第八十一話 エルシュタットに一時帰還
幻諜の兵舎を出た俺は、浮遊移動魔道具に乗ってエルシュタットに帰った。
一晩休憩して次の日、俺はまた冒険者ギルドへと向かった。
国王から直接報酬を受け取ることについて、一応言っておこうと思ってのことだ。
受付で例の依頼の件だと話すと、いつものごとく個室でローゼンが対応してくれることになった。
素体の討伐報告をして以降のことを、順を追って話していく。
「……というわけで、最終的には幻諜の長官からパニッシャーコインを貰いました」
チャレンジコインの方はあまり他言しないでくれと言われているので伏せたが、パニッシャーコインの方なら話しても大丈夫だろう。
そう思い、俺はその話で報告を締めくくった。
「ブッ……パ、パニッシャーコイン貰ったのか!? それも三枚も!?」
「はい」
「おいおい、あれは一枚で超法規的措置を取らせられるような代物なんだぞ……。それを三枚もって、どんな厚遇だよ……」
三枚貰ったのって異常なのか。
へーと思っていると、ローゼンがこんなことを切り出した。
「まあ、そっちの状況はよく分かったよ。報酬の体系についても承知した。ところで実は……ちょうどいいところに来てくれたと思っててな。こっちからも、話しておくことがあるんだ」
「なんでしょう?」
「まず一つは……洞窟の調査依頼の報酬が正確に算定されたので、それを渡そうと思う」
……おお、その話か。
つい数日前の出来事のはずなのに、いろいろありすぎてなんか遠い過去のことみたいな感覚だな。
「報酬額は、魔物の素材の分も含め総額で1億293万パースだ。全く、一回の報酬額が九ケタに上る奴なんて、後にも先にもジェイドくらいのもんだろうな」
報酬額もすごかった。
てかこれ……前の拠点の調査依頼報酬の倍額くらいあるよな。
そんなにもらえていいのだろうか。
「ま、新しい資源を見つけた時の報酬とは、得てして高くつくもんだがな。これくらいの報酬は渡しても、年月をかければ回収できるくらいの利益は簡単に出せる見込みだ」
そういう事情があるんだな。
もらえる物はありがたく、「マネーカウント」で金額が正確なのを確認しつついただくことにした。
でもこれ……「まず一つは」って言ってたってことは、今回これだけじゃないんだよな。
他に何があるんだろう?
などと思っていると、ローゼンがその説明に入る。
「そしてもう一つは……ランクアップについてだ。ジェイド、お前は晴れてSランクとなることになったぞ」
「え……そうなんですか?」
「ああ。通常は、Sランクになるには様々な条件をクリアした上で、難関試験を突破する必要があるのだが……実は一個だけ、それらを全て免除でSランクになれる条件がある」
「……どんな条件ですか?」
「国が出した特殊な指名依頼で、重要な役割を果たすことだ。ジェイドの場合はもちろん、今回の依頼だな。昨日の途中報告からでも、例えば素体の撃破だけでもその条件は満たすことになる。その時点で昇格確実なので、昨日急ピッチで用意したんだ」
ローゼンはそう言って、新品の冒険者証をマジックバッグから取り出した。
「もともとただのAランクではなく、一ツ星討伐者でもあったし……パニッシャーコインなどの報酬をもらった後だと、ショボく感じるかもしれんがな。まあそれでも、AランクとSランクでは制限なくやれることの範囲も違ってくるし、役に立ててくれ」
そして満面の笑みで、冒険者証を手渡してくれた。
先読みで準備してくれてたとはな。
このことで数日手続きに時間がかかるとかじゃないのは、正直ありがたいな。