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だが断る


「あとねー、赤ちゃんのかぐや姫はすごい勢いでせーちょーしたんだってー」


「ええっと、最初見つけた時の身長が3寸だから、だいたい9センチかな。それが3ヶ月ぐらいで妙齢の女性になったんですよね」


「すごい早いよねー」


「90日で、当時の妙齢と考えて、まあ15歳から17歳くらいになったとしたなら、確かにすごい早さですね」


「しんちょーもグングン伸びたんだろーねー」


「同い年の幼なじみに手を出したら変態、っていうか完全に犯罪ですね。かぐや姫女性ですけど」


「わざわざ迎えの人が来なくても1年あったら月まで届いたんじゃないかなー」


「届きませんよ!妙齢のかぐや姫を150センチだとして一生身長が伸び続けると仮定しても、1年じゃ…………570センチぐらいが限界ですよ!」


「わー!かぐや姫っておーきかったんだねー」


「いやいやいや途中で成長止まりますからっていうか止まってますから!身長が570センチもあったらホントに化け物じゃないですか!誰も求婚しませんって!」


「あー、そーいえばかぐや姫って5人もプロポーズされたんだよねー」


「まあ、それほどの美人だったんでしょうね」


「でも全員フっちゃったんだよー? 悪女だー」


「いやいや、別にかぐや姫からモーションかけたわけでもないじゃないですか。それにいつか帰らなきゃいけない身としては、結婚とかそういう身を固める行為みたいなのは避けたかったんですよ」


「でもねー、断り方もひどいんだよー」


「ああ、あの指定した宝を持ってきたら結婚するとかいう無茶ぶりのことですね」


「どんな宝物だったっけー?」


「ええっとー……。たしか、まず『仏の御石の鉢』ですね」


「みーし?」


「ボクも詳しくは覚えてないですけど、光る石でできた鉢で、一応天竺にあるって話らしいですけど」


「光る石なんだー。なるほどねー。かぐや姫はすーじかんしか保たないもんねー」


「別に光を充電するための道具じゃないですから!」


「でもなんで持って来れなかったのー?」


「当時の日本にとって海外に行くこと自体命懸けだったんですよ。仮に無事外国に着いても、そこからさらに遠くの天竺まで行かなきゃならないってなると、もう無茶や無謀を通り越して無理なことだったわけです」


「だからニセモノでごまかそーとしてフられちゃったんだよねー」


「はい。その偽物が光ってないもんだからすぐにバレちゃったんですね」


「その人頭悪いよねー」


「まあ、そう言わざるを得ないですよね」


「なんで生きてるんだろーねー」


「そこまで言います!?」


「あとはどんな宝物があったっけー」


「ええっと、次は『蓬莱の玉の枝』ですかね」


「枝なのに宝物なのー?」


「はい。と言っても、もちろんただの枝じゃないですよ。根が銀、茎が金でできた枝……というか木で、真珠を実としてつけるそうです」


「それはすごいねー」


「そうですね。実在したらとんでもない宝なのは間違いないですよね」


「葉っぱがないのにせいちょーするんだねー」


「そこですか!?」


「こーごーせーはどーやってるんだろーねー」


「光合成して育つよって言われた方が違和感あるレベルのばりばり不思議物体ですから、そんなの考えても無駄ですって」


「それでー、これも持ってきたのはニセモノだったんでしょー?」


「ああ、はい。ただし、本物の金銀真珠と熟練した職人を駆使した上の偽物ですから、さっきの人よりかは頭も金も使ってますね。現にかぐや姫もすっかり本物だと思い込んで焦ってましたから」


「でも結局バレちゃったんだよねー」


「そうなんです。どうやらその『蓬莱の玉の枝』を作らせた人が、それを作った職人たちに給料を払わずにいたみたいで、職人たちがかぐや姫の家まで給料を貰いに押し掛けて来たとか」


