第十六話 魔王の使い
第二話の魔力を使って魔法を使うを 魔法→スキル に変更しました
俺はそいつから離れて、臨戦態勢を取った。
何故かは分からないが、さっきまでの疲れや痛みも無く動くことができる。
「おいおい、そんなに驚かなくていいじゃないか」
前の犬っぽい魔物が喋りかけてきた。
「おい、お前はなんなんだ。魔物なのか?」
「俺をあんな無能共と同じにするんじゃねぇよ。俺は妖魔って種族でウォードって呼んでくれ。前魔王、ナサレトグ様の側近だ。こっちに来る時に、お前も聞いただろ、使いが来るって」
ああ、そういえば言ってたな。
色々ありすぎて忘れてたな。
「それで、その使いがどうしたんだ。俺は今急いでるんだ。早くここから出せ。邪魔するならどいてもらうぞ」
「こっから出ていってどうするんだ。またさっきみたいにやられるだけだぞ」
そんなことは知っている。
それでも……
「それでもやらないといけないんだ。いつも俺はソニアに助けられてばっかりなんだ。そんなのは嫌だ! 今度は俺がソニアを助ける番なんだ!」
俺は強い意志を込めて俺は叫んだ。
しばらくの間、沈黙になる。
「……そうか。やはりナセレトグ様が見込んだだけある。だが今のままでは俺は行かせることは出来ない」
「じゃあ力尽くで……」
「焦るな。俺は今のままでは、と言ったんだ。ナセレトグ様が死ぬ前に残した言葉がある。こことは違う世界から来た人間に我の力をさずけよ、と」
……なんだと?
「おい、それは本当か?」
「ああ」
その力さえあれば俺はソニアを助けることができる。
「じゃあ早くその力を俺にくれ」
「そんなに急ぐな、まずは説明を」
「そんな時間ないんだよ! 早くソニアを助けにいかないと」
「一旦落ち着け。俺は今、時間を歪めてこの空間を作っている。だから現実では時間は変わってないんだ」
そ、そうなのか。
ということはまだあの女に追い付ける。
「すまなかったな。で、俺はどうすればいいんだ?」
「この力は普通の人なら耐えれない。だがお前にはナセレトグ様の意志が宿っている。そこに力を注げば、ナセレトグ様は復活し、【憑依】という形でお前は力を使えるようになる」
前魔王の力さえあれば俺はあの女に勝てる。
「だが、お前の意志が弱ければ、ナセレトグ様に乗っ取られその肉体は崩壊する。さあ、どうする。今ならまだ引き返せるぞ」
そんなの返事はもう決まっている。
「頼む、その力を俺にくれ」
▶▶▶▶▶
ウォードが紫色の複雑な文字を、俺を中心にして空間に刻んでゆく。
多分これは魔方陣というやつだろう。
かなり巨大で直径10メートルほどある。
「ナセレトグの意思を継ぎしものに、強大なる力を【再臨】」
さっきの文字が光始める。
すると、その文字が俺の体に入ってゆく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
なんだ、これ。
腹の奥が痛い、熱い。
釘を刺されているような痛みと、ドロドロに溶けた鉄を飲んでいるような熱さが、永続的に続く。
俺の中の何かが暴れだしている。
痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い。
ああ、消えていく。
俺という存在が、呑まれていく。
………………………………。
…………………こんなところで……消えていいのか……
……いや……俺は……まだ……消えるわけには……いかないんだ!
ソニアを、助けるんだ!!
だんだん暴走が収まってゆく。
「おめでとう、お前はよくやったよ」
その言葉を最後に俺は気絶した。
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読み直して気づいたんですけど主人公倒れすぎですね(笑)
明日憑依の力使います