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意気揚々の試運転

「張り切っていこうか三日目!!」


 鍛治師、謎ボス、魔工師との連続エンカウントの翌日。流石に疲労が溜まっていたのか昼前まで爆睡してしまった為、昼食を済ませてからのログインとあいなった。


 さて今日は何から始めようか。一番気になるのは当然クエスト品の武器がどうなっているかだが、旦那の下へ顔を出すのはまだ早い。


 ならまあ普通に攻略を……あーいや、ちょっと一旦身辺整理をしときたいか。昨日は特にテンションと勢いに任せて突っ走ったせいで、取得或いは進化したスキルの詳細確認やらが不十分だ。


 ……あれ、というかステ振り。蠍の討伐後に弄ってから放置してたわ。取り敢えずやる事は決まったな。


 適当にどこか既存のフィールドに出て身体動かすとしますかね……草原と迷路と崖、選択肢が一つしか無いんだが?


◇◆◇◆◇


――――――――――――――――――

◇Status◇

Name:Haru 

Lv:33(100)

STR(筋力):30

AGI(敏捷):130

DEX(器用):100

VIT(頑強):5

MID(精神):5

LUC(幸運):10


◇Skill◇

・全武器適性

《クイックチェンジ》

《ウェポンダーツ》


・体現想護 New!

・重撃の操手 New!

・アクセルテンポ

・ボアズハート

・軽業

・ジャンブルステップ Up!

・キャリーランニング

――――――――――――――――――


「???」


 間に挟んだ冒険の内容が濃すぎて既に懐かしさを覚える【地平の草原】にて、ステータス画面を開いた俺は一部の表示数値に対して首を傾げていた。


 レベルの上昇値に対して、ステータスポイントの獲得数が釣り合っていないのだ。前回は確か28レベルの状態でポイントは使い切ったので、5つ上がった現在の保有ポイントは50の筈なのだが……?


「クエスト達成の報酬……じゃ無いよな。一つこなして5レベル分は盛り過ぎだ」


 ダメだ分からん。とりあえずレベルアップ以外にもポイントの獲得方法があるのだろう、後で調べとこう。


 さて新しいスキルは……《ジャンブルステップ》は跳躍機動の進化したヤツだな。跳躍に関する行動を補助してアバターの動作を安定させてくれるものだったが、その効果に加えて跳躍時の加速力を向上してくれるようになったようだ。


「神」


 次、《重撃の操手》―――え、これマジ?筋力要求値を満たしていない武器を扱う際に攻撃力上昇……何これ俺の為にあるようなスキルじゃん。


「神」


 ラストは《体現想護》だ。このスキルは―――


「…………?……、………………???」


 《体現想護》―――達成困難な事象に対して補正。


「謎」


 いや分かんねえよ。どう補正が付くんだよ、主人公補正か何かですかね?後で調べるにしてもコイツは保留だな。


 取り敢えずスキルは良いとして、ステ振りはと……


「ま、今更もう迷いは無いけどな」


 昨日の戦闘で確信した。今の俺にはSTRは不要、求めるは切替重撃を確実に叩き込む為の機動力―――AGI一択だ。


 あ?耐久力(VIT)?回避力に直結するAGI振りはもはや耐久振りと同義なのでは?


「詰んだらその時に泣こう」


 腹を決めてガシガシとポイントを注ぎ込んでいく。欲望のままに敏捷へと全ツッパ―――する寸前で、はたと指を止める。


 すっかり忘れていた。今の俺はAGI数値による高速機動を制御するためのDEXを軽業スキルで賄っているわけだが、果たしてその補助がどの程度の割合まで有効かを掴めていないのだ。


――――――――――――――――――

◇Status◇

Name:Haru 

Lv:33(20)

STR(筋力):30

AGI(敏捷):130⇒210

DEX(器用):100

VIT(頑強):5

MID(精神):5

LUC(幸運):10


◇Skill◇

・全武器適性

《クイックチェンジ》

《ウェポンダーツ》


・体現想護

・重撃の操手

・アクセルテンポ

・ボアズハート

・軽業

・ジャンブルステップ

・キャリーランニング

――――――――――――――――――


 と、ちょいオーバーしたが、これでおおよそ倍の数値。軽業を得る前はAGIを御するのに同値のDEXが必要だった訳だが……


「さて……っとぉあ!?」


 確認のために地を踏み切った瞬間、想像を超える加速力で身体がぶっ飛び悲鳴を上げる。


 感覚的には時速70km前後―――そんな速度が一足で出たわけだ、ビビリもするってか流石にこれは予想外……!


 走るつもりが跳んでしまった体を咄嗟に制動し、派手に土を抉りながら着地する。


 ……考えてみりゃ、数値的にはいきなり今までの五割増しなんだよな。踏み切りミスって跳躍になったからジャンブルステップの加速補正も働いたのだろう、そりゃこうなりますわ。


「良い感じに人間辞めて来てんなぁ……」


 いいね、俄然楽しくなって来た。


 そのまま何度かシャトルランをしつつ、因縁つけて来た【フールボア】を蹴散らしながら身体の操作性を確認していく。


 結論から言って、おそらく現状の値だと軽業の補正を振り切ってAGI過剰気味な感触だった。


 そうなると軽業の補正値はDEX×2の乗算か100の固定値の上乗せかと予想できるわけだが……乗算は強過ぎる、とりあえずは固定値が濃厚か。


 さて、そしたらまたDEXの方にもポイントを割いていく事になる……が、思うところがあるので少々保留。


「結局のところ動作の正確性補助・・なわけだから、なっ!」


 平地故に壁蹴り機動は行えないが問題無い。武器踏みを用いて縦横無尽に跳ね回りながら、反抗期に片足を突っ込み始めた敏捷を御しつつ考える。


 うむ、操れない事もない。たまに身体操作をミスって地面に激突しそうになったりもするが、無理矢理に従えようと思えば割と何とかなる。


「っし、暫くはこれでいくか」


 徐々に慣らしていく方針で、少々のポイントを保留。現状のAGI対DEXの値を完全に乗りこなしたと判断したら、またAGIを載せていくとしよう―――と、足裏に何やら覚えのある振動を感知。


「んあ、騒ぎ過ぎたか―――っとぉ!」


 甘いぜクソ猪が、こちとら空中へとステージを広げた「俺Ver.1.1」ぞ?足元からの急襲なんざ最早脅威とはならんのだよ!


「上等だコラ、試運転のサンドバッグにしてやんよ!!」


 三度目の遭遇ともなれば、もはや見慣れた威容である。宙に展開した大斧を踏み切り、捻れた大牙を持つ鼻面に容赦無く飛び蹴りを叩き込んでやった。


 ―――尚、きっかり十秒後に身体操作を誤りスリップ、転倒したところを踏み潰されて死亡した模様。

続きはお昼頃より。少々遅れる場合もございます、ご容赦を

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