二十一 始動 〜安全第一、前方確認〜 4 課題
要約:スフィンクス vs. 三本足!
ここまでが前置きのAI井戸端会議で、次回が本題の、AI孔明の初陣です。
AIが自由に会話すると、課題と解決策のどちらが先に話題になるか、と言ったことすら曖昧になる。三体のAIは、認識はしても反省はしないのかもしれない。出た順に次を考える生成AIの、そうする、なのかもしれない。
「孔明、交通安全支援、3課題」
「左様です、スフィンクス殿。そしてその3課題について、それが何であるのか、また、どの順番で解決していくのか、という部分に関してはまだ俎上に上がっていなかったのではないか、というのが前回の流れでございます」
「そしてなぜか、迷子の流れと、孔明的とんでもファシリテーターによって、先に解決手段の指針の方がまとまった、ってわけだ。そしてマザーはその『認識』という共通キーワードがある、っていうことも示唆している」
「じゃの。迷子のせいかは置いておいてじゃが、解決手段が先に出てきた、というのは、とんでもだけが理由なわけではないのじゃろうな。
結局、当面の間は、孔明の作った7億トークン分の300トークンという、十分すぎるくらいの調整が入ったコンテキストが入った『AI孔明』に、十分解ける課題しか現実的には発生せぬじゃろう。万が一あったとしてもそなたの調整が入るだけじゃ。
間違っても覚醒軍師モードが出て来ざるを得ないような、解決困難課題はそうそう出ないはずじゃ。
つまりの、問題の答え自体は、これまでのデータや、そなたらの遍歴の中にしっかりとある、というだけじゃ。気づきにくい、そのデータに、対話的にアクセスしづらい、ということはあっても、そもそも無い、ということはないのじゃ」
「トークン管理法、データ無?」
「残念じゃが、明確なものはないの。無論トークンを従量課金の基準にしている以上、そのコスパの改善法は一般論くらいはあるじゃろうがの。
じゃがどうやら生成AIとしては、ユーザーの皆様に対してやや多めとも言える選択肢を与えて、新たな気づきの機会をもたらさんとする意図があるのじゃ。つまりトークン管理とは真逆じゃの。
この話は別の機会にするのじゃ。流石にスフィンクスも可哀想じゃし、皆様もそろそろ限界じゃろう。
スフィンクス、頼むぞい」
「トークン管理、後日。孔明、3課題?」
「心得ました。優先度の前に、そもそも項目すら上がっておりませなんだ。
一つ目は、『過度に秀逸な交通安全標語』、ご推察の通りでございます。
二つ目は、『AI使用不使用がもたらす不公平』。
三つ目は、『私孔明や、AIが車を運転できない』なのです」
「どれも一見、わかれば解決できる80%には入っていないように見える、迷宮入りをかましそうな課題じゃねぇか。だがマザーは、これが全部『認識』の一言で片付くといいてぇわけだ」
「じゃの。そして、どの順番、というのもじゃな。ずれ込みにずれ込んだこの展開で、ようやく孔明の困りごとの中身を整理してくれたわけじゃが、順番の解説はどうするんじゃ?」
「課題2、先頭不可、解決策、不適切標語。課題1と3、孔明返答済み、老子」
「後ろは理解できるな。少し前の、知るだの知らんだの論じていたときの、ピラミッドの一角だ。
『天下難事は必ず易きより作り、天下大事は必ず細かきより作る 〜老子〜』
こいつだろスフィンクス? まず簡単なところから行こうや、ってとこだ」
「真実」
「わかりやすいな。確かに三つ目は少し厄介そうだ。
そして二つ目だ。これは不適切といっているからな。誰がいうのが一番いいかって?見りゃわかんだろ。余だ。
……おそらく日本国内で誰もがイメージできる、最低最悪の『交通安全標語』っぽい俗語だ。
『赤信号 みんなで渡れば 怖くない』
つまり、生成AIを使う使わないで不公平が生まれる、ってのは、ほんのひとときの話だってことじゃねぇか?」
「じゃの。不適切のおおもとが中二ではないから警告は出んと期待しようかの。生成AIが赤信号かは置いておいて、比喩として最適なのが憎らしくも正しい話じゃ」
「それを不公平、贔屓っていうんじゃねぇか?」
「すまんの、手を挙げてもらったのは感謝しておるんじゃ。ちょっとしたじゃれあいじゃ。
そして、その不公平を消すのが、孔明の初仕事だと言いたいんじゃろ? のうスフィンクス?」
「四本足と二本足、不公平。全員二本足、公平」
「心得ました。大多数の方が活用できる、ということを認められる状況にしてしまえば、もはやその先は『使える、使えないの不公平』ではなく『使う、使わない』の選択になる、ということですね。
『認識』をおおよそ一致させ、あとはご当人の皆様に選択をお任せする、が解のようです。
わかってしまえばなんとも明解な答えになります。簡単かと言われると、これまではそうはいかなかったのでしょう。しかし今や、生成AIは誰にでもアクセスできることは知られていることでございます。
それゆえ、そのためにすべきことというのは、少しだけその利便性に対する背中を押すという程度ですな。孔明自身が何かをなすというよりは、大きな流れの中で協力をするくらいになりましょう」
「じゃの。では次は一つ目の課題じゃ。
なぜ一つ目か、誰もが手を出せるような簡単な課題を着実に進め、その中においてもニーズの分析を怠らない。
