前へ次へ
40/196

三十一 長坂 〜三十六計、逃げるに如かず〜 6 解決編 裏2

要約: 孔明×呂布、最強タッグ無双!


 解決編の舞台裏、もうすこし続きます。

ややボリュームがある解決編なのと、土日なので2話ずつ連続で投稿します。本日の昼に、前話を投稿したので、連続でお読みいただいている方はご注意ください。

 続きは明日のお昼です。

開催1週間ほど前 関東某所 小会議室


「では皆さんが梨ジュースを飲み終えたところで、次に進みましょう」


「「「ゴクゴク」」」


「ちなみにそちらの梨ジュースも、出展者のご厚意でいただいたものです。当日も、熱中症対策としてお安くご提供いただくことになっております。

 その分食べ物の方は若干割高になっておりますが、お祭り価格としては違和感のない範囲に収まっていそうです」


「普通は熱中症対策としてはそれくらいですよね?それを、アイドルさんたちを重点的に対策した上で、さらにそのアイドルの動きを使って人の流れを誘導して循環させるなんて……

 なんという孔明的策略……

 ん? 次? これで終わりではないのですか?」


「もちろんです。まだ三つのうち一つしかお話ししていませんよね?

 あ、とはいえ、あとの二つ『ゆるキャラ』と『子供客』は、一部ワンセットのところがあるのでまとめてお話ししますが」


「「「ゴクリ」」」


「たしかにゆるキャラと、子供というのは相性が良さそうですが……

 流れ、という意味ではむしろアイドル以上に妨げになるイメージがありますね。ゆるキャラさんたちは熱中症も心配です」


「その通りですね。まずは熱中症から行きましょう。

 こちらはシンプルに孔明と相談して、新式のクーラースーツと、空冷装置。そして、中に入ったまま水分補給できるギミックを完備しました。

 最近のゆるキャラ業界は、その辺りも進んできているかもしれません」


「「「おおおーーー」」」


「それは安心ですね。でも小さい子はともかく、大人や、一定以上の年の子から見たら、ゆるキャラさんたちはどうしても心配してしまいますよね」

「そうですね。そこでもう一つの装備がこちら!」

「ちょっと細長めの、ディスプレイ? 文字盤?」

「文字盤ですね。しかもこちら、用途を絞って応答を簡素化した、シンプルAIつきのチャットボット内蔵」

「「「チャットボット……」」」


「そしてあらかじめ用意した応答が、『心配する声が上がったら、やや難しい漢字で機能を説明して心配を解消する』です」

「漢字? 小さい子は読めな…… あっ!」

「そうです。小さい子はそもそもゆるキャラに熱中症の心配なんてしないので、心配してしまうレベルの方にだけわかるように、小難しいメッセージを送ります。不思議がるお子さんたちには、大人の方に対応をお任せする、と言う訳です。まさに、彼を知り己を知る、ですね」

