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第24話 元剣聖のメイドのおっさん、剣聖流クッキングを寮生たちに見せつける。



 日も沈んできたのでロザレナとの稽古を終え、寮へ戻ると、玄関のフローリングの上に見知らぬ道着服の少女が正座して座っていた。


 彼女は俺たちと目が合うと、ピョコっと、まるで小動物の耳のように頭の上の二つのお団子髪をピクッとさせる。


 そしてその後、こちらにニマッとした、満面の笑みを向けて来た。


「ねぇねぇ! 君たちがレティキュラータス家御一行様だよね! 満月亭に入った新しい入居者の! 新入生の!」


「は、はい。その通りですが・・・・」


「うんうん! やっぱりそうだよねっ! おーいっ、オリヴィアせんぱーい!! 二人とも帰ってきたよーっ!! ロザレナちゃんとアネットちゃんー!!」


 すると、その声を聞いてか、ぱたぱたとスリッパの音を立ててオリヴィアが玄関口に姿を見せる。


「あらあら、ジェシカちゃん、そんなに大きな声を発しなくとも聴こえていますよ~? それと、もうすぐ日も落ちるのですから、もう少し声量は押さえてくださいね~?」


「あっ、すいませんっ!! つい道場にいた時の癖でっ!! 申し訳ないでござるっ!!」


「いや、あの、土下座なんてしなくても良いのよ~? そんなに怒っているわけじゃないですから」


「おっす!! 反省の意味を込めて、寮の外周を一回りしてきますっ!! とりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」


「あっ、ちょっとジェシカちゃん!? 今から新入生歓迎会なんですよ!? ・・・・・って、行っちゃった」


 俺たちの横を通り過ぎ、外へと走って行ったお団子少女に、オリヴィアは呆れたようにため息を吐く。


 そんな彼女に、俺は先程から気になっている質問を投げてみた。

 

「あの? 彼女は?」


 すると、オリヴィアはニコッと、柔和な笑みを俺に向けてくる。


「あの子はジェシカ・ロックベルト。貴方たちと同じ、今年から入る第一期生の聖騎士候補生なんですよ~」


「ジェシカ・ロックベルト・・・・・は!? ロックベルトだとッッッー---!?!?!?」


 俺はその名前に思わず声を荒げてしまう。


 そんな俺の様子に、オリヴィアとロザレナは不思議そうに首を傾げた。


「ど、どうしたの? アネット? 急に大声を上げて・・・・」


「あ、い、いえ、そ、その申し訳ありません・・・・・あの、オリヴィアさん、ロックベルトって・・・・あの子、『剣神』ハインライン・ロックベルトと何か縁がある子なのでしょうか?」


「あぁ、なるほど~、そう意味で驚いていたんですね~。その通りですよ~。彼女はかの『剣神』、【蒼焔剣】ハインライン・ロックベルトの孫娘に当たる子なんです~。凄いお爺様を持った女の子ですよね~」


 マジ、か・・・・。


 あのちょっとお馬鹿入ってそうな元気いっぱいお団子少女が・・・・生前の俺の兄弟子、ハインライン・ロックベルトの孫だというのか・・・・。


 というかあの子、まったく似てないな、あの偏屈親父に。


 どちらかというと、そうだな・・・・ハインラインの妻の、一時期冒険者パーティを組んでいたこともあった・・・・弓使いのレンジャー職のあの女に、似ていやがるな。


 まったく、運命とは数奇なものだな。


 まさかロザレナお嬢様と共に入学してきたこの学校に、しかも同じ寮生に、あいつの孫娘がいるだなんて。


 こんなことは全く、予想だにしてはいなかった。


「ただいま戻りましたーっ!!」


「は、早っ!? こ、こんな1分足らずで外周一回りしてきたんですか~っ!?」


「? はい。15周くらいはしてきましたっ!! いっぱい走れて気持ちよかったですっ!!」


 このハチャメチャ具合は・・・・確かになるほど、ハインラインの血を思わせる部分だな。


 あの男の鬱陶しいくらいの熱血さはちゃんと受け継いでいる、と・・・・また昔のようにあの暑苦しい馬鹿な奴が傍にいることになると考えると、何だか辟易してくるものがあるぜ・・・・。


