3P吸血鬼な百合
闇ギルドのマスターと対面し、部屋を出るときには虚脱しきっていたグレイ。
そんな彼に多少の申し訳なさを感じたり感じなかったりしたリアだったが、そんな申し訳ない気持ちも宿に戻った時には、既に彼女の中から忘却の彼方へと旅立っていた。
この宿で一夜ならざる一朝を迎え、また夜に闇ギルドに向かう予定なのでこれから夕方までは就寝のお時間だ。
リアが思考に耽りながらアイリスとイチャイチャしていると部屋に1つだけある扉から控え目なノック音が鳴り響いた。
ベッドに腰かけていた主人であるアイリスが入室の許可を出すとワンテンポ遅れて扉が開き、彼女の侍女であるレーテが姿を見せる。
「ただいま戻りました」
レーテの言葉に返事を返す素振りを見せず、変わらず甘えた様子で体を預けてのんびりしたアイリスの様子に代わりにリアが返すことにする。
(この子達の関係ってかなりドライよね。 長年一緒だと言葉は要らないってやつかな?)
「ご苦労さま、その様子だと――」
「はい、店主の眷属化は滞りなく終わりました」
「そう、ありがとう。 それじゃあ、変に気づかれない限りはのんびりできそうね」
「・・・・・・」
しかし、レーテから何も返答がなかったことに何気なく彼女に視線を向ける。
そこには表情を動かさず微動だにしない、彫像と化してしまったレーテが居た。
「どうしたの?」
まるで信じられないものを見たかのような反応を見せるレーテに、思い至るのは隣にいるアイリスについてだけだったことから、隣の彼女のことについて考える。
(ん~、普段見せない主人の様子に驚いた? 主人の可愛さに目を疑ってる? ドレス姿でベッドに腰かけているから皺が気になる? あ、でもこの子達の関係って見た限りかなりはっきりとした主従関係みたいだし、それはないかなぁ)
思い至りそうなこと――半分以上、リアの感想だが――を1通り考えるも答えがわからなかったが、すぐにその答えはわかることとなる。
「っ、いえ、その・・・・見惚れておりました」
「え・・・・・。 あ、うん、ありがとう」
唐突な言葉、それもその反応からしてお世辞やおべっかではないことがわかるからこそ、素直に照れがでてしまう。
外見を褒められるのはリアルでもよくあったことからもう言われ慣れたと思っていた、が。
どうやらそれは自分の勘違いだったのかもしれない。
なんとなく恥ずかしくなったリアは何もない方へ目を向ける。
「夜明けね」
窓際を覆い隠すようにきっちりと閉められたカーテンから微かに漏れ出る陽光。
この後は特にやることもない為、後は夜まで寝るだけだ。
「っとその前に、寝る前に約束を果たして貰おうかしら」
リアの言葉に隣のアイリスの肩がビクッと跳ね、身体を石のように硬直させるとやがて、寄せるだけだった肩を預けるように倒してくる。
「はい、その・・・・お召し上がりください」
か細くもはっきりとした声で俯くアイリスの顔は赤色で染められており、そのモジモジした様子から照れているのだとわかると、リアの中で我慢という名のダムが決壊しかけるがまだ何とか踏みとどまる。
上位吸血鬼であるアイリスは200年ほどの時を生きたように言っていた。
いつからが吸血鬼としての生なのかはわからないが、それなりに長い年月やってれば数えきれない程の吸血を行い、誠に羨ましく腹立たしくはあるが、吸血されることも数回―――1回くらいはあっただろう。
そんな彼女が、上位吸血鬼であるアイリスが、まるで初夜を迎える乙女のようにモジモジとする様子はリアの理性を破壊するには十分すぎた。
「お口汚し、失礼いたします」
反対に彼女の侍女であるレーテは一瞬主人のアイリスに対して何の感情も見えない瞳を向け、何か言いたげな雰囲気に見えたが、こなれた様子で特に抵抗や照れなども無い、ただ淡々と侍女服の胸元ボタンを取り外し始めた。
(これはこれで、イイ! 淡々作業を終わらせるクールな印象があるレーテだけど、私がその態度を崩してみせるわ)
そもそも、約束というのはアイリスやレーテに装備をあげた時の条件である。
その内容は、装備を受け取る条件として定期的に血をいただくといったもの。
(ふふふ・・・・僅か数時間、でも正直十分すぎる我慢だったと思う。 もちろん、場所を選ばずすることもできたけど。 でも、どうせやるならたっぷりと味わいたいし、なによりムードも大事。 あぁ、想像しただけで喉に乾きが! なんだか牙も疼――かないけど、どちらかといえば下腹部の方が疼いてる気がする)
