第一話 蒼太と大輝
彼は努力家だった。
運動神経がよかった彼は小さい頃から様々なスポーツに取り組んだ。その中で最もはまったのが剣道だった。
なぜ? と聞かれた彼はこう答えた。
「うーん、なんとなく? 性に合ったっていうのかな?」
そんな彼は小学校では毎日のように剣道場に通って真面目に努力を積み重ねてメキメキと頭角を現し、道場でも同学年や一つ上の学年が相手でも敵がいなくなっていた。
そんな彼は中学の大会で大きな挫折を味わうこととなる。
「優勝は北中学校の近衛蒼太君です!」
その発表を大輝は三位のメダルを首にしながら聞いていた。大輝は準決勝で蒼太に破れていた。
最も苛立ったのは彼が勝って当然という顔をしていたからだった。蒼太にしてみれば特に思うところはなかったのだが、大輝の目にはそう映っていた。
「いつか、あいつを倒してやる!」
そう強く心に誓った大輝は、中学での部活を引退した後も小学校の頃通っていた道場に出向いては練習を重ねていた。高校に入ったらその時こそ、彼を倒して全国大会にいく! そう思っていた。
「まさか……同じ学校だったなんて……」
蒼太は剣道の強豪校に進むだろうと思っていた大輝は、入学式の日に彼を見かけて目を丸くして驚いた。
なぜ、なんでこんな普通の高校に進学したのか。自分のことは棚にあげてそう疑問に思い、その疑問を彼に直接ぶつける。
「な、なんで君がこの学校なんだよ! もっと、こう強い学校があっただろ!」
「ん? 学校に強いとか弱いとかあるのかわからんが、ここはうちから近いから選んだんだ。学校選ぶ理由なんてそれで十分だろ?」
急な質問にも真面目に答えた蒼太だったが、その答えは大輝の勢いを削ぐのには十分な答えだった。しかし、共に切磋琢磨できると考えた彼は沸々とやる気を取り戻していく。
しかし、蒼太は剣道部には入らなかった。
もちろんそれを知った時も大輝は本人に詰め寄った。
「なんで剣道部に入らないんだ!」
「ん? 剣道はもう十分かなと思っただけだよ。大会で優勝できたしな」
実際のところは実戦での緊張感を味わった彼にとって物足りないものになってしまっただめだった。
「な!?」
絶句してしまった大輝。十分答えたとすれ違うように立ち去る蒼太。
大輝はその後高校の県大会で準優勝するまでの結果を残すこととなる。だが彼は二位のメダルを手にしてもどこか蒼太に対する劣等感は消えなかった。
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再召喚された勇者は一般人として生きていく? 出版一周年記念で上げてみましたー!