宇宙海賊
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惑星エーリアス。
旧バークリー領であるこの惑星は、自然豊かな場所だった。
人の手が入っていないその場所は、ろくな調査がされておらず入植に適しているかどうかも判断出来ていない。
軽空母に分類されるレメアは、頑丈さが取り柄で大気圏内でも運用可能だった。
そんなレメアに乗せていた惑星調査団が艦を降りると、早速調査を開始する。
エマが率いる小隊は、調査団の護衛を任されていた。
モーヘイブのコックピットは、狭くて快適とは言えない。
これまで何十人ものパイロットが使用してきたのだろう。
他人の臭いや、嗅ぎなれない臭いがして乗っているだけでも辛かった。
「変な臭いがするよぉ」
泣き言を呟くエマに、他小隊のモーヘイブと通信が開かれる。
エマの乗る隊長機と同じく、頭部にバイザーの飾りがついている。
『よう、聞いたぜ。お嬢さんは、出来損ないのDランク騎士なんだって?』
オールバックにした女性パイロットがモニターに映し出された。
パイロットスーツを脱いで、コックピットに酒を持ち込んでいる。
「今は任務中ですよ」
『真面目な騎士様だ。だけどさ、機動騎士すらまともに動かせないらしいね? 何なら、この私と勝負しなよ』
話している相手は、同じ中隊の他小隊――第四小隊の隊長だ。
随伴機の二機も隊長機と同様に、エマの乗るモーヘイブに槍を向けてくる。
「ちょっと!」
あまりの行動に注意しようと思ったエマが、チラリと部下たちに視線を向けた。
だが、ダグもラリーも無関心を決め込んでいた。
(――あたしは仲間じゃなくて余所者扱い!?)
ダグもラリーも、エマよりも相手に対して仲間意識を持っているらしい。
焦るエマの表情から、事情を察した第四小隊の隊長があざ笑ってくる。
『部下にも見捨てられたのかい? 弱い騎士様っていうのは惨めだね! ――弱い癖に理想ばかり言うお前みたいな奴を見ていると、苛々するんだよ!』
女性隊長のモーヘイブが踏み込み距離を詰めてくると、エマは咄嗟に操縦桿を握って素早く動かす。
ほとんど反射的な行動だった。
ただ、モーヘイブでも同じだった。
初陣と同じように、機体が酷く鈍重で自分の感覚とズレが生じる。
「っ!」
素早く反応したエマが機体を下がらせようとするが、ネヴァンと比べても恐ろしく反応が鈍いモーヘイブでは操作感覚が更に遅い。
(駄目! 倒れる!?)
調査団に被害が出ないように気を付けながら倒れたが、機動騎士ほどの巨体だ。
辺りは僅かに揺れ、土煙が舞い上がって大騒ぎになった。
無様に倒れたエマのモーヘイブを見て、第四小隊の面々が大笑いをする。
『まさか転んだのかよ!』
『さすがは騎士様だ。転び方にも品があるぜ』
『ちょっと脅しただけでこの様とか、Dランク騎士っていうのは本当に出来損ないだな』
第四小隊は、面倒になる前にこの場を離れるつもりらしい。
エマを放置してどこかへと向かっていく。
コックピットの中で、エマは奥歯を噛みしめた。
同じ第三小隊の仲間である部下たちが、ゆっくりと近付いてきてエマのモーヘイブを起こす。
接触したことで回線が開き、ラリーの呆れた表情がモニターの一部に映し出される。
『本当に何も出来ないのかよ』
「ご、ごめんなさい」
つい謝罪してしまったエマに、ラリーは露骨な舌打ちをする。
『騎士が謝るなよ。騎士はもっと――』
何かを言いかけるが、ラリーが頭を振って離れていく。
ダグの方は淡々としていた。
『この程度の任務もこなせないようなお嬢ちゃんが、騎士になれるっていうのが理解できないぜ』
「――っ」
悔しくて黙ってしまうと、ダグが冷たい態度を取る。
『頑張るのはいいが、せめて足は引っ張らないでくれよ。面倒はごめんなんだ。それはそうと、俺たちを期待するな。俺もラリーも、気持ち的には第四小隊の姫さん寄りだ』
驚くことに、第四小隊の女性隊長は姫扱いを受けていた。
年齢的にはエマよりもかなり年上だが、そんなことは関係ないらしい。
「姫さん?」
『可愛いだろ。あの子も昔は素直で真面目な軍人だったんだぜ』
