第4話 仕事
探索者協会にやってきた。
今日からの仕事を請け負うためである。まぁ、仕事仕事と言っても何をする仕事なのかは簡単に言うと「レベリング」である。ゲームをした人ならなんとなくわかる言葉だろうが、残念ながら僕たちの世界にレベルというものは存在しない。
存在するかボケェ!!と有識者達から怒鳴られそうでもある。
別に異世界とぐっちゃぐちゃのドッロドロに、世界が混ざり合ってもレベルという概念が存在することはなかったのだ。
誠に遺憾である。
じゃあ何故?どうして?レベリングなんて略称をするかというと、説明をする時簡単だからだ。レベリングと言うと、ゲームの育成を思い出すように、レベリングと言うだけで何となく仕事の内容が伝わる。どういうことかと言うと、ダンジョンの中での"経験"を"初心者"に売っているわけだ。
「あの〜、黒宮さんですか?」
僕が、時間より早めに探索者協会に着いて、ロビーでぶらぶらしていたら、特筆すべき特徴はないが、強いて言うなら剣を腰にぶら下げた同年代ぐらいの男性が話しかけてきた。今の僕の格好というと、うさ耳を頭につけ、パーティグッズの鼻メガネをつけているという、不審者極まりない格好。常識がコップ1杯分でもあるのなら話しかけたくない人物なのだが、恥を捨ててまで話しかけてきたということは、彼が依頼人だろう。
まぁ、彼らと言うのが正しいのだが。
「はい、そうです。貴方が、依頼人の笹目さんであってますか。合ってるなら、メールに送った合言葉をお願いします」
「えーと、合言葉」
スマホを取り出し、弄る様子。
「……"キャベツは至高の食べ物"、これどう言う意味ですか」
「そのままの意味ですが?依頼人として確認が取れたので、貴方のチームに案内してもらってもいいですか」
「……分かりました」
なんだろう、今の会話だけで僕の好感度ゲージがものすごく減った気がする。というか、この格好をしてるだけでも好感度ゲージがゴリゴリと減ってく音がする。
ギャルゲーならばバッドエンドだ。
僕はしっかり全てのフラグを踏んでギャルゲーをクリアする派なんだが、これじゃあバッドエンド超えてデットエンドだ。
「彼らが、僕のチームメンバーです」
壁際のテーブルに集まっていたのは、4人の男女。笹目さんを含めて5人のパーティか。
男女比が均等じゃないと色々とギスギスしたりするのだが、仲は良く見える。見えるだけかもしれない。女性ってこういうの隠すの上手いし。
「どうも、1ヶ月コースのご利用ありがとうございます。追放屋の黒宮です。今日からチームに入りますのでどうぞお見知り置きを」
ちなみに1ヶ月コースは一番安い料金で使え、1万という破格の値段だ。次に高いのが、3ヶ月コース30万円、その次は5ヶ月コース50万円というように、2ヶ月ごとに期間が増えていき、最長で1年コースだ。だが、まだ1パーティしか1年コースを頼んでないが。
「笹目さん。チームメンバーの紹介をお願いします」
「あの、その変な格好をやめてくれない?」
茶髪の子から注意された。
「あ、失礼しました」
このパーティグッズがお気に召さなかったらしい。
「えーと、紹介します。左にいる背の高い男性が蓮」
ぺこり、と頭を下げてきた、筋肉がついて無さそうな、ヒョロイ男性。
「隣の茶髪の女性が凪」
今さっき僕に注意してきた、元気そうなオーラを醸し出している女性。
「右にいる男性が亮太」
「こんにちは!」
笑顔で挨拶をしてくれた、打って変わっていかにも運動部!って感じのする男性。
「そして手前にいる女性が紗枝です」
ぺこりとお辞儀をした、育ちの良さが分かるお淑やかな雰囲気を醸し出してる女性。
パーティメンバーを見ると、戦えるようなメンツに見えないのだが大丈夫なのだろうか。最後の紗枝さんに至ったては、どうして【探索者】なんて危険な職業につこうとした!と、注意したい。
せめて、小動物を殺せるぐらいないとダンジョンに潜るのは厳しいぞ。
「この中で誰か戦闘経験、何かを殺傷した経験のある人は、」
「何度かゴブリンを殺したことがあります」
以外にも、蓮に経験があるらしい。僕は亮太がありそうだと思ったのだが。見た目で人を判断するのは良くないな。
そして、ゴブリンはみんなが知ってるファンタジーでよく出てくる、「くっ殺せ!」でお馴染みの女騎士さんの相方のモンスターである。実際にそんな場面に遭遇したことが無いが。所詮2次元の出来事なのだろう。
「他には」と僕が聞いても誰も話さないし、お通屋のように静かに黙るのをやめてくれないかな。
そして誰も手を上げない。終わってんな。
「誰もいないようですね、それではダンジョンに潜っていきましょう。簡単な探索済みダンジョンから」
ここで、凪からひとつの質問が出た。
「あの、ダンジョンって危険じゃないの」
俗に言う初心者あるある質問ポイントの1つだ。
感想、ポイントが作者の栄養となるのでしてくれると助かります。(モチベーションに繋がる)