ステータスリメイク
【隔世の神創庭園】―――初心者エリアこと【試しの隔界球域】を突破した先にあるこのフィールドは陣営の隔たりなく全てのプレイヤーが集う、アルカディアのメインステージと呼ぶに相応しい超広大なマップである。
超広大というか、ぶっちゃけ果てが無い。いや無いというか、サービス開始から三年が経った現在をもってしてマップの端に辿り着いたプレイヤーが皆無なため、どれだけ広いのか分かっていないというのが正確な事情。
シンプルに意味不明。ここ本当にゲームのマップかぁ? 実は【
そんな未踏破地域が無限に等しく広がっている神創庭園だが、俺とソラが二人で転送されてきた街である『セーフエリア』を中心に、先人たちの三年間の成果とも呼ぶべきマップデータが存在している。
正直、
アイテムとして出力されて安価で売られている、との事だったので街のショップで購入してきたのだが……十人くらいの大家族が伸び伸び出来そうな敷物並みにデカくて草。
使い辛さの極みだったので速攻でアイテムからデータに再出力して、既にインターフェースに納まって頂いている。
インベントリに余裕がある身だったならネタとして一つ持っておきたかったが、それは所持容量的な意味で懐事情が解決した未来まで我慢しよう。
さておき、手に入れた超広大なマップデータにはカグラさんの助言の元、俺の
残りの一週間でこれらのスポットを出来る限り回り、装備品に適した素材などを収集しながら多様な戦闘経験をアバターに蓄積して強化を図る……ハッキリ言って割とデスマーチ。楽しくなってきやがったぜ!!
「という事で来たぜ記念すべき第一スポット!!」
カグラさんと別れてから決死行の準備を終えてしばらく。街から最も近かったスポットの一つに直行した俺は、見上げるほど巨大な尖塔を前にイキりたっていた。
鬱蒼とした森の中で異彩を放つ、カグラさんの御髪に負けず劣らず鮮やかな紅色。ねじくれ立ったその威容は、ド派手で巨大な蟻塚のようにも見える。
【螺旋の紅塔】―――なんでも最初期に発見されてから現在に至るまで、未だに攻略者の現れていない「超絶鬼畜ダンジョン」なのだとか。
脱初心者一年生の俺には考えるまでもなく無理ゲーである事は分かりきっているが、タイムリミットがある中でわざわざ時間を無駄にするために来たわけでは勿論ない。
カグラさん曰く「流石に攻略は無理だと思うけど、ある意味では一番アンタの身になるかもしれない」との事。
俺としてはその言葉の意味を確かめると同時に、このゲームにおける「鬼畜難易度」とやらの程度を一度体感したかったのである。
―――という事で、
「さて……それじゃ
【試しの隔界球域】突破に際して、評価値Sの報酬(?)として想定外のレベルカンストを迎えたわけだが、それに伴って解放されたステータスリメイクシステム―――即ち、俺が地味に待ちわびていたステータス振り直し機能。
世界観的には身体及び精神の安定性がどうこう的な理由……現実的にはノーリスクで好き勝手にステータスを弄りまくるのを防止するためなのだろう、ひと月に一度という制限のもとでステータスポイントを振り直す事が出来るわけだ。
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◇Status◇
Name:Haru
Lv:100(150)
STR(筋力):140
AGI(敏捷):500(+10)
DEX(器用):200(+10)
VIT(頑強):5
MID(精神):5
LUC(幸運):50
◇Skill◇
・全武器適性
《ブリンクスイッチ》
《ピアシングダート》
・《クイット・カウンター》
・《浮葉》
・体現想護
・重撃の躁手
・コンボアクセラレート
・韋駄天
・飛燕走破
・フェイタレスジャンパー
・ライノスハート
・守護者の揺籠
・以心伝心
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つまりは、こんな感じの頭の可笑しなステータスが……
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◇Status◇
Name:Haru
Lv:100
STR(筋力):300
AGI(敏捷):350(+10)
DEX(器用):100(+10)
VIT(頑強):0
MID(精神):0
LUC(幸運):300
◇Skill◇
・全武器適性
・《ブリンクスイッチ》
・《ピアシングダート》
・《クイット・カウンター》
・《浮葉》
・体現想護
・重撃の躁手
・コンボアクセラレート
・韋駄天
・飛燕走破
・フェイタレスジャンパー
・ライノスハート
・守護者の揺籠
・以心伝心
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何という事でしょう! このように素晴らしく均整の取れたステータスに大変身を遂げ―――なんだこれは?????
いや、待て、落ち着け。何も血迷ってなどいない、俺の思考回路は極めて冷静かつ正常だった。
まず初めに、超過剰だったAGIを大幅に削った点。
これは当然というか、元の500とかいう頭おかしい数値は見てくれこそキリよく良い感じだったが、実のところ俺のキャパを完全に超えており全力全開の最大速度とか数えるほどしか出していなかったのだ。
むしろ、その数える程度の全力全開でほぼ例外無く事故っていたので封印したまである。
なのでここはヨシ。この数値でも世間で最速と呼ばれているプレイヤーのAGIと「どっこい」なのでほら、先人に倣うという意味でもキリが良い(?)。
次にDEX、これもヨシ。
いやアルカディアのAGI&DEXの仕様上は問題大アリなのだが、俺の場合は韋駄天で瞬間的に倍の数値まで跳ね上げる事が出来る。
加えて初期からDEX不足の状態でも過剰AGIを乗りこなす練習を重ねて来たおかげか、今では二倍以上の差でも無ければ
……出来る。出来んのか? いや、いけ……いける。いける、はず……!!
不安から目を背けつつ、お次は大出世を果たしたSTR。
筋肉が無くても物凄い速度で武器をぶつければ強い、というのがこれまでの俺の持論。けれどもソラから《
物凄い速度で、かつ物凄い筋肉で武器を叩き付けたらもっと強い。
つまり筋肉は正義。ヨシ。
続いては出世というか何というか、突然変異を起こしたLUC君。だってさ、今更VITもMIDもいらないかなって思ったんだ。ならもう消去法で運気にぶち込む以外なくない?
え?DEXもうちょい厚くしておけば良かったんじゃないのって?
それは―――……それは、そうだな。
成程、俺が血迷った点はそこだったか…………おん?VITとMID?いや彼らは多分もうこのアバターとは一生ご縁が無かったという事で、ヨシ。
ともかく、最低でもひと月はこのステータスとお付き合いする事になるのだ。無理矢理にでも乗りこなす他に道は無い。
無いというか、自ら浅はかに道を剪定しくさった気がしないでもないが前向きに行こうと思う。
「張り切って行こうぜ―――こっからが本番だアルカディアぁッ!!」
《韋駄天》―――AGIの高速稼働時、補助に掛かるDEXの数値を倍にする。
ちなみにスキル成長前の《軽業》は発動条件無しで固定値+100
ここで現在の主人公のDEXの値に注目して頂きたい。
……《韋駄天》君?