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おまけSS 第18話+


《第18話 コルルシュカ視点》



「おおぉ~、やっぱりせんぱぁいのお茶の入れ方は綺麗ですねぇ~、惚れ惚れしますぅ~」


 やっぱりアネットお嬢様は凄い。


 私なんてメイドとしての業務、殆どできないのに・・・・。


 ご主人様がここまで色んなことができてしまうと、コルル、何だか少し自信が消失してしまいそうです。


「・・・・・ねぇ、コルルシュカちゃん」


 何てことを考えていると、机の上にティーポットを置き、お嬢様がそう声を掛けてきた。


 私は精一杯の笑みを浮かべて、お嬢様へと口を開く。


「あ、コルルで良いですよぉ~~? てかせんぱぁい、私がこの屋敷に来てから一週間くらい経つのに、何で未だにフルネーム呼びなのぉ?? 距離感じてコルル、悲しいです~」


 お嬢様は警戒心がお強いのか、私に対して一切隙を見せようとしてこない。


 その態度がちょっぴり、私には寂しいものです。


「・・・・コルルちゃん、貴方、もしかして・・・・暗殺者だったりしないよね??」


 はへ? あ、暗殺者・・・・?


 い、いきなりお嬢様は何を仰っているのでしょう?? 


 な、何でそんな警戒心むき出しの目で私を見つめていられるのでしょうか・・・・?


「暗殺者?? え、何それ、どういうことぉ??」


 内心の困惑を表に出さずに、私はそう口にする。


 するとその瞬間・・・・お嬢様が私を壁際に追い詰め、大きく声を張り上げた。


「・・・・・ロザレナお嬢様が帰ってくる直前にこの屋敷に現れたんだ・・・・・どう見ても、てめぇは怪しいんだよ!! 白状しやがれ!!!」


 ドンと、壁に手を付いて、お嬢様が私を逃れられないようにする。


 まるでキスでもするかのような至近距離にあるお嬢様のお美しいそのお顔に、私は内心、パニック状態に陥ってしまっていた。


(おおおお、おおおおおおおおおおお嬢様のお顔が・・・・・わ、私の目の間に・・・・・っっ!!!!)


 心臓がドクンドクンと高鳴る。


 でも、顔を緩ませるわけにはいかないので、私は必死に表情筋を引き締め、無表情でお嬢様の前に相対する。


 ・・・・まぁ、素の私でも感情は表に出ないから・・・・普通にしててもあんまり表情が変わらないのかもしれないけれどね。


 と、とにかく。


 今は、一刻も早くこの状況を打破しなければならない。


 だって、こんな幸せな時間・・・・いえ、こんな近距離でお嬢様と見つめ合っていたら、私は間違いなく気絶してしまうと思うから。


 こんな時、憧れのメイド長のお姉さまだったらどう答えるか、考えるんだ。


 あのボケーッとしたギャルっぽいお姉さまだったら・・・・お姉さまだったら・・・・。


「ほう? 驚いた反応が無いな・・・・やはり、てめぇ、旦那様かお嬢様を狙った暗殺者だったわけ-----」


「めっちゃかっこいいっすぅ~~」


「は?」


「いや、私、壁ドンとかされるの夢だったっていうかぁ。てか、乱暴な口調のせんぱぁいも素敵っすねぇ。もしかしてそっちが素なんですかぁ~~??」


「いや、あの、コルルシュカさん?」


「はい?」


「貴方、本当に暗殺者とかじゃないの??」


「だから暗殺者って何スかぁ~? 私、レティキュラータス領の南西部の村出身のただの村娘ッスよ~~??」


 そう答えると、アネットお嬢様は目をパチパチと瞬かせて、呆けた表情を見せる。


 よ、よし!! あともう一押しだ!! ちょっと名残惜しい気持ちはあるけれど!!


「はふぅ、眠すぎぃ~。あの、お茶の入れ方、続きを教えて貰っても良いですかぁ?? 壁ドン、飽きたんで」


「は、はい・・・・じゃ、続きの講座を再開しますね」


 そう言ってお嬢様は私から手を離して、再びお茶の入れ方講座を再開させた。


 私の顔は平静を装っているが・・・・・お嬢様が離れても尚、ドキドキが止まらなかった。


 こんなに、お嬢様に怒鳴られて詰められるのが気持ち良いだなんて・・・・コルル、どうやらドМみたいです、アネットお嬢様・・・・。

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