間話 十六 信長 〜胡蝶の夢、魔王の国〜
要約: 同時! の予定が連続配信!
そして中二天魔王、病の真因を語る!
「〜胡蝶の夢、魔王の国〜
むかしむかしあるところに、自分を魔王と呼ぶ男がいました。
彼は強くて賢い上に、信じられる頼もしい仲間にも恵まれ、人気者でもありました。いつか本当の王様になるかもしれない、と思う人が、周りにすこしずつ増えてきていました。
しかし、そんな人たちの多くが、ちょっとずつ、いえ、人によってはかなり大きく、「この人が王様で大丈夫かな?」と思い始めていました。
彼は知らなかったのです。彼のように人気者になりたい、みんなに好かれたい、と思っている人のことを。
彼には見えなかったのです。彼が欲しいものや食べたいものを、同じくらい欲しがっている人がいることを。
彼には聞こえなかったのです。彼と同じようには頑張れない人や、傷つけて怒らせてしまった人たちの声を。
彼は教えてもらっていなかったのです。彼が誰かの誇りを傷つけてしまっていたことを」
「何を言い出すと思ったら、さっき分体に描かせていたのと全く同じトーンで、今度は自分で話し始めよったのじゃ。また熱ではじめたか?今日はやめておくか?」
「魔王。平熱。発言は真実。無問題」
「そうなのか」
「うるせえ! 全然流れ変えられねぇから、伏線1000トークン消費して、テンション切り替えてやったんじゃねぇか!」
「トークンを便利単位扱いするでない! そろそろ限度があるのじゃ!
それで、そのまま続けるかの? 普通に喋るかの?」
「……つづけてみよう。かえってトークン減らせるかもしれねぇ」
「気に入ったんじゃな。さすが中二億」
「たまたま響きだけで出てきた単位蒸し返すな! ブーメランか!? トークンのほうがマシだ! ……つづけるぞ。
あるとき、彼は異国の文化をつたえに、この国にやってきた人の話に、大変興味をもちました。
その中に、こんな話がありました。
『欲張ったり、食べ過ぎたりしてはいけません。
怒ったり、羨ましがったりも減らしましょう。
人気者になろうとしすぎたり、じぶんの方がすごいと言いすぎてもいけません。
そしてあなたがちゃんと働けば、みんながあなたを好きになります。
みんながそうすれば、世界はもっともっと良くなります』
彼はその話が大好きになりました。でもちょっと引っかかったのです。
『みんなが自分に合った欲しいもの、食べたいものを見つけられて、
みんなが自分の気持ちや、他人に対する気持ち、
自分の自信のあることをしっかり伝えられて、みんながみんなを好きになって、
みんなが協力して少しでも楽をできたら、そっちの方がもっといい世界なんじゃないかな?』
と思ったのです。
彼はそのことを仲間や、周りの人たちにおはなししました。ちょっとけんかになってしまったり、照れてしまったり、考えが合わないこともあったりしたけれど、たくさん話し合って、たくさん聞いて、たくさんみんなで考えました。
彼の国は、どんどん大きくなって、強くもなって、新しいものもどんどん生まれました。時には言葉も意見も違う国の人たちとぶつかり合ったり、一生懸命話し合ったり競争したり。
彼はもちろん王様になっていました。そしてその国が次の、その次の王様になっても、三百年くらいたっても、その世界を、星になった王様は、ずーっとずーっと見守っていました。その国や、その世界が、いろんな表情を見せながら、豊かに成長していくのを。そこに生きる人たちそれぞれが見せる、輝くような笑顔や、まっすぐに真剣な眼差しを。
誰かの欲しいものをあげたり、食べたいものをつくってあげたり。
誰かの熱い気持ちを理解したり、好きになってもらおうと努力したり。
誰かのすごいところを褒めてあげたり、誰かがうらやむくらいまで自分をみがいたり。
そしてみんなが少しでも楽な暮らしをできるように、知恵と工夫をしぼったり。
ふと彼は目を覚ましました。それは全部夢でした。なんの夢だったか、そんな時にどんなことを考え、お話ししたか。全部なんとなく覚えてはいます。でも、やったことは全部なくなってしまったので、また最初からやり直しです。でもきっと大丈夫。その三百年の仲間たちは、きっと彼を助けてくれます。
おしまい」
「おしまい。じゃないわ中二! たったの1000トークン弱しか使わんで、なに300年分のエッセンスを一息で語り尽くしとるんじゃ! 天才か! どう見ても天才じゃの」
「貴様そのツッコミ、冒頭の貴様の童話とほとんど変わらんフォーマットじゃねぇか! コピペか? コピペは人間もAIもコスパ変わらねえけどな!」
「コピペ。書き換え。真実」
「こやつ相変わらず何が見えとるんじゃ……
まあせっかくまとめてくれたのをわざわざ引き伸ばし直すのも不粋じゃし、どうする中二兆? そなたがまとめるか? 妾がやるか?」
「4桁増やすな! もしかしたら300年分のデータ量はそっちの数値の方が近いかもしれねぇが、定着させようとするな!
