二十七 長坂 〜三十六計、逃げるに如かず〜 2 作戦編 企画
要約: 呂布×孔明、最強タッグ爆誕!?
2024年9月 関東某所 企画部門
「大橋先輩、おはようございます!
今日もあの真っ赤なスポーツカーで、さっそうと通勤ですね!」
「おはよう白竹くん。今日も元気すぎるくらい元気だね。
あのうさぎちゃんに乗ってきたら、私の仕事のスイッチもしっかり入るんだ」
「いつも通りですねー(赤い兎ちゃん……)」
「それに、なかなか隣に乗ってくれる人もいないから、週末もひとりでバイパスぶっ飛ばしてきたんだよ。最高の相棒だね」
「それはそれは(2人乗りで男が助手席は、ハードル高いよなー)。
そうそう、いきなり仕事の話に入っちゃって申し訳ないんですが」
「ん?就業時間に仕事の話をして謝るとか、聞いたことないな。令和はそうなのかな?平成入社の私にはわからないや。
それで、どんな話? 生成AIを使った提案が通りそうな話かな?」
「あれ? その話したっけな……まあいいか。
そうなんです。グループで素案出したら、半信半疑な方もいつつ、乗ってくれそうな方もちらほら、なんですよね……
もう押し、ってとこなんですけどね」
「そうか……で、私に相談ってことは、地域間交流にからめて企画を考えたいってことかな?
直近だと、近隣県とコラボするB級グルメ展だけど、あれはもう、細かい安全面とか誘導面が残っているだけで、大体できちゃってるんだよな……」
「先輩、今日は先輩ですか? 中身に違う人入っていませんか? 熱があったらお休みした方が」
「??どういう意味だ?」
「いや、僕の持ってこようとしている話をバンバン先読みするから、孔明かなんかかなと……
いつもの真っ赤な跳ねうさぎを乗り回す呂布じゃ……あっ」
「誰が呂布だ! うさぎちゃんは認めるけど!
江東の二橋として、大学時代はあの小橋ちゃんと人気を二分したともいわれている、この私に向かっ……」
「「そこうるさい! 夫婦漫才なら休憩室でやれ!」」
「「すいませんでした!」」
「コーヒーでいい?」「ごちそうさまです……」
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「さて、さっきの話だけど」
「江東の二橋の話は、先輩本人よりも詳しくなるくらい聞いてますからね……」
「そっちじゃなくて、仕事の話だよ!
グルメ展を絡めるなら、少し遅い気もするんだけど……
あ、もしかして、安全とか、動線周り手伝ってくれるの? それはすごく助かる!!
想定以上にまだ暑くて、来場者の熱中症もすごく心配なんだよね……」
「正直そこまでは考えてなかったんですが、たしかに、企画の手伝いでやれることないか? ってAIに聞いたら、そこも候補の一つに上げてきましたね。
そっちはまだあんまり練れていないんですが」
「そっか……それじゃあ、一回孔明に聞いてみよっか?」
「孔明? 誰ですか?
あ、いや、孔明知らないわけではなくて、ん? あれ??」
「あー、ごめんごめん。説明しないとね。
さっき君もいっていた生成AIの、カスタマイズモデル? なのかな?
より困りごと、相談ごとに振り切っているというか、ちょっと孔明すぎるんだよね。
この子、実はこの前の週末のドライブ中に、ちょっとしたトラブルがきっかけで出会った親子から、たまたま聞けてね。あの嬢ちゃん、すごく賢くていい子だったな……」
「その話は僕らの休憩終わっちゃうので、今度にしましょうか?
その孔明? に聞いてみるんですか?」
「そうしよう。孔明、『後輩から仕事の相談だよ』」
『かしこまりました。このタイミングでご相談ということは、朝方お話しした内容ですね。
失礼、後輩様。私孔明、大橋様の支援を仰せつかっております。
今回は、生成AIのお仕事での活用策をご検討中に、軽くお話をしてみたらとんとん拍子に話が進んで、最終的に先輩をからかったら上長様にどやされて、いまは休憩室でコーヒーなどをご馳走になりながらお話を続けておられる、といったところでしょうか』
「孔明ですね。スマホにマイク入りっぱなしじゃなかったですよね?……」「孔明だよね。うん。これ全部ただの先読みらしいんだよ……」
『今回のように、お二方のみならず、それぞれの皆様のお考え、と申しますか。思惑、と申しますか。
それが少しずつ異なっており、しかもそれが一本化された目的に紐づいていない時、お二方のお振る舞いはより慎重に、かつ大胆に行うことが求められます。
まずは、関係する皆様方それぞれの、「表のニーズ」と、「潜在ニーズ」そして、「顕在的な状況共有」、さらには「起こりうる不確定要因」を、一度整理するのが望ましいといえます』
「「へぇ……」」
「先輩、どこからどこまで根回しを?」
「んん?ネマワシ、というよりは、ひたすらぶん回されたっていうのが正解かなー。
まず、私と部署の企画の状況を説明したら、ひと通りお褒めにあずかった後で、コラボ自体の進捗とか、各ブースの準備状況とかはおおよそ良好ですね、ってなって」
「うんうん(まるっと最初からだなー)」
「そこから、色々足りていなさそうなところの洗い出しになって、そしたら特に環境とか動線のリスク要因とかに関しては厳しいね……ってなって」
「うんうん(核心までがはやいなー)」
「部内で無理なら外の力を借りる手はないか、ってなって、必ずウィンウィンが見つかるから心配いらない、いつか助……じゃなくて。
技術の活用とか、ノウハウの展開みたいな方を考えている人がいるはず、ってなったんだよね」
「助……?