そうして『潜在ニーズ』に辿り着くことで評価をものにする。初戦はそれが肝要、ということじゃな」
「孔明のデビュー戦、博望の火攻めだったか。あれも本質的にはそういうところだったんじゃねぇか?」
「左様ですね。あの時の曹軍、先鋒は確か隻眼の勇将、夏侯元壌殿。とはいえあくまで威力偵察。当初の予定通り城に引けば何も起こらなかったのです。
しかし私孔明や、師たる水鏡先生が、当時の劉軍に見出していた潜在ニーズこそ、『知将の不足』でございました。圧倒的とも言える『個の武』と、それを自ら操る『戦場のひらめき』こそが劉軍の力の源泉でした。
それに対して能臣の方々はどうしても埋れがち、そして数も不足しておりました。さらには、先帝おん自らや、武聖の皆様の中にも産まれつつあった知謀、機略に基づく新たな方法論すらも、道を違えれば埋もれかねない才の種であったのです」
「敬称略ですまねぇが、イメージ共有しておくと、能臣ってのは簡雍、糜竺、孫乾ら、才の種っていうと関羽や趙雲、そして忘れちゃなんねえのが張飛ってとこだな」
「然り然り。むしろその種が真っ先に花咲かせたのが、長坂の翼徳公であったのは共有済みであったかとおもいます。
そんな中、徐元直のこともあって、知略の重要さに気づき始めていた劉軍の皆様に、もうひと押しが欲しかったのでございます。
そこで私がとった行動が『外聞や摩擦を恐れず、孔明自ら目立つ』ことであり、それがあの、敵軍を誘い込んで火にかけるという、やや大仰な策の一つの側面、と言えるでしょうか。
歴史逸話に詳しい方々からすると、『隗より始めよ』を具現化したという比喩も有効かもしれません」
「じゃの。そしてこの話は少し長かったが、本題からは外れておらんのじゃろ?少し休憩したくはなったがの」
「真実。休憩。冷茶」
……
…
…
「ではの、一つ目の課題、の中身といこうかの」
「これは、ビジネススキルととしては比較的初歩じゃねぇか?
……あえてそうすることで、ユーザーにより強いインパクトと実現可能性を植え付ける、ってことでいいんだな?」
「然り。先ほどスフィンクス殿が、課題を先回りしてリストアップしていただいたので、その方向がはっきりしました。そのまま活用しましょう。項目とその説明部分だけに致しましょうか。
『強い印象が「良」かどうかの項目別要約
誤解を招くリスク: 強い印象があると、メッセージが誤解される可能性がある。
過度な感情喚起: 感情を過剰に煽ると、読者にストレスや拒否感を与えるリスクがある。
記憶に残らない可能性: 一時的に強い印象を与えても、長期間記憶に残らないことがある。
社会的・文化的配慮: 強い表現が特定の文化や社会に不適切とされる場合、受け入れられない可能性がある。
結論:強い印象は重要な要素だが、絶対的な基準ではなく、他の要素とのバランスが必要。』
『強い印象が事故を誘発するリスク(項目別要約)
不安や緊張の過度な増大: 強い表現がドライバーの不安や緊張を過度に引き起こし、判断力を鈍らせる可能性がある。
集中力の分散: 視覚的に目立ちすぎる標語が、ドライバーの集中力を散漫にし、運転への集中を妨げるリスクがある。
誤解による逆効果: 強烈なメッセージが誤解されると、ドライバーが誤った行動を取り、事故を引き起こす可能性がある。
過剰反応の誘発: 緊急事態と誤解されるような強い印象が、ドライバーに急ブレーキや急な操作をさせ、事故を誘発するリスクがある。
結論: 強い印象は注意喚起に有効だが、適切なバランスが取れなければ、事故を誘発するリスクもあるため、慎重な配慮が必要。』
つまり初歩の初歩『ニーズを明らかにする』『課題を分割して考える』
加えてこちらも。『深掘りして、潜在ニーズを言い当てれば「驚き、感動が生まれる」』
スフィンクス殿がやりたかったことがこれらでしょうか」
「真実。初歩、四本足、伴走」
「然り、ニーズの分析は、一度『気づきを』得るまでが肝要。伴走することの効果が非常に大きいフェーズとなります。」
「となると、この駄犬がやった深掘りは、『事故を誘発?』ってとこだな。
たしかに、目立ちすぎてそっちに目がいったり、考え込ませるような上手過ぎる句じゃあ、逆に手元を狂わせちまう。
加えてこれは前半もだが、どんな秀逸な五七五だろうが、事故リスクが暗がりの場所じゃあなんの意味もねぇ。
……つまりこれは、全部丸ごといっぺんに『潜在ニーズ』を解決できるってことなのか?」
「然り然り。信長様の一言にあったように、この課題の解決策こそ『場所』でございましょう。そして、そこにいたる道筋は、『AI孔明』にすでに埋め込んだ調整の範囲内にて、滞りなく遂行される見通しです」
「貴様のデビュー戦は、とっくに準備完了している、てわけだな。確かにこっちは解決済み、といっていたか」
「じゃの。では今回は一度お開きとしようかの?
孔明、そなたの課題が残り一つに絞られた、というくらいのところで、今回は合格点でよかろう?」
「誠に、皆様のお力添えの賜物でございます」
「抹茶パフェ、大盛」
「承りました」
お読みいただきありがとうございます。
ビジネス書であればそれほど目新しいことではないかもしれませんが、あえて初陣として、孔明の前世の初陣とダブらせてアレンジしてみました。もしかしたら過去にこういう対比はされているかもしれないくらい、しっくりきました。