81話 契約
「くっそ!皆の為にも!何よりも美樹さんのためにもこんなやつに負けるわけにはいかない。」
勇義は技に掛けられた状態で気合いをいれているが、僕が力を強めることで動けないようにしている。
僕は勇義が動けないのを確認するとエミリア王女の方を見る。
エミリア王女は勇義の方に目を向けて、一理の望みがないか確認しているように見えた。
何秒か見るがその可能性はないと判断したのか、顔を引き締めて声を出す。
「この勝負!美月様のか…………」
しかし、エミリア王女が勝利宣言をしようとした瞬間に勇義から変な
それを感じ取ったのかエミリア王女も勝利宣言を取り止め、戦闘出来るような体勢に移っている。
「なんだお前は?」
急に勇義が独り言を話し出した。
僕は警戒して勇義にかけている固め技を強くする。
しかし、勇義はそんなことはお構い無しに独り言を話す。
「力?契約?…………なんでもいい!この状況を何とかするための力を貸してくれ!……精霊?…………俺の名前は勇義拓哉!勇者の勇義だ!」
謎の単語を幾つか発しながら勇義は自分の名前を叫ぶ。
すると、急に勇義の力が増してきて技を外されてしまう。
「な!なんだ!?」
続けて勇義の手が僕の方に伸びてくる。
僕は悪寒を感じて飛び退いた。
すると虚空から光と共に赤い炎が現れると共に謎の声が聞こえる。
「契約は無事に成功。今のが俺の力の一端。満足してもらえた?」
赤い炎は人型になると色彩を得て、肌色の肌と紅蓮の服を造り出す。
「あぁ~。感謝するよ。ありがとうフレイガ。」
「構わないぜ!契約だからな。」
いきなり炎より表れた人型生命体は勇義と会話をしている。
すると、警戒体勢をしていたエミリア王女が慌てたように、突然表れた人型生命体に話し掛ける。
「フレイガ!今フレイガと仰いましたか?フレイガと言えば炎の大精霊フレイガ様ですか?」
「お?そうだが俺様のこと知ってんのか?」
「貴方様は精霊の中でも数少ない大精霊。そして何よりも、一般的精霊が人間に対して深く干渉しないのに貴方様は国の騎士団に勝負を仕掛けたり、逆に国に仇なす特異個体の魔物を討伐したりなど、貴方様は有名過ぎます。」
「まあな、強そうな奴等が居たらケンカすることにしてんのよ。その方が楽しいだろ?」
「まあ、我国ではないですし、死者が出たわけではないので構いませんが…………。」
今の話を総合すると、あの人型生命体は大精霊フレイガという存在で、勇義と契約というものを結んでいて、その契約で勇義に力を貸している。
そして、大精霊フレイガは騎士団にケンカを売ったり出来るほど強いと言うことか……。
とすれば、当然力を借りている勇義の強さも相当な物になっているだろう。
「俺はコイツのマナの味に惹かれてな、コイツが死ぬまでコイツから漏れでているマナを貰うことと引き換えに力を貸す契約をしている。
まあ、ついでにコイツの人生でも見てやろうとおもってな。」
大精霊は僕の方を見て指を差すと一言いう。
「さあ、俺のパートナーの勇義は復活した。試合の続きをしようぜ。」
うぉーー!
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