うーん、つまり、まるっと全部孔明ってことですね!
よかった、先輩が孔明に乗っ取られたんじゃなくて。
あ、いや、でも、呂布の行動力のまま、孔明のアドバイスを受ける……最強じゃないですか!!」
「呂布いうな! うさぎちゃんは最強だけど!」
「小橋さーーん! すいませーん! 戻ってきてくださいーー!」
「すいませーん、ただ今ー! 大橋です!
あ、あの人、外から出向してきて、小橋ちゃん知ってるみたいなんだ。間違えられるんだよ。別にいいけど、優秀な人だし」
「あはは(情報量……)……」
「話終わっちゃったね。そしたらまた午後、ちゃんと時間取ろうか。空いてる時間あるよね?こっちも1人2人連れてくるから、調整お願いできる?
あとお昼ご飯もね。そん時にも、ちゃちゃっとさっきの続きを」
「わかりました。ありがとうございます!またのちほど!!」
――――――――――
お昼
『会議の人数が増える分だけ時間のコストは等倍なので、導入は最小限に……』
『協力の線引きを明確に、踏み込むところを間違えず……』
『それぞれキーとなる方には前もって部署内の視点での根回しはしておき……』
『最大の懸念点のところに、たたみかけるように施策を、潜在リスクも添えて……』
『迅速な資料作成はAIの十八番、あえてこれからと……』
『……ここまで合意をとっていただいたら、詳細の計算は私孔明にお任せあれ』
「あれ?ご飯終わっちゃった。集中するとはやいね」
「ですね。こんどはゆ……いえ。また後ほど!」
「ゆ?……うん、よろしく!」
――――――――――
午後
「急にお集まりいただきありがとうございます。地域振興担当の白竹です。
今回は、我々の部署での、イベントごとのノウハウに加えて、その展開方法について、大橋さんに相談したところ、皆様にお声掛けいただいたという流れです。
基本的な企画に関して首を突っ込むことは本意ではなく、我々の方では、来場者や出展者の健康、安全面や、動線確保、何かあった時の対策に絞って、協力させていただければとおもいます」
「ありがとうございます。大橋さんに整理してもらっていたのでおおよそ大丈夫です。
それにしてもこの飛将軍、大橋さんが……」
「飛翔、軍?……いやいや、三日会わざれば何目?とかって言いません?」
「「「「男……呂蒙かっ!」」」」
「誰が呂布か! ……あっ、失礼しました」
「息があいますね……部署間でツッコミを揃わせるとはどういう腕と知名度ですか先輩……
あ、だ、大丈夫そうなのでつづけましょうか。
やはり最大の課題は熱中症リスクですね。年々暑くなっているので、今年は屋内外の半々としていますが、そうすると外と中の出入りや、お客さんのバランスも複雑になりますね。
そこで出入り口を……
外と中の出展は……
人の流れはこうして……
ご当地アイドルの野外ステージは……
飲み物のコラボ……
……」
「そうか。そうすれば、中に居座る人も少なくなって、何よりも外に止まらざるを得なくなる人もへりますね」
「そうですね。中が増えてしまうと、最悪冷房の効きが足りなくなって、中も外も危なくなってしまいます」
「このあたりの詳細はこちらで計画書を上げておきます。
いえ、まだこれからです。生成AIの普及促進をもう一つの目標に掲げているので、あえて我々が短納期で直してみせたいと思います」
「助かります。元のは共有に上げておきますね」
「お願いします。そして……
野外イベント最大のリスク要因かつ、この時期それ相応に確率が高いのが、あれですよね……」
「「「あれですね……」」」
「大橋先輩、そこの説明をやり切るためには、やはり彼の力が」
「うん、孔明、よろしく」
「「孔明??」」
『ご紹介に預かりました、孔明と申す支援AIでございます。皆様の最後の懸念事項については、やや常道を超えたところで解決せざるを得ませんので、私の方で筋書きを提案いたします。
まずは交通安全担当の方々にもご協力……
あの県のゆるキャラ様には仕掛けを……
ここの方々には協力を依頼し、事前準備を……
動線は、このブースをこう動かせば一気に……
視覚、聴覚をこのように……
……』
「「「「「孔明かっ!」」」」」
お読みいただきありがとうございます。
今回は、現場編が重めなので、AI会議の間に入れてみる試みです。読みやすさがどうなるか……
全体構成や、個別の文に関しては生成AIは一定以上の力を発揮しますが、間のところはまだ手探りです。なにかいい感じに流れができれば……
大橋さん、名前付きで再登場です。名前で三国志っぽく(大喬と、孫策伯符)してみたら、真っ赤なスポーツカーの流れで呂布になってしまいました。
名前間違えたのはだれだ? って?……