<< 前へ次へ >>  更新
33/315

30話 閑話 シェシリー#3

初の訓練から一週間経ちました。

この一週間私がこれ以上やってもいいのか?って悩んでしまうほど厳しい訓練を美月様は要求しました。

しかし、いつも美月様は楽しんで訓練をしていたので私も最後まで厳しく指導することが出来た。

美月様の努力のお陰で[マナ操作]がなくても他の異世界人の人達に勝てるくらいの強さになっているでしょう。

というか、実践的な訓練をやったことがない他の人達とでは実力が圧倒的に違う筈です。

実際先程、同じ異世界人の高橋様に攻撃されたがやり返したという報告を高橋様のメイドから聞きました。

ふむ。これも長官の耳に届かないように手を打っておきましょう。


それより美月様は以前より自分の職業スキル[状態異常妄想]の訓練をしたいが知り合いに試すのは危険すぎて殆ど使えてないとおっしゃってました。

そこで私が美月様のスキルを試せる相手を作って上げます。


という事で来ました。

城下町の魔獣店、ここは魔物使い等が使う道具や魔物や動物やそれらの餌などを販売している。

有り金の半分くらいを持ってきました。

これならそれなりの魔物が買えるはずです。

しかし、店に入るとやけに商品が少ない、嫌な予感がする。

店主に聞いたら魔物の現物はとある貴族が買い占めてしまったらしい。

残っているのは、魔物召喚石のみなんですが値段が凄く高い!

一番安いスライムですら平民の年収3年分に相当します。

魔物召喚石が高い理由は、持ち運びが楽で、餌代が全く掛からないし、死んでしまうリスクもなく長期保存できる。

なによりダンジョンでのドロップしか入手方法がなくドロップ率が0.01%以下という超低確率なのです。


今日もってきたお金ではスライムの物しか買えませんが無いよりはましです。

なのでこれを買って帰りました。


帰ってきた美月様にかつて冒険者時代に遭遇した珍しい状態異常のことを伝えてから、スライムの召喚石を渡します。

値段のことを聞かれましたが咄嗟に安物と嘘をついてしまいました。

まあ、お陰で簡単に美月様に使ってもらうことが出来ます。


美月様は召喚石を使いスライムを呼びました。

?このスライムは様子が変ですね?普通のスライムならすぐに逃げる筈なんですが?

ふと美月様を見ると様子がおかしいです。


「ちょっとこの子をスキルの練習相手にするのはきついです。」


そんな折角全財産の半分を使ったのに……。


「そうですか……。仕方ありません私が処分しましょう。」


「待ってくれ。このスライムは僕が育てるから許してやってくれないか?」


「それはかまわないですが、美月様は[ティム]を持ってないので危険ですよ。」


スキルを持たない者は魔物に言うことをきかせることができないので大変危険なのだ。


「それなら今から習得する。スライムお前の名前は……ラズリ。お前の透き通った宝石のような目から考えたんだ。ラピスラズリでラズリ僕にティムされてくれないか?」


それこそ無理です。

[ティム]かなりのレアスキルで適正職業以外で習得する場合は、幼い頃から魔物とふれ合う魔物使いや魔物屋等の息子だったりが殆ど、ましてや今日初めて見た美月様が[ティム]を習得出来る筈がない。


そう思っていると、スライムが突然美月様の足にすり寄ります。

すると、美月様が言いました。


「リリアさん[ティム]を習得出来ました!ラズリもしっかり使役獣の項目に名前がありました。」


「えー。そんなばかなー……。」


つい素の私が出ましたがそんなの気にならないくらいびっくりしました。



それから数日美月様のステータスの伸びはさらに加速しました。

というか流石におかしいです。

このスキルのレベルや数は熟練の冒険者のステータスに匹敵するところまで成長してます。

私になにか秘密を隠しているのでしょうか?しかし、それでも構いません。

私は美月様の為にそれを誤魔化します。

スライムのステータスもおかしいくらい成長してます。


そして明日は美月様達が初めてダンジョンに行くことになりました。

その事を職業がら2,3日速く知ることができました。

なので私は、[隠密術]や[索敵術]を教えてしまいました。

私がスキルを持っていないのに教えてることで秘密がばれるリスクもありますが、美月様は[鑑定]を持ってないのでばれないことを信じます。


ダンジョンはとても危険です。

慣れていない者は私ぐらいのステータスでもうっかり死んでしまうことがあります。

美月様が心配で心配でたまりません。

なので国王直属情報隠密部隊の監視代表としてついて行くことにしました。

今だけは、副長官という肩書きに感謝します。

これでなにかあっても美月様を守れますから。

ともなれば、影から主の身を守る訓練をしなければ!!

<< 前へ次へ >>目次  更新