「では、ジェシカちゃんも戻ってきたことですし、食堂に移動しましょうか~~。これから満月亭の新入生歓迎会を開催しますよ~~」


「やったー! ご飯♪ ご飯♪」


「歓迎会を開いてくれるのね。何だか楽しみね、アネット」


「そう、ですね・・・・はい・・・・・」


 そうして俺は「ははは」と乾いた笑みを浮かべながら、ロザレナと共に、オリヴィアとジェシカに続いて食堂に向かうべく足を進めて行った。










「むぅーっ!! むぅーっ!!」


「・・・・・えっと、何ですか、これ」


 食堂に入ると、まず目に入ってきたのが・・・・雁字搦めにロープで椅子に縛り付けられ、ボールギャグを口に固定されている、マイスの姿だった。


 俺がそんな彼の姿に疑問の声を溢すと、オリヴィアは頬に手を当て、慈母のような微笑みを向けてくる。


「せっかくの歓迎会なのに、マイスくんがいないのは可哀想ではありませんか? ですからこうして、拘束したままここに連れてくることにしたのです」


 そう口にして、オリヴィアはマイスの口に入れられているボールギャグを取り外すと、眼を細め、悪寒のするような冷たい笑みを浮かべる。


「マイスくん、流石に反省しましたよね~? もう、アネットちゃんに手を出さないことを誓えますか~?」


「ぷはっ!! ・・・・ふっ、ふははははは!! いったい何を言っているのかね、眼帯の姫君よ! この俺の愛をこの程度のことで止められると思っているのなら、笑止! このマイス・フレグガルト、必ずやメイドの姫君を我が手中にー---もがぁっ、ふががっ!!!!」


「はい~、お口封じちゃいましょうね~。まったく、治癒魔法を駆使した拷問にも耐え抜くなんて、この男の性欲はどうなっているのかしら~。いっそのこと、去勢でもした方が良いのかしら? でも、こんな脳みそチ○ポ男のアレなんて、見たくも触れたくもないし・・・・うーん・・・・」


「あ、あの、オリヴィア先輩・・・・?」


「どうしたの? アネットちゃん?」


「な、何だかこういった拷問めいたことに手慣れている雰囲気がありますが、その・・・・」


「ん~? あ、そうなんですよ~、私、聖騎士団の異端尋問官を目指していますから~。拷問はお手の物なんです~」


「異端、尋問官・・・・・」


「はい~。っと、あっ、そうだそうだ! 三人とも、早く席について~。今、夕飯の料理を運んできますからね~」


 そう言って、オリヴィアは厨房の中へと消えて行く。


 ぽけーっとして呆けた顔をしているジェシカは置いておくとして、俺とロザレナは拘束されて「むぅーむぅー」と叫び声を上げているマイスを横目に見ながら、若干引いた顔をしながら長テーブル席へと座った。


「オリヴィアさんって・・・・何かお母様に似てほんわかしている雰囲気の人だと思っていたけれど・・・・ちょっと怖い人なのね」


「そ、そうですね・・・・あまり怒らせないようにした方が賢明なのかもしれません」


「ごっはんー♪ ごっはんー♪」


 ジェシカ嬢・・・・躊躇なく拘束されたマイスの隣に座っただけじゃなく、その場所でフォークとナイフもってトントンと机を叩くとは・・・・その豪胆さはいったい何なんだ・・・・。