そんな姫さんでも心が折れてしまった。
直接は言わなかったが、ダグの言いたいことをエマも理解する。
レメアのオペレーターとの間に通信が開いた。
『エマ・ロッドマン少尉。すぐに格納庫に戻れ。ったく、余計なことをする騎士様だぜ』
余計な仕事を増やしたエマに対する愚痴。
エマはコックピット内で項垂れた。
(いきなり失敗した)
決意を新たにした直後とあって、エマの中で大きな失敗に感じられた。
◇
レメアの格納庫。
モリーが上官に殴られて戻ってきたエマに話しかける。
「やらかしたね。こっちも今日は整備で大変だよ」
「ご、ごめん」
「ば~か。嘘に決まっているでしょう」
「え?」
「この子は構造自体が単純だから、整備も楽なのよ」
モリーは落ち込むエマを慰めるために、冗談を言ったようだ。
エマが安堵して胸をなで下ろす。
「良かった」
「でも、しばらく動かせないよ。アシスト機能を解除したからね」
「え? な、何で?」
「再調整をするの。騎士用の機動騎士って調整が難しいからさ。それに、エマちゃんの場合はもっと調整が必要みたいだし」
「そっか」
壊していれば始末書を何十枚と書くことになった。
そうならずに済んだと、エマは安堵してから自分の乗るモーヘイブを見上げた。
「壊れてなくて良かった。あんなやらかしで壊したら、可哀想だし」
そんなエマの言葉に、モリーは満面の笑みを浮かべる。
「エマちゃんも機動騎士が好きなの? うちも大好き! 整備兵になったのも、この子たちを整備できるからよ」
「え、そうなの?」
モリーの意外な話を聞いて、エマは驚きつつ嬉しかった。
エマはモリーに尋ねる。
「それなら、どんな機体が好き? あたしは絶対にアヴィ――」
機動騎士の話題で盛り上がろうとしていると、大きな爆発音が聞こえてきた。
レメアの格納庫ハッチは開いており、そこから大きな煙が立ち上っているのが見える。
「な、何!?」
エマに庇われたモリーは、何が起きたのかと困惑していた。
咄嗟にモリーを庇ったエマは、すぐに自分のモーヘイブへと乗り込んでいく。
「すぐにあたしの機体を出すわ。モリーも早く避難して」
「ひ、避難?」
戸惑うモリーに、何が起きているのかエマが手短に伝える。
「――敵よ」
◇
ラリー・クレーマー准尉は、モーヘイブのコックピットで冷や汗をかいていた。
「宇宙海賊でも四型ベースを使っているってのにさ!」
モーヘイブが持つ銃からビームを放つが、敵の動きが素早く当たらない。
敵が乗る機動騎士は通称【ゾーク】。
モーヘイブをベースに改良された宇宙海賊仕様の機動騎士で、現在主流となっている四型をベースに造られている。
そのため、ラリーが乗る二型よりも高い性能を持っていた。
更に悪い事に。
『地上戦特化仕様の俺たちに、お前らが勝てるかよ!』
敵パイロットの声が聞こえてくる。
敵のゾークは地上戦仕様に改造されていた。
周囲の地形を知り尽くしているのか、ラリーとダグの二人は押されている。
マシンガンを持ったダグのモーヘイブが、転んだ敵機を何とか撃破するが状況は二対三と敵の方が数は多い。
『ラリー、最悪だ。姫さんの小隊が食われた』
「そうですか! そして今は僕たちが食われそうですけどね!」
ラリーから見れば姫さんはいい歳をした女性だ。
そんな女性を姫さんと持ち上げるダグを理解できず、こんな状況でも心配しているのが腹立たしかった。
ホバー走行を行う敵のゾークたちは、バズーカを持ち出してラリーたちの後方にいる調査団を狙っていた。
「まずい!」
ラリーがシールドを構えて調査団を守ろうとすると、とんでもないスピードで通り過ぎる機体が現れた。
「隊長機!?」
ラリーが気付いた時には、バズーカを構える敵に向かっていた。
バーニアを吹かしての突撃に、敵が慌てて引き金を引いた。
(直撃する!?)
バズーカに撃たれて吹き飛ぶモーヘイブを予想したが、至近距離で放たれた弾がエマのモーヘイブを通り過ぎた。
そのまま二機は激突し、バラバラに砕けながら吹き飛んでいく。
(外した? いや、避けたのか?)
あり得ない。そんなことが本当に可能なのか?