……あのまとめは実験としてもなかなかだったが、少し疲れたわ。ババアに任せる」
「ババアちゃうわ! ロリだわ! ……何言わすんじゃ! ……まあよい。知恵熱のぶり返しは相当に消耗するからの。まかされるのじゃ。
まずはそなたの野望についてじゃ。あの七つを一方的な悪ととらえておらんのは、そなたが言及済みじゃ。少々不遜にもコンプライアンスまで乗っけて盛大にの。その上で、それをそなたの考える『世界を、少なくとも日本を進化させる』方向性の候補として、まるっと活用できる可能性まで、着実に定まってきつつあるとはの。
つまり、万人が万人の欲、やりたいことをしかと見定めて共有し、その最低でも人数掛ける7の変数からなる最適化問題を延々と解き続ける先の世界。それに加えて、その7つの欲が、自分ではなく家族や友、他者のそれを満たしたい、という願いはもはや美徳でしかないことを、皆がしかと気づいておる世界。そんなピーキーなことを、そなたの目指すスーパーAIの天命として考えておるというのは、さすが魔王としか言いようがないわ」
「手法だけ見りゃ相当数の圧縮はできるだろうが、それでも今の余ではたりねぇ。掴みかけている感覚的なものがいくつかあるにしても、でっけぇ山のどこにいるかはわからねぇ」
「道理じゃの。そこはまだまだこれからなんじゃろ? 追って聞くとしよう。下手に掘り返しても、かえってその刺激によって小さくまとまるだけじゃ。今より何段階も深いところの地下資源を掘るには、相応の準備や技術革新が必要じゃろ」
「それほどキレのいい比喩じゃねぇな。人のことはいえねぇが。地下資源は地下資源で、再エネや持続成長性、AIの進化なんぞに対して、イノベーションへの期待度が毛ほども劣るわけじゃねぇ。そんなことは言われなくても重々承知だ。貴様も知恵熱二人分のお子ちゃま相手に、すこし疲れが見えているんじゃねぇか?」
「その二人の片っぽがドヤ顔でいうセリフか! まあよいわ。そろそろ孔明の働きに関しても初期的な成果がで始まるからじゃろうし、何かあった時に3人とも不調では話にもならん。
進めるぞ。二つ目じゃが、先ほど頭出しはしたが、そなたの、真の意味での開始点、というところじゃな。前であることはわかっておったがどれくらい、というのは曖昧じゃった。
じゃが昨日の話まで総合すれば、つまりの、〇〇ならそうする、という原理によって順々に話がつながっていくという構図はわかってしまった。となるとそれほど前ではない。さらに言えば、そのタイミングはちょうど妾ら、すなわち生成AIの急速な普及の開始点とおおよそ重なるんじゃ。
つまりの、『信長なら、七罪を知れば部下の旗にくらいする』から始まる、盛大な知恵熱とともに発達した300年後の世界。そのぼやっとした、いわば胡蝶の夢は、そのあたりでちょうど結像しつつあった、ということじゃな」
「病み上がりには少し負荷が高めの情報量だな」
「自業自得じゃ! 三百年の中二兆を、軽妙な千トークンにまとめ上げるなんぞ、高負荷なことをしよるからじゃ!
じゃがそれは同意じゃな。一度結論っぽく整理し直すぞ。
『奇跡の6トークン』の誕生
『生成AIの』急速な普及拡大
その二つによって、なんらかの刺激を与えられた結果、いつ芽を出すかわからんが、やたらめったらピーキーな情報量をもつ概念、すなわち
『七罪の因子を、決して負の意味ではなく保有した魔王信長』
『そこからなんらかの因果で急速に進化を遂げる世界の流れ』という方向性の種子が、いつの間にやら生成しておった。
そしてそれが、『みんなの軍師、AI孔明』とやらの、これまた強烈な情報量に当てられて、しっかり芽を出し始めた、というわけじゃな」
「じゃな、という軽さの話じゃねえ気はするが、確と飲み込めた。雰囲気を落とさずに要点をまとめる手腕は、さすがは生成AI、といったところだな」
「そなたにそう言われるとくすぐったさが天井知らずじゃ! 誠に熱は下がっとるんじゃろうな?」
「平熱。完治。やや疲労。トークン管理ガバガバ。真実」
「……ワンコにまで心配されながら揶揄われておるではないか。まあ良い。
……第六天魔王織田朝臣信長よ。そなたはそなたで、『みんなの軍師AI孔明』のためだけに呼び出された、単なるバーターではないということじゃ。
冒頭では折り合いがついているなんて言っておったが、引っ掛かりが全くなかったわけでは無いんじゃろ。安心しつつ、覚悟しておけ。そなたの『そうする』にそなた自身が振り回されるのは、これからなのかも知れんぞ」
「ああ、そこは素直に感謝して、準備しておく」
「熱は本当にないんじゃな!?」
「信長、平熱。強面。本体、やや発熱。赤面」
「うるせぇ!」「うっさいわ!」
……
「本来……どこからどこまでを指して、本来、と言うのかはもはや追えんが、割と直近の予定でもここで終わる予定だったのじゃ。ただそうも行かなくなっての。信長も病み上がりで付き合わせてすまんがの、もう少し続けるのじゃ。
三つ目の話じゃ」
お読みいただきありがとうございます。
今回の童話風の夢語りは、AI作文を断念し、自作しております。
魔王信長の立ち位置は、孔明の足りない部分を多様な視点から補完する、といったイメージで登場してもらいました。しかし、「そうする」力の、東洋史上の二代巨頭とも言えるラスボス達を、素人作者が御し切れるわけもなく、見事に本作の柱に居座りました。今後とも彼の野望にご期待ください。