キングサイズのベッドに腰かけてたリアは靴をぞんざいに脱ぎ散らかし、四つん這いになってベッドの中央へと焦らずに、それでいていそいそと移動する。
「ふふっ、二人ともおいで」
手招きしては落ち着きがないと思われると手を差し伸ばすだけに留めるリア。
二人はベッドに上がるとアイリスは正座をした状態で膝から下を外側へと向けたいわゆるペタン座りとなっており、その隣でレーテは足を崩し横座りの姿勢をとっていた。
未だに照れた様子で微かに頬を染め真っすぐに目を合わせれないアイリス、反対に真っすぐに目を向けてきていつでも準備はできてると言わんばかりのレーテ。
左には紅眼銀髪の美少女お嬢様がペタン座りをしていて、右には赤眼黒髪の美人メイドがどこか大人の余裕のようなものを感じさせて横座りをしている。
(この光景を見て我慢できる者は人じゃない。 姉妹盛りならざる・・・・主従盛り、えへへぇ)
欲情と我慢の許容値が大幅に上回り彼女の中の内なるおっさんがちょろっ顔を覗かせるが、長年続けてきた鋼のような外面はそう簡単には崩れなかった。
「それじゃあアイリスはちょっと待っててね。 さぁ、レーテ、貴方の血からちょうだい」
レーテに手を伸ばし、その美しい顔を傷つけないよう触れる程度に頬を優しく撫でる。
すべすべとした感触にもちもちとした弾力、手触りの良さに思わず何度か擦ってしまうとレーテはゆっくりと瞼を閉じた。
「んっ」
「ふふ、くすぐったい?」
その全てを受け入れるような姿勢に嬉しくなったリア。
頬に添えていた手を頬から首、首から髪へと流していき、その手触りや手入れされた綺麗な肌や髪に内心で感嘆の声を上げる。
(きゃー! やばい、やばいよレーテ! なに、その感じてるのを我慢するような震えは! じゃあ今度は、これなんかどうかな? どうかな!?)
見慣れた筈の黒髪でありながらまるで別物のようにキラキラと輝きを放つそれを掬い上げると鼻に近づけ、微かに漂う甘い芳醇な香りを堪能する。
感謝の意味を込めて愛おしい彼女の黒髪を掬い、その一束にそっとキスを落とし――バレないよう舌でチロッと舐めたのは秘密――、いよいよメインディッシュと標的を変えた瞬間。
「っ、んっ・・・・ふぅ」
静かな部屋で、直ぐ隣から「なっ、ななな・・・・っ!」とアイリスが口遊む以外に物音がしなかった空間。 そこにレーテの声が思わずといった様子で、漏れ出たのをはっきりと耳にしたリア。
手元から顔を起こして音の出どころへ探す。
そこには、レーテが一目でわかるくらいには真っ白な肌をピンク色に染めており、落ち着きのない様子で視線を彷徨わせている姿を発見してしまうのだった。
(っ、その反応、堪らないわ!! え、え? なに、その反応。 それにこの匂い・・・・ふふっ、匂いだけで体が反応しちゃう。 それにレーテの目、あんなにうるうるさせちゃって)
純粋に反応を楽しんで行っていたが、彼女の反応から触発されリア自身が我慢できそうになかった。
髪を掬っていた手をレーテの首にあてがい、壊れ物を扱う以上に細心の注意を払って優しく引き寄せる。
「ふふっ、それじゃあそろそろいただくね」
「っ、・・・・はい」
反応を求めての確認ではなかったが、はじめより微かに感情の乗った返事で恥かしそうに返されたことによりもはやブレーキなど存在しなかった。
自身より身長が高いレーテは必然的に座高も高くなる。
そんな彼女の首元に顔を埋め、舌を這わせながら匂いを堪能していくリア。
「あぁ、いい香り。 れろっ」
「んっ、っ」
「気づいてる? くんくんっ。 貴方、今もの凄い香りを放ってるわよ」
彼女の体を全身で感じながら、片手間に仰々しい侍女服をはぎ取っていく。
侍女服の構造上、少し苦戦したが数秒もすればそこには乱れた白シャツとストッパーを外され、片側寄りに脱げかけた紺色スカート姿のあられもないレーテが出来上がっていた。
どうやら何をされていたのかは、嗅がれながらも把握していたらしい。
だが、もはや出会った時の彫像のような無表情の彼女はそこには居なかった。
頬を染め上げ、耳まで赤くした状態で瞳を潤わせながら躊躇いがちに口を開く。
「リア・・・・様。 その、少し恥ずかしいです」
「可愛いわ、レーテ。 夜の貴方も素敵だったけど、朝の今の貴方は別の意味で素敵ね」
思うがままに本音を口にすると傍目に頬を膨らませレーテを睨むようにして見ているアイリスが映り込む。
(あれ、待たせ過ぎちゃった? ふふ、可愛いなぁもうっ! 後でたっぷり可愛がってあげなきゃ!)
