唯一無二の相棒的な
◇【砂喰の大蠍】を討伐しました◇
◇称号を獲得しました◇
・『砂喰の大蠍を討伐せし者』
・『守護せし者』
・『触れられざる者』
◇スキルを獲得しました◇
・跳躍機動
・キャリーランニング
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◇Status◇
Name:Haru
Lv:28(40)
STR(筋力):15
AGI(敏捷):110
DEX(器用):100
VIT(頑強):5
MID(精神):5
LUC(幸運):5
◇Skill◇
・全武器適性
《クイックチェンジ》
《ウェポンダーツ》
・アクセルテンポ
・ボアズハート
・軽業
・跳躍機動 New!
・キャリーランニング New!
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俺にタコ殴りにされ続けた砂喰の大蠍と、俺に人力強制ジェットコースターされ続けたソラが同時にダウンしたのは、一転攻勢から数分後の事だった。
片方は燐光となって爆散、片方は俺の腕の中で完全に目を回して行動不能。冷静になった俺は「これ後で絶対説教される奴」と遅巻きながら焦りつつ、岩場に背を預けてソラを介抱していた。
「あう……ぁう……」
自らの膝に美少女が乗っている光景は中々に非現実的かつ甘美なものではあるが、この後に説教が待ち受けているのを察している身としては下心など湧いてくる余地が無い。
というか普通に申し訳ねえ。誠意を見せるべく真面目に手団扇にて奉仕をしていると、気怠げにソラが薄目を開けた。
「あー……だ、大丈夫?」
「………………」
お手本のようなジト目を頂戴し、堪らず視線を逸らす。気まずくそっぽを向いたまま扇ぎ続けていると、下方から小さな溜息が聞こえた。
「……そんなに怒ってません。足を引っ張っちゃったのは私ですし、おかげで攻略も出来ましたから」
声は少し不満気だったが……チラリと視線を戻せば、言葉通り特にお怒りの表情ではないご様子。
どうやら説教は回避出来たらしい。緊張を緩めて顔を戻せば、ソラは一瞬視線を合わせて―――ふいとすぐに横を向いてしまった。
思わせぶりに不機嫌そうな仕草だったが、変なところで感情表現がオーバーなアルカディアの仕様からは逃れられない。分かり易くほんのりと赤らんだ頰を見れば、照れているのだと気付けてしまう。
「えーと……その、ごめんな。咄嗟とはいえ無茶苦茶やった自覚はあるから……」
それでも起き上がろうとはしない様子を見るに、まだしんどさが残っているのだろう。素直に頭を下げれば、横を向いたままのソラからちらと視線を頂戴する。
「……ボスが意地悪でした。その、あんまり気にしないで下さい」
「はは……そう言って貰えると……」
逆に返されてしまった気遣いが刺さる。良い子なんだよなあ……。
その後しばらくして復帰したソラと一緒に、獲得したスキルの確認やらステ振りなどを終える。特に探索要素なども残されていないようだったので、ボス討伐後に広場に現れた光の輪を潜り、俺達は街へと帰還した。
時刻を確認すれば現実時間で午後四時前といったところ、まだまだ攻略に邁進できると言えばそうだが―――
「すみませんハルさん、私は今日この辺りで……」
「っと、そうか」
残念ながらソラはここまでとの事。……いやまあ現実時間でも結構な時間、こっち換算では普通に十時間以上も潜ってる訳だしな。疲れもするだろうし、用事だってあっても不思議では無い。
……俺?用事なんて入れるわけ無いし一日中フルタイムでも行けるんだよなぁッ!!
