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94話 閑話 シェシリー#4

ちょっと時を遡り、騎士団長とセリア魔導師団長が来たところからです。

っ!

急に殺気を感じたので後ろを見れば氷魔法の[アイスニードル]のようなものが飛んできてました!

なんとか美月様を庇えたから良かったものの……。

美月様には殺気を感じる訓練をしてなかったですね。これは今後の訓練メニューを改めないといけないかもですね。


それにしても前には魔導師団長、後ろには騎士団長ですか……。

確か、魔導師団長がセリアで騎士団長がレオンだったですかね?


しかし、これはまずい状況ですね。

相手はバランスのとれた前衛と後衛の二人コンビ。私と美月様二人で戦えば、私はなんとかなるかもしれませんが、美月様が厳しいでしょう。

となれば、それぞれ各個撃破が望ましいですかね?

ともすれば、この国の騎士団長はレベル60後半という噂をよく耳にしているので、騎士団長のレオンさんの方を私がやりましょうか…………。

魔導師団長のセリアさんは、新任したばかりと聞きますし、おそらく高くてもレベル45以下程度でしょう。

どのような理由があってかは分かりませんが、大精霊と契約している勇者に対して戦い、結果としては負けたものの、試合としては有利に戦うことのできた美月様なら、私がレオンさんを倒しきるまで持たせられるはずです。


じゃあ、早速美月様に伝えましょう!

………………!

そういえば美月様には、本当のステータスをつたえてませんでした!

追われる身になってしまった以上………あ!もちろん後悔はしてないですよ?美月様と過ごしていた時間は短いですが、今での人生でもトップクラスに充実した楽しい時間でした。

なので、ステータスのことを今さら隠す必要もありませんし、言っても良いのですが……。

今まで私が美月様に嘘をついていたという真実には偽りはないのです。

なので、私としては美月様との絆……というと恥ずかしいですが、その~師弟関係?に偽りは無かったつもりです。

しかし、ステータスの事を伝えると私と美月様の師弟関係まで嘘だと思われてしまうかもしれません。

………それを考えると……とても怖いです。


しかし、目の前の美月様は逃げるべきか、戦うべきか悩んでるようすです。

急がなければ、敵の増援が来るかもしれないです。

言うしかありませんね………。


「仕方ないですね………。

隠していたんですが、実は私はレベル50以上なんです。なので、私がなんとか騎士団長さんを倒します。美月さんはその間そこにいる魔導師団長を足止めしておいてください。」


美月様にそう告げると、初めは少し驚き、次に苦笑い顔をしたのちに、気合いを入れたような顔になりました。

最初と最後は分かりますが、間の苦笑い顔はなんてんですか!?

すっごい予想外なんですけど!

うーん…………。

仕方ありません。時間もありませんしレオンさんと戦いましょう。


後ろでは美月様とセリアさんが戦っている音が聞こえてきますがこちらに集中しましょう。


「おいおい~いいのか?あの坊主一人で戦わせて?あいつああ見えて結構性格悪いぜ。あの坊主遊ばれて殺されるかもしれないぞ?」


「いえ構いません。美月様ならなんとかなるでしょう。時間さえ稼いでいただければ私が助けに向かいますので。」


「へぇー、あの坊主にそこまでの強さがあるようには見えないけど…………?それはともかく助けに向かうか…………、ただの暗部の一員に過ぎないあんたがこの国最強の剣である僕を倒せるって思ってるの?」


うーん?この国ガイドミル王国は中規模の国家ですが、長い歴史ぐあり剣術もこの国独自のものがあります。

そして、長い歴史の分、技術も研鑽されているはずです。


「まあ、なんとかするしかないでしょう。」


「ふーん。じゃあなんとかしてみなよ!」


レオンさんは手に持っている西洋剣を振り斬りかかってくる。

剣速が速いです!

でも速いだけで動きにフェイントがないので簡単にかわせました。

これはもしかして様子見ってことでしょうか?


「へぇー、今のかわせるんだ。ただの暗部の人間と見ない方がいいのかな?じゃあ次はこうだ!」


レオンは、そう言いながら剣を振り続ける。

………………速いだけかな?正直当たりさえしなければ問題ない。

そう言えばガイドミル王国はこの50年程は大きな戦争や魔物災害が無かったですね。

基本的には小国に攻め込み、圧力を掛けて属国にするような政治を行ってました。

そのせいで今の現役世代の実践経験が少な過ぎてこうなったのでしょうか?

