌てて礼を返そうとしたが、その少女が笑顔でそれを制してくる。
「そのような礼は不要です、ツェアフェルト子爵。気楽になさってください」
簡単に言ってくれますね。と言うかあなたこの時点で王宮にいたんですか。
画面越しでも話題になってた美少女がリアルで目の前に現れるとインパクト絶大だな。
一礼すると長い綺麗な金髪が揺れた。本物のカーテシーを見るのは今更じゃないがなんつー優雅さだ。流れるように、と言うのはこういう動きを言うんだろうな。
「私はラウラ・ルイーゼ・ヴァインツィアールと申します。お二人には少しだけお時間をいただけませんでしょうか」
このゲームのメインヒロインのお出ましだ。
「綺麗な人だよね」
「顔と言うか外見も王族に必要なのかもなあ」
王女殿下の後ろをついていきながら、マゼルが小声で話しかけてくるんで話題に乗る。この世界で遺伝云々言うわけにもいかんからありきたりな反応になったが。
子、ではなく人、と言うあたりマゼルも気を使っているようだ。まあわからなくもない。何と言うか高貴なオーラがあるんだよオーラが。本人前にしないとわからんわこれは。
とは言えマゼルも十分王族クラスのハンサムだけどさ。嫉妬する気はないが主役と脇役の格差社会は感じる。
俺は脇役ですらない? ほっとけ。何でお招きいただいたのかさっぱりだよ。
「こちらにどうぞ」
衛兵の前を通りでかい両開きの扉が開いてその奥に招き入れられる。どうでもいいがただ招くだけの一挙手一投足に淑やかさと気品があるな。本物は違うわ。
しかし前世で読んでいた異世界転生ものだと文字媒体だったんで流してたが、知ってる声優の声でしゃべる外見ヨーロッパ人って微妙に頭の中で情報が混乱する。その声優に他のキャラクターのイメージがあると特にな。
まあラウラも御茶目なところがあったりするんだがそれを知ってるそぶりも見せられないのがつらい所。
それにしてもやたらお城の奥の方に向かってませんかね。ゲームだとこのあたりは最初は入れないんだよな。ここが襲撃されて半分廃墟になってから壊れた扉の奥に入れるようになったはず。
当然と言うか、その状況だと警備兵もいないしな。そう考えるとあの時ゲームでこの先に行くことはできないと通せんぼしてたのはあの衛兵か。いや同一人物かどうか知らんが。
そんなことを考えていたら噴水のある中庭に通された。庭園にはバラが咲き乱れて美的感覚の乏しい俺でもきれいだと思うし噴水の彫刻もなんかやたらセンスがいい。
その噴水の近くにあるガゼボ……ガゼボって実は十七世紀頃からの物だから中世にはないはずなんだよな……ゲームだからいいのか。そもそもゲームだと
ともかくガゼボにお茶の用意されたテーブルがあるんだけどそこに座っていらっしゃる男性には見覚えがございます。
「ようこそ。ヴェルナー・ファン・ツェアフェルト子爵とマゼル・ハルティング君。わざわざすまない」
何で王太子殿下がお待ちかねなんですかね?
※他作者様のゲーム世界転生作品の登場人物もやっぱり
ゲームの声優さんの声で話しているんでしょうか?
ちょっと気になりますw
この一言を書かないと評価はいらないと思われるらしいので…
作品・続きにご興味をお持ちいただけたのでしたら下の★をクリックしていただけると嬉しいです。