第十五話 女の実力
初、対人のシーンです
「ソニア、走って上へ戻るぞ。こいつは本当にやばい」
「ふふふっ。逃げようとしても無駄よ」
「おい! ソニア!」
ソニアは一向に動こうとしない。
よく見ると震えていた。
「嫌ぁぁぁぁぁあ」
静かなダンジョンにソニアの絶叫が響き渡った。
「【炎風槍】、【炎風槍】っ!」
ソニアが魔法を連射する。
高温の炎で作った槍を、風で更に威力と速度をあげている。
勢いよく炎の槍が、女に飛んでゆく。
「地獄より来たりし闇よ、我に力を【闇風】」
女の魔法により、黒い風が吹き荒れた。
すると炎の槍が、一瞬で消滅した。
「なっ、そんな……」
女がソニアに向かって殴りかかった。
それをソニアがかろうじて避ける。
間髪入れずに回し蹴りを打つ。
ソニアはガードしたが、そのまま吹き飛ばされる。
壁にぶつかりそうなところで体勢を持ち直し、地面に降り立つ。
ソニアは手に魔力を込めて、蒼い炎を作ってゆく。
「させないよ」
女が走り出す。
俺だって足止めくらいは出来るはずだ。
俺は地面に手をつけ、ありったけの魔力を使う。
「【錬成】っ!」
女の足元の土が流動体になり、沈みこむ。
「なっ」
それを動かして、女の足を拘束する。
動かないように、土をガチガチに固める。
「【蒼炎】」
ソニアの手にある、拳大の蒼の炎を投げる。
直撃すると、凄まじい熱量で女を焼いてゆく。
そこで俺は脚に力が入らなくなる。
魔力が無くなったようだ。
まだ倒れるな、俺の身体。
段々と炎の勢いが弱まってゆく。
中に黒い人の焼けた姿がある。
よかった、倒したんだ。
ピキリ
なんだ? 今の音は。
ピキっ、ピキピキピキピキ
ま、まさか……
「ふぅ、今のはやばかったね」
中から無傷の女が出てきた。
「じゃあ第2ラウンド目、いこうか」
女は殴りかかってきた。
だが、ソニアは動こうとしない。
いや、動けないのだ。
さっきの魔法は大量の魔力を使ったのだろう。
全身を縮めて身体を守ったが、そのまま後ろに飛ばされていく。
ドン!
ソニアが壁にぶつかって、動かなくなった。
「ふう、やっと終わったね。早く儀式を行おうか」
ソニアを担ぐと奥に向かって行く。
「おい……待てよ……」
動かない足に喝を入れ、立ち上がって叫んだ。
「ああ、そういえばいたね」
俺は剣を引き抜いて、女に斬りかかった。
「うぉおおおおおお」
「部外者は黙って消えて」
ドスっ
その言葉と共に俺の横腹に痛みが走った。
そのまま数メートル転がって、意識を失った。
▶▶▶▶▶
目が覚めると、俺は不思議な空間にいた。
どこを見渡しても、真っ白なのだ。
「やっと起きたか。気分はどうだい?」
振り向くと犬っぽい何かがいた。
犬と言うには大きすぎるし、全身が黒で紫の線が何本か走っている。
何より、人間の言葉を話す生き物なんて聴いたことない。
それより、こいつの気配が魔物と同じだった。
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対人って難しいですね