私が住んでいた皇国の騎士団ではあり得ないことですね。


この攻撃は、かわせなくて当たったら流石にヤバそうですがこんな安直な攻撃をかわせないほど私も訓練を怠って無かったはずです。

私はそう思っていたが、不意に来た一撃の目測を誤って、剣先が私の頬を掠めてしまった。

頬を触ると手に赤い血がついた。


「ようやく当たったか。この僕相手に防戦一方とはいえここまで戦えるなんて誇っていいと思うよ?勿論この戦いが終わって生きてたらの話だけどね?」


あんな技をかわせなかったの?私が?

冒険者を引退してから、この国に来て潜入やメイド業務ばかりしすぎて、腕がなまってしまいましたかね?


……!いけないです!私は今自分の強さを傲っていましたか?

私より強い人間なんていくらでもいる。

それが分かったから、あのとき冒険者を引退したんじゃないですか私!

相手がどんな相手だろうと戦闘である以上は本気で!鈍っていた感覚を取り戻しましょう。


「では、そろそろ反撃させてもらいますよ!」


そもそも様子見なんて悠長なことをしてる時間はなかったです。

全力全開でいきましょう。


「[ブースト][纏身]![エアロステップ]![土装拳]!」


[纏身]は、自身の体外にマナのアーマーを作る魔法。

[エアロステップ]は風魔法を足に纏い空中でステップを踏める魔法。

[土装拳]は手に土魔法で作った岩を纏うことで拳による攻撃力を高めます。

ただスピードが落ちてしまうという欠点もありますが………。


私は魔法拳闘師という職業ですが、MPはあまり多くありません!

速攻でいきます!!


まずは剣を拳で弾く!

レオンさんの振るった剣の側面を殴りつける。


「な!?」


仮にも騎士団長なだけはありりますね。私の一撃を喰らっても剣を手放さなかったようです。

ですがお腹ががら空きですよ?


[エアロステップ]で一瞬で近寄り腹を殴りつける。


「ぐごぉ?」


レオンさんは2m程空を飛び背中から地面に倒れました。

しかし、体を起こし、周りの状況を確認しようとしてますね。

ですが、動きに切れは無さそうです。

周囲の確認が終わると少し混乱している様子が見えます。

どうやら私が追撃しなかったことを不思議に思っているみたいです。

ここは賭けにでましょうか?


「まだ、やりますか?私は構いませんが、これ以上続けるのであれば貴方を殺さざるをえなくなってしまいますが?」


こうなった以上は、レオンさんに勝つことは簡単に出来そうです。しかし、この後逃げることを考えるとここで魔力を使い過ぎてしまうことは避けておきたいです。

どうか引いてください。でないと本当に殺させてもらいます!


「いや、いくら僕でもこの状態でさっきの君に対して勝てるとは思わないよ。死にたくないし、坊主の方にでも行ってきな………。」


「そうですか。賢明な判断ですね。」


さて、美月様はどうでしょう?

見てみると美月様が[ファイヤーボール]をセリアさんに放っているところでした。

あの距離ならセリアさんが避けることは出来そうにないですね。

魔導師必須の[魔力障壁]を貼ってない所を見ると本当に油断してたんでしょう。

これなら、ある程度のダメージを見込めます。

セリアさんが回復してこないうちに、直ぐに逃げることにしましょう。


そう思っていると視界の端に黒い影が映る。

!貴方は長官!私の所属していた国王直属情報隠密部隊のメラリア長官が美月様の後ろに忍び寄ってます。


「急がないと!」


私はまだ解除していない[エアロステップ]を全力で使用し、美月様の方に向かいます。

久しぶりの閑話です。

楽しすぎて気付いたらいつもの三倍近く書いてましたw


さてこの小説は3月28日で書き始めて半年になります。

これもすべて皆さんの応援やアドバイスのお陰です。

ありがとうございます。(;つД`)

次の一周年目指して頑張るので、これからもぜひ読んでやってください(^o^ゞ

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