ゴーストバスターズ
「20年後、C国は崩壊します」
経済コメンテーターは言い切った。
司会者の人気芸人Uは表情を変えずに返した。
「もう10年前からそういう意見がありますが、
C国は倒れそうにありませんね」
「さらに格差が広がり、その不満による内乱が勃発します」
コメンテーターの言葉をUは遮り、藤崎を見つめた。
「探偵の藤崎さんは、どのように予言しますか?」
名探偵藤崎誠は『近未来の大予言』というテレビ番組に
コメンテーターとして呼ばれていた。
前回テレビ出演し、『瞬間移動』について推理したことが、
ネットで話題になっていたからのようだ。
「10~20年先、ゴーストバスターズが出現します」
藤崎は真剣なまなざしで答えた。
Uは微笑み、頷いた。
「ゴーストバスターズ素晴らしいですね」
Uはカメラ目線で言った。
番組CMに映画『ゴーストバスターズ』のCMが入っていた。
「これで夜トイレに行けます。
私は幽霊が怖いですから」
Uは芸人らしく藤崎に乗っかった。
「名探偵と呼び声高い藤崎さん、具体的にはどんな予言ですか」
藤崎は大きく一つ頷く。
「予言ではありません。
現実を踏まえた推理です。
科学的な話です」
「ゴーストバスターズがですか?」
Uはカメラに向けて、深いシワを作った。
「そうです。現実的な話です。
しかし、それが出現したら、あなた方は安心して夜、寝られなくなるかもしれません」
Uのシワはさらに深くなった。
「すでにAI、人工知能が小説を書いているのはご存知ですか」
Uは怪訝な表情のまま、頷く。
「今は小説の体をなしているだけですが、10年後には、面白い小説を書くでしょう」
博識のUは納得して頷く。
「面白い小説が書けるということは何を意味するのか。
つまり、内容が面白いかどうか、分かると言うことです」
Uは小首を傾げる。
「何の話ですか?」
「本の内容が理解できると言うことは、
本の中に潜むゴーストを見つけられるということです」
藤崎はカメラに写っていなことを確認し、Uから視線を外した。
Uは藤崎の視線の先の女性タレントを見た。
彼女は番組の始めに本の告知をしていた。
「なるほど、そのゴーストですか。
ちょっと怖いですね。
見つかっちゃったら。
まあ、私は本を出してないから、いいですけど」
藤崎がいうゴーストとはゴーストライターの事だった。
もし、AIがタレントのブログ、ツイッターなどを解析し、
出版した本の内容を比較すれば、本人が書いていなことを暴くだろう。
「さすがは藤崎さん、面白い推理ですね。
そんなの実現したら、我々芸能人は震えあがっちゃいます」
おどけたUは両腕を交差して、自分の肩を抱きしめた。
そのタイミングでディレクターは合図した。
CMに移る。
『ゴーストバスターズ~!』
20年前と同じ心を弾ませる音楽が流れた。