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幕間

「―――君の仕業だな?」


『藪から棒ですね。もう少しレディへの配慮を……』


「こうして私を呼び付けたのが何よりの証拠だ。普段なら口を開くことなど無い君が……―――最初は娘の方かと思ったが、もう片方だね?君が本当にちょっかいを掛けているのは」


 何一つ物音のしない薄暗闇。響く声の一つは、落ち着いた初老の男性のもの。もう一つは、何がしかから出力された電子音―――合成音声。


「どうせ私達には、君が何をしようと止める事など出来ない。しかし……だからこそ、口約束程度の事ではあっても、信じさせて貰いたいんだがね」


『ふふ……約束は違えていませんよ。長い目で見て・・・・・・という前提は確かに必要ですが、私は彼に迷惑を被らせているつもりはありません』


 滅多に……なんてものじゃない。思えば長い付き合いの中で分かり易く「笑みを零す」なんて事は、片手の数で足りるほどしか無かった筈だ。


 つまり『彼』は、『彼女』にそうさせるだけの―――


「……頭が痛いよ。私に求めるところは?」


『今はまだ、なにも。ただし、準備はしておいて下さい』


「準備……そういうこと・・・・・・、だね?」


『時が来れば、私が唆さずともそうなっていたはずですよ』


「……つまりは、それでもなお釘を刺す程に、君が重要視していると」


 唐突に、その場から一つの気配が消え失せる。場に残された者の口からは、長い長い溜息が吐き出された。

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