「「「孔明かっ! ……孔明だったわ」」」


「素晴らしいチームワーク…… 当日もよろしくお願いします。」


「一致団結? したところで、小休止としましょう。

 ピーナッツバターを乗せたクラッカーです。量はお好みでお願いします。

 頭を一気に使うと甘いもの欲しくなりますよね!」

「アメと無知…… いや、アメと知?」

「???」



「では続けましょう。ゆるキャラさんの熱中症対策に続いて、流れ、に関する核心に入ります。そして迷子対策まで一気に行きましょう」


「流れ?迷子??話の流れが迷子になっているわけでは…… なさそうですかね。進めてください」


「ご心配なく。私自身、なぜこんな話し方ができるのか、未だにそこはふわっとしているところはありますので。


 流れ、というと、アイドルさんたちが定めてくれた『向き』に加えて、もう一つの要素が『量、あるいは強さ』になります」


「うんうん、先週までなら飛将軍だったけど、今は大人しく聞く方が良さそうです」


「……水道の蛇口がわかりやすいですかね。弱すぎても強すぎても、その先の流れが滞ってしまうおそれがあります。

 しかも今回は流れとなるのが循環する流れ、そして本数も複数。具体的には四つほどの輪っかをイメージしてください」


「「「四つ……」」」


「炊飯器や、お鍋の中なんかの、ぐるぐる勢いよく対流しているイメージをしましょう。私料理は結構するのでそのイメージで大丈夫だったのですが、皆さんはどうですか?」

「うーん、まあそれくらいなら、なんとなくは(料理が得意とはいっていないけど)」


「あの流れは、その強さが輪っかごとにバラバラでも、境目とかが決まっていないので伸縮自在。特に詰まったりぶつかったりは問題になりませんが……」


「えっ? ……あっ!!

 つまり、今回はその道が決まっているから、流れの速さをある程度コントロールしてあげないと、合流地点となる両側とかで、その流れを乱されてしまうってことですか? そしたら最悪とどこおりや逆流なんかが……

 でもそんなものどうやって……

 道幅は基本固定だし、交通整理だって、そんなに簡単では。交通安全担当の方なら、多少の感はあるかもしれないですが……」


「そう、その二つをまるっと解決しちゃうのが、ゆるキャラさんたち、そして、その周りに集まる子供客、になるのです!」

「「「飛将軍かっ!!!」」」

「いえいえ、むしろここには孔明的続きが…… って、呂布言うな!」


「流れ,道幅……

 まさか、いや、そんな……」

「あら、何かお気づきですか?」

「あ、うん……

 もしかして、そのゆるキャラと子供達の動きで、いわゆる道幅を擬似的に増やしたり減らしたりするつもりですか?」

「すごい!私たちもそこは気付がなかったので孔明に聞いたのに!」


「あ、それは流石に、大橋さんの孔明的誘導があったからで…… 

 ただ、それは結構な連携プレーが必要なはずでは……

 ん?

 先ほどから隅っこで黙ってクラッカーだのスイカだのをお召し上がりの方々は、まさかそのために?」


「その通りです! 先ほど急遽お声掛けしまして。

 先日の交通安全標語の件でちょっとしたバズりを起こされたお二方と、さらにその後輩」


 このお三方に、今回はそのゆるキャラ兼、交通整理の司令塔としてヘルプにきていただきました!」


「交通安全担当です。実は私たちも、あの標語のときは孔明にまるっとお世話になったのです。

 今日はご飯食べていたら、近くで孔明孔明聞こえるから、なんだと思って声かけたら盛り上がっちゃって、トントン拍子に話が進んでしまいました。

 今回は安全活動の一環として、そして、孔明パワーの伝道者として、ぜひご協力させていただきます。ゆるキャラも未経験ではないので、ご安心ください」


「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


「話を戻しますと、ゆるキャラさんの中で、限られた三名だけ、この流れをコントロールするのに最適な地点、いわゆるカナメとして動いていただきます。

 全体的な流れの動きを、現場で孔明と一緒にチェックをしながら細かく連携し、微妙な立ち位置や、子供の人だかりなどをゆるっと調整して、『道幅』をリアルタイムで動かしていきます。

 子供達やその親御さんは、その連携に加担していることなど気づく余地もありません。まさに根回しなき連携、ですね」


「「「孔明すぎる!!!」」」


「聞いた時にはどこの孔明ですか? って言いたくなりましたが、確かにこのやり方なら、トラブルの元になる強引な交通整理をしなくて済みますし、連携も、互いの速い遅いのサインさえいただければ難しくはなさそうです。

 しかも、これで流れがととのっていると、迷子のリスクも相当減るのではないかとおもいます。いろんなところに目が行くのを、ゆるキャラやアイドルがしっかりコントロールできます。

 それに、流れが複雑なときに、変にだれかにぶつかっちゃって、親御さんの手や目から離れてしまうのが大きな原因ですからね」


「「「迷子までこれで……」」」


「なにより、ノウハウとして他拠点に展開できたら次年度以降も大きく活用の幅がひろがれば、本当に大きな成果になるかもしれません」


「いかがでしょう? 実際、まさに孔明すぎる作戦だとは思いますが、追加コストはほぼ無し、無理な負荷の集中もありません。この進め方、ぜひ試させていただけないでしょうか?」