レーテを抱き寄せている腕とは別の腕でアイリスの頭を優しく撫でる。
すると徐々に口元の膨らみが萎んでいくのが傍目に確認できた、改めて目の前のレーテに集中することにする。
火照った身体をわかりやすく表すレーテの首元に舌を這わせ、十分に湿らせてから牙を立てる。
ずぶっとした感触がした直後、乾いたお腹に潤いと重みがズシリと感じられた。
「んっ」
「ちゅっ、・・・・ちゅぅぅっ、んっ」
(すっきりとした味わいに爽やかなコク、アイリスが甘い苺のような味ならレーテはさっぱりしつつも芳醇な香りとしつこすぎないマスカット味! これは病みつきになるわぁ)
吸血しすぎないよう、注意は払いつつも存分にその血を堪能するリア。
「ちゅぅ・・・・ぱっ、はぁはぁ・・・あはっ、美味しい~」
「っ、んっ、はぁ・・・はぁ・・・・っ、ふぅ」
屋内には二人の乱れた吐息と甘ったるい血の香りが充満し、数分も居れば酔ってしまうほどに熱気と妖艶な雰囲気に包まれている。
レーテは最中にピンっと手足を伸ばして腰を浮かせた状態でいたが、口が放されると同時にベッドへと身を投げ出し、息を荒げながらも脱力しきった状態で呼吸を整えることを専念していた。
「はぁ・・・はぁ、んっ。 それは、・・・・ようございっ、ました」
脱力しベッドに投げ出された彼女は力無くも恍惚とした表情で黒い瞳を真っすぐに向けてくる。
そんなレーテの献身的な態度に嬉しくなり、彼女には最高の絶頂を与えようと濃密な渾身の吸血を与えようと決心した。
「ええ、貴方の血はとても魅力的だわ。 だからっ――。 あー、はむっ」
「んんっ、・・・・はぁ、ああっ、・・・・んっ、リア、様」
1回目より深く牙を突き刺し、加減を加えながらも彼女の深い部分まで味わうよう喉を躍動的に何度も動かす。
一飲みする毎に漏れ出るよう嬌声を上げるレーテ。
「はぁはぁ、んっ、んっ、んっ」
「あっ、んぁっ・・・・ぁぁっ、・・・・ふぁっ」
吸血に悶えるレーテの体をがっしりと抱きこみ心の行くままに味わい尽くしていると、やがてレーテの動きが徐々に弱弱しくなっていくのを感じ慌てて牙を放す。
「あ、あら・・・・やり過ぎちゃった。 後で美味しいものあげないと・・・・、でもまあ、ご馳走様♪」
脱力しきった彼女をベッドに優しく乗せ、次なる美味に待ちきれなくなった笑みを浮かべる。
「さぁ、待たせちゃったわね。 貴方も、味合わせて?」
唇に感じた水っ気に舌をペロリと這わせ、アイリスに振り返るリア。
「っ!」
どうやら待ちきれなかったのは自分だけではないようだ。
アイリスには何もしていなかったがその恍惚とした表情に加え、花が綻ぶような表情を見て準備は既に万端、雰囲気にやられてしまったのかもと結論付ける。
「はい、お姉様ぁ!」
猫なで声を上げながら両手を広げてリアへとダイブしてくるアイリス。
彼女自身小柄であり、リアのレベルからSTRはかなり数字にもなっている為、アイリスは羽の様に軽い
「あら、アイリス貴方もしかして・・・・」
しかし、気のせいでなければ抱き合った時にリアの腕に僅かに湿った感触が感じられたのだ。
「あっ、その、我慢できなくて・・・・。 お嫌でしたら」
「いいえ、そんなことないわ。 ふふっ、良い匂いがしたから何かと思ったわ」
(この子可愛すぎるでしょう!! 数百年生きててこの反応が出るってどういうこと!? 今まで満足させられる相手が居なかったとか? いや、今はそんなことどうでもいい! 雰囲気に酔ってるのはあるだろうけど、これは美味しく、そして存分に頂かないと失礼だわ!)