 ただのアホの子なのか、それともマイスの状況を見ても何も感じない強い精神力を持っているのか・・・・どちらにしても、まぁ、只者ではないな、この子・・・・。


「はい~、お待たせしましたよ~」


 オリヴィアが大きなトレイを持って、食堂へと現れる。


 そして彼女はゴトッと、テーブルの上にそのトレイを乗せると、その上に乗せられている5人分の食事を配膳していく。


「はい、これ、私が作ったシチューなんです~。食べてください~」


「あ、あの、これ・・・・・」


 思わず、これ、シチューなんですか? と聞いてしまいそうになった。


 何故なら、目の前に配膳されたその料理は・・・・マグマのように煮え立つ、紫色のぶよぶよとした液状のもので・・・・どう見ても、人の食べ物には見えなかったからだ。


「・・・・・・ごくっ」


 生唾を飲み込みながら、中に入っている謎の白い丸い具をスプーンで掬いあげてみる。


 すると、それは・・・・・白く濁った大きな眼玉だった。


 その眼玉は俺と視線を合わせながら、ドロリとした紫色の汁を垂らせている。


「あ、あの、オリヴィアさん・・・・こ、これって・・・・」


「あぁ、それは隠し味のゴブリンの眼玉なんです~。先週、実習で仕留めて来た獲物なんですよ~」


「た、食べれるの・・・・? これ・・・・?」


 ロザレナは顔面を青白くさせて、隣に座る俺へ視線を向けて来た。


 俺もこんな料理は今まで口にしたことが無かったので、唖然としたまま、お嬢様に首を傾げるしかなかった。


「さっ! みんな! めしあがれー♪」


「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


 俺とロザレナは視線を交差させ、互いに言葉を発さずに、意志を共有する。


 目の前に座るあのマイスのようになりたくなければ、今はこの料理を食べるしかない、と・・・・・。


「い、いただきます・・・・」


「い、いただくとするわ・・・・」


 そうして、俺たちが同時にスプーンで紫色の液体を掬い上げた、その時だった。


「いっただきまーす!! はむっ、もぐもぐっ・・・・・・うん! おいし・・・・・くなぁぁぁぁぁい!!!!! ぐふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? な、何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 何なのこの料理!? 死ぬ!! 喉が焼ける、い、痛い!! た、助けてぇ、お爺ちゃ・・・・・ぐふっ」


 丁度目の前に座っていたジェシカが、叫び声を上げながら、そのままテーブルに突っ伏した。


 口からは大量の紫色のシチューが零れ落ちている・・・・白目を剥き、絶対に年頃の女の子がしちゃいけないような表情をその顔に浮かべて・・・・彼女は死んでいた。


 目の前で起きたその惨状に、俺たちは当然シチューを口に運ぶのを止め、その場で口をパクパクとさせるしかできなくなっていた。


「ま、まぁ!? ジェシカちゃん!? ちょっと、大丈夫ですか!?」


「うぐぅ・・・・水ぅ・・・・・みんなぁ、この料理を食べちゃダメだぁ・・・・私のようにならない・・・・で・・・・・」


「ジェシカちゃぁぁぁぁん!!!!!!!」


 聖騎士養成学校 第二学生寮 『満月亭』 食堂。


 毒飯で仕留めた側が、何故か被害者を抱きかかえ、悲しみの声を上げるという・・・・訳が分からない光景が、そこには広がっているのだった。








「本当にごめんなさいね、ロザレナちゃん、アネットちゃん、ジェシカちゃん・・・・せっかくの新入生歓迎会だというのに、私のせいで、今夜の夕飯が無くなってしまって・・・・」


 席から立ち、深く頭を下げて、オリヴィアはこちらに心からの謝罪を見せてくる。


 俺たち三人はというと、あはははと困ったように笑いながらも、そんな彼女に対して怒るようなこともなく。


 優しく、彼女のその謝罪を受け入れていた。


「気にしないでください。ジェシカさんは大変だったかもしれませんが・・・・私たちに特に被害はありませんでしたから。料理を作って歓迎してくれようとした、オリヴィア先輩の真心が私は嬉しいですよ」


「うぅ・・・・アネットちゃんは優しいですね・・・・。先輩として、私は自分が情けなくて恥ずかしいですよ~~」


 ぐすっと鼻を鳴らしながら涙ぐむオリヴィア。


 そんな彼女に「どうぞ」とハンカチを渡していると、横からロザレナが彼女に対して疑問の声を上げた。


「あの・・・・気になったんですけど、この寮に寮母さんはいないのですか? 普通、夕食って寮母さんが作るものですよね?」


 彼女のその問いに、オリヴィアは未だ椅子に拘束されているマイスへと冷ややかな視線を向ける。


「そこの男が、この満月亭に来る寮母さんに片っ端から手を出してしまって・・・・今、この寮には寮母さんがいないんです。繰り返される異性交遊に、聖騎士養成学校の校長が直々に募集を止めてしまったので、満月亭の夕飯は生徒が作らなきゃなったんです」


「え、えぇ・・・・?」


 寮母に次々手を出すとか・・・・いや、あいつストライクゾーン広すぎやしないか?