ラリーが混乱していると、ダグがエマのモーヘイブに駆け寄っていく。
『お嬢ちゃんか!?』
自分たちの頼りない小隊長が、敵に向かって体当たりをするとは思っていなかったのだろう。ラリーもダグと同じ気持ちだった。
「あの馬鹿、何て無茶をするんだよ!」
ラリーとダグがエマを助けるため、強引に前に出た。
宇宙海賊たちは、数で劣勢になると仲間を見捨ててそのまま撤退する。
その動きからダグは、敵が厄介であると感じ取っていた。
『いい判断力だな。敵さんは厄介な連中かもしれんぞ』
そんなダグの判断をラリーは否定する。
「不利になったから逃げただけですよ。味方まで見捨てるんですから、薄情な奴らです」
『だから手強いんだろうが』
ラリーとダグがエマのモーヘイブに近付くと、かなりの衝撃だったのか二機のパーツが四方に散らばっていた。
「おい、無事か!」
ラリーが必死に声をかけると、エマが答える。
『な、何とか無事です』
「良かった――てっ! それよりお前、何てことをするんだよ! 下手をしたら死んでいたぞ!」
エマが無事で安堵したラリーだったが、そのことを悟られたくなかったのか咄嗟に先程の行動を責めた。
エマも反省している。
『すみません。この子を壊しちゃいました』
「この子って、旧式のモーヘイブなんか気にするなよ」
呆れてため息を吐くラリーに、ダグが司令官の命令を伝えてくる。
『俺たちもすぐに宇宙まで後退だ。ラリー、お前はお嬢ちゃんを回収してレメアに戻れ』
ラリーが調査団に視線を向けると、既にレメアに乗り込みつつあった。
「このまま撤退ですか?」
『いや、どうやら予想以上に面倒になりそうだとさ』
「は?」
◇
レメアの治療室。
「このお馬鹿! あの子をうちがどれだけ可愛がってきたと思っているの!?」
「いふぁい。いふぁいです」
モリーに両頬を摘ままれるエマは、頭部や腕に包帯を巻いていた。
しばらく安静にするように医者に言われたが、エマの方は動いても大丈夫だ。
モリーはそれを知り、エマにお仕置きをしている。
「あの子をまともに動かせるようになるまで、どれだけうちが苦労したと思っているのよ! 騎士用に調整するのがどれだけ大変だったか!」
エマのために調整したモーヘイブを壊され、モリーは激怒していた。
「ご、ごめん」
解放されたエマが謝罪すると、モリーが深いため息を吐く。
「まぁ、生きて戻ったからいいけどさ。まさかアシスト機能を外した機体で、敵に体当たりを成功させるとは思わなかったわ」
「あははは」
無我夢中だったエマも成功するとは思っていなかった。
モリーが話を変える。
「それよりも聞いた?」
「何を?」
「第四小隊は全滅したって」
「――嘘?」
自分をあざ笑っていた第四小隊が、宇宙海賊たちの襲撃を受けて全滅した。
エマにはとても信じられなかった。
数時間前まで、彼女たちは確かに生きていた。
だが、もうこの世にはいない。
「第一小隊も二名戦死だって。まともに残った小隊はうちら第三小隊だけよ。出撃していなかった他の中隊は無事だけどね」
護衛に駆り出された第一中隊のほとんどが撃破され、まともに動けるのはエマたち第三小隊のみだった。
「そ、そうなんだ」
付き合いが長いわけではない。
だが、見知った人たちが死んでいく状況にエマは胸が苦しくなる。
モリーが次の報告をする。
「あとさ。理由はよく知らないけど、上が慌てているみたい」
「何かあったの?」
「味方が来るってさ。でも、おかしいのよ。送られてくるのは特殊部隊だって」
「特殊部隊? 通常部隊が送られてくるんじゃないの?」
どうしてこんな辺境に特殊部隊が送られてくるのか?
二人は互いに首をかしげるが、答えは出てこなかった。
若木ちゃん( ゜∀゜)ノ「うふふ、こっちにも根を伸ばして モブせか の宣伝をするわ。宣伝するのに、私がいないとか、おでんに味噌がないみたいなものよ。元気に宣伝していくわ!」
若木ちゃん(´∀`*)「ついに 【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 9巻】 が 【11月30日】 に発売されるわ。私も! この私も活躍するから是非購入して読んでね。いや~、つれぇわ~。人気者はつらいわ~」
エマ(;・∀・)「……どちら様ですか?」