「えと、ハルさんは……」
「俺はまだ続けるかなぁ。休憩落ちくらいはするつもりだけど」
俺の雰囲気で半ば予想はしていたのだろうが、そう伝えるとソラは少々寂しそうな顔をして―――
「そうですか」
そう、なにかを誤魔化すように微笑んだ。
……分かるんだよなぁ。初めから一緒に攻略してた相棒が、自分が遊べない間に一人で先へ進んでしまう物悲しさというか。
―――正直なところ、ソラは廃どころかライトゲーマーにすら見えない。勤勉な性格故かリサーチなどはしっかり行なっていた様子だが、俺が時たま口に出すゲーム用語やネットスラングに首を傾げていたのを考えれば……本来この少女は、こっち方面には疎い「普通の女の子」という認識で間違っていない筈。
結論から言って、俺とソラのプレイ時間はおそらく合致しない。全く同じペースでゲームプレイを進めるのは、不可能と言って良い。
無理に合わせようとするなら、俺が攻略を停滞させてソラと足並みを揃えるスタイルを取る事になるが……それは何かこう、違うだろう。
最初の内は誤魔化せたとしても、続ける内に俺は不完全燃焼を積もらせていくのが目に見える。ソラだって「付き合わせている」側に回ってしまい、彼女の性格的に負い目を感じてしまうのは想像に難くない。
そうなってしまっては、楽しいゲームプレイはもう望めないはずだ。
だから、俺もそんな風にする気は更々無い。
「あのさソラ」
「はい?」
「攻略ペースは合わないだろうけど同期がお互いしかいないのは変わらないだろ?」
「そう、ですね」
後輩なんて望むに望めず、先には最低でも半年以上は差を付けられている。ならば……あー、セリフは既にまとめたが、素面でこういう事を口にしようとすると小っ恥ずかしいな。
「だから……あー、まあ、なんだ。お互いに唯一無二の相棒……的な」
「パートナー……」
小さく反芻するソラの呟きに羞恥を煽られるが、先程の寂しそうな顔が我ながら結構なダメージになったようだ。いらぬ不安はしっかりと払拭してやりたいと、そう思ってしまう。
「先へは進むかもしれないけど、置き去りにはしないさ。時間が合った時は遠慮無く呼んでくれて良いよ」
「でも、それだとハルさんが」
「手間にも面倒にも思わないからな? ペアを続けるなら、ソラの攻略進行は俺にとってもプラスしかないんだからさ。パーティプレイの上達にもなるし……手伝いというより、これもある意味自己強化だな」
単純に本心からそう述べれば、初めは複雑そうな顔を見せたソラだが、徐々に表情を崩していく。
「……無理しないで下さいね。面倒だと思ったら、ちゃんと言ってください」
ハッキリ言ってくれた方が自分も割り切れるからと、ソラは遠慮がちに笑った。
「まあ前提として、男が女の子に頼られて面倒だと思う訳が無いんだけど」
最後の一押しにそんな軽口を叩いて見せれば、ソラも納得できた様子。
「ふふ……ハルさんは時々、ナンパさんになるんですね」
そう言って柔らかく微笑むソラの笑顔で、俺がメンタルにクリティカルを喰らったのを最後の一幕として……可愛らしい相棒との冒険は一度、お開きとなったのだった。
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◇Status◇
Name:Haru
Lv:28
STR(筋力):30
AGI(敏捷):130
DEX(器用):100
VIT(頑強):5
MID(精神):5
LUC(幸運):10
◇Skill◇
・全武器適正
《クイックチェンジ》
《ウェポンダーツ》
・アクセルテンポ
・ボアズハート
・軽業
・跳躍機動
・キャリーランニング
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本編で詳しく説明されないスキルのチラ裏解説。
《クイックチェンジ》―――全武器適正ツリー専用アクティブスキル。対象装備品の詳細を明確に思い描く事で、UI操作を必要としない瞬時の装備切り替えを可能とする。
《ウェポンダーツ》―――武器投擲時に照準補正、及び威力に僅かなボーナス。
《アクセルテンポ》―――同一のアクティブスキルを連続使用時、冷却時間を段階的に短縮する。異なるアクティブスキルを使用すると効果が途切れるが、自動発動のパッシブスキルは効果継続を妨げない。
《跳躍機動》―――跳躍行動の際にアバターの動作を補助、安定させる。
《キャリーランニング》―――重量物を抱えて走行する際、STR及びDEXの値に応じて負荷を軽減する。