「これが後のろーどー組合の始まりなんだよねー」


「ちょっとそれっぽいこと言わないで下さい!全然違いますから!」


「それで次の宝物はー?」


「えー、次は『火鼠の皮衣』です」


「ネズミの丸焼きのことー?」


「違います違いますっ。そんなの誰が欲しがるんですか!っていうか誰にでも手に入るじゃないですか!」


「でもー、かぐや姫はネズミに触りたくなかったのかもしれないしー」


「じゃあそんなの課題に出さないで下さい!」


「それでもだいこーぶつだったとかー」


「触りたくないんじゃなかったんですか!?」


「ほらー、手羽先食べると手がべたべたになるでしょー?」


「そんな軽い感覚で人を遣わさないで下さい!っていうか!とりあえず『火鼠の皮衣』は食べ物じゃありません!」


「じゃーなんなのー?」


「火鼠っていう伝説の生き物の皮で作った服のことです。どうやら火をつけても燃えないらしいです」


「そっかー。やっぱり火をつけるならとーゆをかけてからだよねー」


「何が『やっぱり』なんですか!?」


「でもそれもまたニセモノだったんだよねー?」


「あ、はい。かぐや姫が火をつけたら燃えてしまい、すぐに偽物だと発覚したわけです」


「プロポーズしてきた人、ろくな人いないねー」


「あ、でも今回の場合は商人から買った物が偽物だったらしくて、本人は本物だと思い込んでたみたいですよ。わざとじゃないだけ前の2人よりかはマシじゃないですかね」


「そっかー。騙されちゃったんだー」


「そうなりますね」


「頭悪いよねー」


「あー、先輩はそういう感じになっちゃいますか」


「死ねばいーのにねー」


「さっきよりも露骨に!?」


「それで次のニセモノはー?」


「聞く前から偽物呼ばわり!?い、いやでもここからは偽物出てきませんよ」


「そーなんだっけー?」


「はい。次の宝は『龍の頸の五色の玉』で、そのまんま、龍の首についてる5色に光る玉のことみたいです」


「玉が首についてるのー?」


「そういうことになってますけど……どうなんですかね。確かに、龍の玉といったら口にくわえてたり手に持ってたりするイメージが強い気がしますけど」


「あー!わかったー!」


「どうしたんですか?」


「きっとその玉ってのどちんこについてる玉なんだよー」


「まさかの下ネタ!」


「あー、でもオシッコってどーやってるんだろーねー。出してそのまま飲んでるのかなー?」


「最悪の想像ですね!っていうか先輩も女の子なんだからそういうのは自重して下さい!」


「えー? そーゆーのってー?」


「あああっ、なんて扱いづらい人なんだ……!」


「あははー、変なヨーくん。でもー、5色に光る玉ってやっぱりきれーなのかなー?」


「……まあ、それは綺麗なんじゃないですか? 宝物な訳ですし」


「5色って何色なんだろーねー?」


「どうなんでしょう。無難に考えるなら黄、橙、赤、紫、青とかじゃないですか?」


「赤、朱、紅、緋、丹だったりー」


「もうそれ全部ほぼ赤じゃないですか!それが5色だってわかった最初の人は多分色彩検定の資格かなにか持ってますよ!」


「じゃー。錆、鈍、灰汁、鼠、ドドメー」


「きたなッ!?実際の色合いもそうですが語感がまず最悪です!」


「じゃー。黄、黒、黄、黒、黄ー」


「立ち入り禁止の看板か!……ってそれ2色じゃないですか!5色ですよ5色!」


「じゃー。赤、青、緑」


「だから5色ですって!」


「が混ざった色ー」


「白っ!光の三原色混ざったら白!ただの白!」


「きれーだろーねー」


「でも少なくとも『龍の頸の五色の玉』という名称は返上すべきですね!」


「あははー。でー、この宝物の人もやっぱり失敗したんだよねー」


「まあ、はい。この人は自ら龍を探して宝を手に入れようと航海を始めたらしいんですけど、そのせいで龍自身の怒りを買って大嵐に巻き込まれ、結局命からがら逃げてきたとか」