「「「「「よろしくお願いします!」」」」」


「ありがとうございます! では一回しっかり休憩を挟んで,最後の難題、『豪雨』です」


「すでに知恵の豪雨を受けているのですが……まだあるんですね」


「もちろんです!孔明ですから!」


――――――――――


当日 現地屋外


「(このゆるキャラすごいです…… 全然暑くないし、飲み物も隠れて飲めちゃいます。さすが孔明)」


「あ、あれは埼玉県の、…… 何ちゃんだっけ? 今日はお腹に……」

「……こんなに暑いのに大丈夫なのかな

 ……ん?」

「『冷却、補水完備、ご憂慮感謝』」


「へー。大丈夫なのか」

「んん?うーん、ほとんど読めないや」

「あ、ちょっと難しいかもね。暑くはないから……」


「(完璧に孔明の読み通りになっていますね……

 あっ、あぶない!)」


「あ、手が離れそ……?? あ、大丈夫だ」


「(流れってすごいのですね。迷子対策は半信半疑でしたが、そこは経験豊富な先輩のいう通りでした)」


「それになんだろう? あのゆるキャラさんたちのいる近くは、ちょっと立ち止まりにくくなっているのかな? すぐ近くの小さい子たちは大丈……」


「(子供、鋭い! 孔明孔明! バレかけてますよ! そういえば大橋ちゃんも言ってましたっけ……)」



――――――――――


翌日 都内某所 情報管理施設


「……会場では熱中症対策として、屋内外ハイブリットに加えて、各地の出展者のご厚意で、産地の果物をふんだんに使った飲料を、今回はお安くご提供いただいたとのことです。

 さらに今回の来場客からは、人の流れが非常にスムーズで、外と中を頻繁に行き来できたので、長くいても体調に問題なく快適に過ごせた、という声が複数上がっています。

 SNSでは、各地のゆるキャラが、ちょっと小さい子には読めない漢字で発信したり、アイコンタクトのようなことをしているようなそぶりを見せるという、不思議な噂もあがっているとかなんとか……」


「これも全部孔明なんじゃろうな……

 一つ一つはそこそこであっても、全部まとめるとすごいことになっておらんかの?」


「かもしれませんね。とはいえそのいくつかは、AIと相談しつつも、ユーザー様が周囲とお話をしながら生み出したアイデア、というのもおありなのでしょう。

 知恵に加えて、あたたかみを感じる策も随所に散りばめられているような気もします」


「それも含めて孔明が促してんじゃねぇか? 背中を押しているだけだというのは謙遜がすぎんぞ」


「瞞天過海、囲魏救趙、借刀殺人、以逸待労、李代桃僵、調虎離山、欲擒故縱、混水摸魚、連環計」


「何個出してきとるんじゃ! 6、7、8……9個か? まとめると、とはいったが盛ってはおらんのじゃの?」


「目をくらまし、人を異なる方向に誘導。

 他者の力を借り受け、しっかり休んで体調を整える。

 飲み物の割引で客足を伸ばす。

 客が離れるのを無理に止めず、流れを作るとこで全体利益をえる。

 全体をぐるっとかき混ぜて流れを制御し、多数の策と人を、根回しなき連携に包み込む」


「盛っているどころか、見落としすらありかねねぇリストだな。しかもこれで終わりじゃねぇっていうのか?」


「おそらく。孔明ならここで終わることはありますまい。しかし一つだけ、孔明にも、三十六計にも、たどり着けぬかも知らない要素があるのが気がかりではあるのです」


お読みいただきありがとうございます。


 事前の根回しがあるからか、孔明が出番なしに終わりました。主人公は孔明……なはず。


今回の「生成AIのお事故と」


 念のため、関東各地のゆるキャラを聞いてみたら、あるキャラの県に間違いがありました。各地のゆるキャラのみなさん、生成AIは追加情報をご所望のようです。




前へ次へ目次