 女なら抱ければそれで良いのか? 何なんだあの残念イケメン野郎は・・・・。


 俺はマイスに視線を向けながら、呆れたため息を吐く。


 すると彼は、俺に対して優雅にウィンクなんてしてきやがった。


 本当、不屈の精神力の男だな・・・・その女に対しての執着心だけはドン引き越えて若干尊敬するよ・・・・生前の俺は童貞だったからな・・・・。


 俺はそうしてマイスから視線を外し、立ち上がると、悲し気な表情で立ち尽くすオリヴィアへと視線を向ける。


 そんな俺に、オリヴィアは首を傾げ、不思議そうな顔を向けて来た。


「アネットちゃん?」


「あの、食材って残ってますか? その、ゴブリンの眼玉とかじゃなく、まともな野菜というかそういうものは」


「え、ええ、あるにはあるけれど・・・・どうするの?」


「料理、作ろうかと思いまして。ロザレナお嬢様、鍵をお渡ししますので、私の神具たちをここに持ってきて貰っても良ろしいでしょうか?」


「神具って・・・・調理器具でしょ? 分かったわ。ちょっと待ってなさい」


 そう言って、ロザレナは食堂を出て、二階へと上がっていく。


 そんな去って行くロザレナと俺に交互に視線を向けて、オリヴィアはハッとした表情を浮かべる。


「あっ! も、もしかしてアネットちゃん、料理が作れるの!?」


「はい。レティキュラータス家の御屋敷では、それなりに研鑽を積んだつもりです。では、厨房に案内して頂けますか? オリヴィア先輩」


「う、うん!」


 そうして、俺はオリヴィアと共に、厨房へと入って行った。


 厨房は、レティキュラータス家と比べればこじんまりとしているが、オーブンやコンロなどが充実しているし、学生寮にしては上等なものと言えるだろう。


 俺は、とりあえずどんな食材があるのか・・・・壁際に設置されていた食料を冷凍貯蔵できる魔道具(マジックアイテム)、『アイスボックス』を開けてみる。


 ふむ、フランシアリーフに、シュルコフの実、サハギンの尾、ミルク、チーズ、後は基本的な調味料一式に、パンが6つか。


 豪勢な料理、とまではいかないが、それなりに簡単なものはつくれそうだな。


 シチューの元になった原材料を考えれば・・・・乳製品料理を選択するのが無難、か。


 俺はここにある食材を組み立てて、その場で献立を組み立てる。


 すると、恐る恐ると言った様子で、オリヴィアは声を掛けてきた。


「あ、あの、アネットちゃん、どうですか? 何か作れそうですか?」


「・・・・・はい。任せてください。エプロンをお借りしても?」


「は、はいっ! どうぞっ!」


 オリヴィアが慌てて外したそのエプロンを受け取り、身に着け、ポニーテールが外に出るように三角巾を付ける。


 そして腕を捲ると、丁度姿を現したロザレナから神具を受け取り、愛用のナイフを片手に不敵な笑みを浮かべた。


「さて・・・・・・【覇王剣】の実力、見せてやるとするか」


 こうして、覇王剣もとい覇王軒の剣聖クッキング劇場が幕を開けたのだった。









「お、おいっっしぃ~~~~~~~~!!!!!!」


 オリヴィアは目を爛々と輝かせ、俺の作ったグラタンを、美味しそうに頬張る。


 その頬は紅く染まり、口元は幸せそうな笑みが浮かんでいた。


「こ、これ、すっごく美味しいですよ、アネットちゃん~!! こんな美味しいグラタン、食べたことないです~!!」


「ふふん。どうやらうちのメイドの凄さ、分かってもらえたようね」


「うまっ! うまっ! さっきのシチューが帳消しになる美味さだよ! アネット!」


「そうでしょう! そうでしょう! ジェシカ・ロックベルト、存分にアネットの凄さを実感すると良いわ!」


「・・・・・何で、ロザレナが誇らしげなの? アネットが誇らしげになるのなら分かるけど」


「う、うるさいわねっ! アネットは私のものなのだから、主人として鼻が高いのよっ!」


 和気藹々と、俺の作ったグラタンを頬張る、満月亭の生徒たち。


 俺は、そんな彼女たちの光景に、思わず穏やかな笑みを浮かべてしまった。


「喜んでもらえて何よりです」


 そう言って、俺も自分で作ったグラタンを口に運ぶ。


 自分としては、100点中80点くらいだろうか・・・・マグレットにこれを食べさせたら、あまり良い感想は貰えそうにはないだろうな。


 まぁ、残った在り合わせのもので作ったと考えれば、上等なものだとは言えるか。


「本当、アネットちゃんは凄いですよ~!! 私、料理を頑張って作ろうとはするんですけど・・・・さっき見た通り、全然ダメダメで・・・・こんな美味しい料理を作れちゃうアネットちゃんのこと、尊敬します~」


「いえいえ。私には腕の良い師がいましたからね。元々、私もそんなに料理の腕は良くはなかったんですよ。ですから、オリヴィアさんも良い先生に巡り合えたら、きっと素晴らしい料理を作れるようになるはずです」