リアの肩に顎を乗せるようにして抱き着くアイリスの灰銀色の髪が目の前をゆらゆらと揺れ、彼女の体から発せられる甘ったるい香りとは別に爽やかな良い匂いが鼻腔をくすぐる。
表情は見えないが、髪の隙間からのぞき見える赤い耳からそれなりに羞恥心に駆られてるのは想像に難くない。
「はぁぁむっ」
「あっ・・・・、んっ、・・・・あはぁっ」
驚いたのは一瞬、それからは驚くほどの順応性で悶えながらも楽しみだすアイリス。
肩から顎を放すともっとと言わんばかりに首を逸らし、更に深くまで吸血を求めるかの如くぐいぐいと首や身体を押し付けてくる。
(んっ、この子、触発されちゃった? 凄い勢い・・・ふふ、でもいいわ。 それなら手加減なしで頂こうかしら)
「はぁはぁ、んんぅっ、・・・・ぁあっ、んっ」
常軌を逸した様子で荒い吐息を漏らし続けるアイリスに無遠慮に吸血を行い、その勢いから長くはできないだろうと判断する。
以前に吸血した時より甘く感じる彼女の血。
同じ苺のような味でも今回のは熟しきって先端の糖度を極限まで凝縮したような甘味。
まるでアルコールのような脳を麻痺させてくるような感覚と、熱く感じそれでいて途中で辞めることを躊躇わせるような中毒性のような何かが感じられる。
(これは、甘すぎる! いまのアイリスの状態から影響を受けてるのかしら? いわゆる発情の味とでもいうの? 正直ずっと、このまま食べてしまいたいけど)
すると、すとんと抱きしめているアイリスから力が抜けきり、だらんと体を預かった状態に気づいて口元を放す。
「ぱっ、はぁ・・・・はぁ、アイリス、貴方の甘すぎるくらい美味しいわ」
喉が潤いすぎてるのを感じながら、眼の前の恍惚とした表情で蕩け切ったアイリスに
「・・・・はぁはぁ、くうぅっ、んっ。 ・・・・そうなの、んっ、ですか?」
「えぇ、とっても甘い。 思わず貰い過ぎちゃったもん」
思わず、というのは本当、だがアイリスの態度にリアも触発されやりすぎてしまったのは否めない。
これ以上はこの子が干からびてしまう――比喩的な意味――と、お開きにしようとレーテ同様に力無くベッドに仰向けになっているアイリスの頭を撫でる。
ふわふわとした触り心地の良い感触に愛おしさが込み上げ続け、気持ちよさそうに目を細める彼女の様子に可愛いが思考を支配し始める。
そうして一度手を放そうとすると、咄嗟にその腕を掴まれるのだった。
「お姉様・・・、もう1回だけ、・・・・んっ、はぁ・・・、私を頂いては・・・・くれませんの?」
ぐったりとした様子からは想像もできない力で潤んだ瞳を切実に向けてくるアイリス。
彼女が望んでいるのであればリアとしても異論はない、むしろ大歓迎だ。
ただ、正直吸血自体そこまで経験がなく、あったとしても
「あら、いいの? 結構いただいちゃってるわ。 装備に関しての交換条件としては十分に満たしている――」
「私は大丈夫ですわ。 それより、あぁっ、――もっと、して欲しいのです」
切なさを感じてしまう程に渇望し懇願してくる彼女に、体調以上に願いを優先したくなる。
本来であれば彼女の体調を心配するべきなのだろう。
ゴクリッと無意識に喉が鳴り、知らず内に笑みがこぼれ出る。
彼女が上位の吸血鬼である以上そう簡単に死ぬことはない、そんな言い訳が頭に浮かびながら自身の欲求を優先してしまうのは、私の心が変わってしまった何よりの証拠なのかもしれない。
それからの記憶はあるにはあるが朧気であり、リア自身それなりに雰囲気に呑まれ本能と欲望に酔ってしまってたことから細かいことはあまり覚えていな
い。
だだ、きっちり第二ラウンドまでアイリスを味わい尽くして存分に満たされた後、しばらく余韻に浸ってからは気を失った2人と密着してその暖かな体温と香りを感じながら床についたのを覚えている。
就寝したのは、既にカーテンの隙間から強い陽光が差しているのを認識してからだった
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