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17.義弟は認めさせる。


式典が終わり、また大広間では多くの賑わいで溢れていた。


とはいえ、僕やプライド、ティアラは母上、父上同様にそれを終えても今度は貴族や近隣諸国から招かれた客人からの挨拶ばかりでお互いに歓談する暇も殆どないのが現状だ。

でも、


…ま、それなりには及第点というところかな。


客人と挨拶を交わしながら頭の隅ではさっきの自分の立ち振る舞いについて振り返る。


プライドと歩いた時、あまりにもプライドより僕への声が多すぎることが気になった。初見なことや、これからの取り入りの為が大きいだろうがそれでも面白くない。

でもプライドはそれを当然のように、表情一つ変えず進んでいた。

そして、ティアラ様と父上の登場。第二王女であるティアラ様をやはり皆が挙って褒め称えている。確かに、とても可愛いらしく母上にも面影が強い子だ。僕とは一つ下の彼女はプライドと同様、今まで僕が出会ったどの子とも違う愛らしさをもっていた。

でも、横に座るプライドの表情を見た途端にそんなことはどうでも良くなった。

笑っている。でもその表情はどこか憂鬱そうな影を落としていた。


心に、小さく炎が灯る。

冗談じゃない、僕の、この国の第一王女はプライドだけだ。


だから、僕はここで示すと決めた。


ティアラ様に声を掛けた時のプライドには、先程の憂鬱さは微塵も感じられず、妹への愛情で満ちていた。僕に、初めて会った時に向けてくれた時のように。きっと彼女はもう、ティアラ様の存在を受け入れている。


でも、それだけじゃ足りない。彼女の威光を示すには。


僕が続く。ティアラ様いや、ティアラに跪き…先ず、立場を決める。

庶民から成り上がった姫の側近などではない。

僕はこの国の王族であり、第一王子。第二王女の兄。そして第一王女プライドの補佐。将来、この国で最高権力の二番目に位置する存在。

それに誇りと自信を持って、彼女を呼ぶ。

下からではなく、上の位置から。彼女の兄として。


「ステイル・ロイヤル・アイビーだ。ティアラ。君の兄になれたことを光栄に思うよ。」


ティアラはそれに嬉しそうに答えてくれる。プライドの血を分けた妹。優しい笑みが彼女を彷彿とさせた。

…大丈夫、プライドを陥れようとした大人とこの子は違う。プライドと同じ、心の優しい王女。そして僕の守るべき家族の1人だ。

プライドが優しい笑みを向けた理由がよく分かる。とても可愛い、本当に良い妹だ。でも、



まだ、まだ足りない。



ティアラが僕を兄と呼んでくれたことに笑みで返しつつ、僕は続ける。

「君の姉君でもあるプライド第一王女は、母上や父上と同じく素晴らしいお方だ。僕らも共に姉君のお力になれるように力を尽くそう。」


そう、将来一番に敬われるべきなのは僕でも、そして君でもない。僕らの大事な姉君、プライドだ。

彼女は素晴らしいお方なのだと。女王陛下に相応しい器なのだと。そして僕も、ティアラも、それを支えるのだと。

母上に、父上に、ティアラに、国民にそれを宣言する。

ティアラは躊躇いもなく笑顔でそれに答えてくれた。

良かった、本当に優しい子だ。きっと彼女も僕とともにプライドを守ってくれる。

僕の願い通りの返事をしてくれたティアラに兄妹としての愛しさが産まれる。

ティアラが僕の背中越しにプライドを覗き込む。

僕も一緒に振り返る。

視線だけで、僕とティアラ以外も誰もがプライドに注目していることがわかる。

大丈夫、きっとプライドなら応えてくれる。

僕の信じた、女王の器を持つ彼女なら。


プライドが、応える。僕らへの感謝の言葉を乗せ、そして告げる。


「兄弟姉妹三人で、この国を…民を、守っていきましょうね。」


最高の答えだった。


瞬間、プライドに向けられた割れるような拍手と歓声にやっと僕は満足できた。




見ろ、聞け



そして



崇めろ







この方こそが、僕らの未来の王だ。







この日のために色々と勉強しておいて本当に良かったと、ステイルは思った。まだまだ付け焼き刃ではあるけれど、これであの時ジルベール宰相に群れていた大人達も少しは…



「見事な振る舞いでした、プライド第一王女殿下、ステイル第一王子殿下、そしてティアラ第二王女殿下。」


突然入ってきた柔らかい物腰を装うその声に、僕は思わず彼を睨みつける。



ジルベール…‼︎


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