「かっこ悪いねー」


「しかもその出来事から帰ってきてみたら、屋敷は荒れるわ寝込むわ落ちぶれるわで、もう散々な目にあったみたいですね」


「なんで生きてるんだろーねー」


「ああっ、これはちょっと言い返せない……!」


「それで次はー?」


「次が最後で、『燕の子安貝』ですね。これも名前から推測できるように、燕が産んだ貝のことみたいです」


「ツバメって貝をうむのー?」


「もちろん産みません。子安貝自体は当時としてもさほど珍しいものではなかったらしいですが、それを本来産むはずのない燕が産んだというなら話は別って訳です。だからこそ宝として価値があるんですね」


「あーねー。トンビがタカを産むってやつだねー」


「ま、まあ、そんな感じです。……意味は全然違いますけど」


「マリオがルイージを」


「産みませんよ!色んな意味で!案の定たたみかけてきましたがそうはいきませんからね!」


「ぶー」


「そんな顔してもだめです」


「ところでさー、なんとなくこの宝物だけ頑張れば手にはいりそーな感じするんだよねー」


「……言われてみれば、確かにそうですね。海に乗り出さなくても手に入るのはこれだけですし」


「ニセモノもすぐによーいできそー」


「そもそも、この宝だけ本物かどうか判断する具体的な手段がないんじゃないですか?」


「ツバメのフンまみれの子安貝を渡したら、きっとかぐや姫も騙されちゃうねー」


「騙すためとは言え糞ぐらい拭いましょうよ!」


「でもフンがついてないとふつーの子安貝と区別つかないよー」


「区別つかないならつかないでいいんですよ。これは燕が産んだものだって言い張れば。ま、とは言うものの、この人は偽物を用意する気なんてなかったみたいですけど」


「真面目だねー」


「この人だからこそ、かぐや姫も比較的簡単な宝物にしたのかもしれませんね」


「こいつクソ真面目だからどーせこのてーどの宝も持ってこれねーぜあはははバカみてー」


「かぐや姫めっちゃ腹黒い!」


「でー、かぐや姫のそーてーどーり、この人も宝持って来れなかったよねー」


「かぐや姫に腹黒キャラを定着させないで下さい!……まあ持って来れなかった訳ですけどね。しかも探した本人は探す最中に梯子から落ちて腰の骨を折る大怪我。やっぱり散々ですね」


「死ねばいーのにねー」


「この人は死んでますよ!その怪我が原因で!」


「あー、そーだっけー」


「まあもっとも、この人だけかぐや姫から和歌を送ってもらったりしたから、まあある意味一番報われた人ではあるんですけど」


「死ねばいーのにねー」


「さっきとは違う意味合いに聞こえる!?」


「でー。結局、プロポーズしてきた人ろくなのいなかったねー」


「いやまあ、最初の2人は自分で偽物を持ってきてかぐや姫を騙そうとしましたけど、『火鼠の皮衣』の人はむしろ騙された立場ですし、残りの2人は不幸でしたけど、少なくとも偽物を持って来ようとはしませんでしたよ。自分から探しに行ってますし」


「でもさー、かぐや姫って3ヶ月の人だよー?」


「年齢のことですか?……正確には覚えていないので3ヶ月かは分かりませんが、プロポーズされた時の年齢でしたら、おそらく、確かに1歳には満たないと思いますね」


「1歳未満の女の子に結婚をせまる男たちー」


「いやでも外見は妙齢の女性な訳ですし……」


「外見が良ければ0歳児でもイケちゃう男たちー」


「…………」


「断られても食い下がって0歳児にじょーけんを出される男たちー」


「…………」


「それがりゆーで、騙したり騙されたり落ちぶれたり死んだりする男たちー」


「…………」


「でねー」


「…………」


「結局、プロポーズしてきた人ってー」


「……ロクなのいませんね」



 私の本音としては、ぶっちゃけ可愛ければ何歳でもいいと思いますけどね。ただし二次元に限る(キリッ

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