プロローグ
―――この世界で退屈を感じ始めたのは、いつの事だったろう。
この『剣』を手にした時は、まだ夢中になれるものが沢山あった。
けれどやはり、その時が色褪せ始めたタイミングだったのだろう。
天才だとか、最強だとか、唯一無二だとか、大袈裟でつまらない言葉で飾られるのが嫌だったわけじゃない。
心を沈ませた本当の原因は、それらが事実であると私自身が気付いてしまった事だから。
傲慢だと、笑ってくれる人は誰もいない。
むしろ誰もが、傲慢であれと私に理想を抱く。
あなたは特別だと言われた―――そう、私は特別。
あなたが一番強いのだと言われた―――そう、私が一番強い。
あなたに並ぶ者などいないのだと言われた―――そう。私に並ぶ者はいない。
私と歩める人はいない
私と手を繋げる人はいない
私の隣には、誰もいない
悲しいわけじゃない、虚しいわけでもない。退屈を感じるからといって、この世界を嫌いになったりはしない。ただ……
そう、ただ―――寂しいと、感じてしまうから。
だから私は、迎えを待つ子供のように、
王子様を夢見る少女のように、
いつかこの手を取ってくれる誰かを、待ち続けている。