「良い、先生・・・・・」


 そう口にして、スプーンを唇に当てがったまま、オリヴィアは神妙な顔を浮かべる。


 そして、俺へと珍しく真剣な顔を向けてくると、静かに声を発した。


「あの、アネットちゃん・・・・無理を承知でお願いするのですが・・・・時折で良いので、私の・・・・先生になってはくれないでしょうか?」


「えっ? 料理の先生、ということですか?」


「はい・・・・。ダメ、でしょうか?」


 不安そうにこちらを見つめる眼帯少女に、俺はうーんと、思わず逡巡してしまう。


 そして、雇い主であるロザレナへと、視線を向けた。


 すると、彼女はにこやかな笑みをこちらに向けてくる。


「別に良いんじゃない? 貴方だって、この学校の生徒として友人関係を構築した方が良いと思うもの。オリヴィアさんだったら、仲良くなっても問題は無いと思うわ。・・・・・ただ、浮気はしちゃダメだけど」


 浮気って・・・・・いつから俺はお嬢様とそんな密接な関係になったのですか・・・・。


 まぁ、子供のころ、キ・・・・をされてしまっているから、現状、何と言って良いのか分からない関係性ではあるけども。


 俺は小さく息を吐いた後、オリヴィアへと視線を向け直す。


 そして、不安そうにしている彼女に、答えを出した。


「こんな私でよろしいのですか?」


「うんッ!!!! アネットちゃんが良いんです~!! ぜひ、先生になってください~!!!!」


「分かりました。お嬢様のお世話をしている時間外のことであれば、一緒に料理をしましょう、オリヴィア先輩」


「やったぁ!! 嬉しいです~!! アネットちゃん!!」


 俺の手を握って、嬉しそうに微笑む、オリヴィア。

 

 その光景にロザレナは眉根をピク付かせるが、特に何も言葉を発することはしなかった。


「ふふっ、やっぱり、アネットちゃんは私の幼馴染に似ています~。優しくて、頼り甲斐がありそうで・・・・実は、最初に会った時からそう思っていたんですよ~??」


「そう、なんですか?」


「はい。もう、今は何処にいるのか生きているのかも分かりませんが・・・・私の婚約者だった、ギルフォード・フォン・オフィアーヌに・・・・とっても、アネットちゃんはよく似ています」


「オフィアーヌ・・・・」


 それって、四大騎士公・・・・・・・・オフィアーヌ家のことか?


 代々王家のあらゆる物資を管理、守衛する役目を持つ財務卿を担う一族で、優れた魔法剣士を多く輩出しているという、あの・・・・。


 俺が彼女の言葉に首を傾げていると、横からある男の声が聞こえてくる。


「はっはっは! 流石はこの俺が認めたメイドの姫君だ! こんなに美味い料理を作れるとは・・・・はふっはふっ、もぐもぐ・・・・ごくん、うん、ますます俺の妻にしたくなったぞ!!!!」


「はぁ!? あんた、何あたしのグラタンの残りを勝手に食べてるのよ!? というか、ボールギャグどうしたのよ!?」


「あんなもの、この鍛え抜かれた白い歯の敵ではないのさ、レティキュラータスの姫君よ」


「・・・・・・脳みそチ○ポ男が・・・・・今、私とアネットちゃんが手を握り合って友情を確認し合っているというのに・・・・・邪魔しないでくれますか? 次はその自慢の白い歯、全部ペンチで引っこ抜きますよ~??」


 こうして、何処か不穏な空気が流れながらも、満月亭の夕飯の席は温かい空気で流れて行った。


 これからこの3人と、俺たちはここで暮らしていくことになるのか。


 満月亭の監督生、ほわほわした空気ながらも何処かドSな気配を見せる、オリヴィア・アイスクラウン。

 

 満月亭の問題児、女好きの金髪の残念イケメン、マイス・フレグガルト。


 そして生前の兄弟子ハインラインの孫娘である、アホの子、ジェシカ・ロックベルト。


 何だかこれから先、レティキュラータス家の御屋敷と変わらないくらいとても賑やかな生活になりそうだなと、そう思いながら・・・・・俺は彼女たちの姿を視界に納めて、笑みを浮かべた。

 

朝起きて、昨日書いておいた次話投稿しようと思ったら・・・・何と、最強の剣聖のオッサン、没落伯爵令嬢のメイドに転生するが、連載日間ランキング72位を獲得してましたー!!!!!


こんな、二桁台までランキングが行くなんて、びっくりです!!!!


まだ夢の中にいるのかと、そう思ってしまいました笑笑


なろうに小説を投稿してきて、こんなことは初めてなので、とても嬉しいです。


これも、読んでくださった方々全て、そして、評価、ブクマ、いいね、コメントを書いて支えてくれた皆様全員のおかげです。


これからも、頑張って、投稿していきたいと思います!


また今日の夜か明日に投稿しますので、続きを読んでくださると幸いです。


では、三日月猫でした! また!

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