第二十九話 出発までの三日間
クイズ
「永久不滅の高収入」の名前の元ネタは何でしょう?
(ヒント:「永久不滅」は◯◯◯の花言葉)
「良かったです! ……最近では、ギルド職員の間では『ジェイドって冒険者がとにかく常軌を逸している』って話題で持ちきりでしたし。そんなジェイドさんが参加してくださるとなれば、心強いことこの上ないです!」
俺の参加表明に対し……メイカさんは、嬉しそうにそう言った。
……とにかく常軌を逸しているって何だよ。
そうツッコみたい気持ちにもなったが、まあツッコんだからって何かが変わるわけでもないので、そこはスルーすることにした。
代わりに俺は、こんな質問を投げかけた。
「ちなみに討伐隊は何日後に出発ですか?」
討伐隊の出発日次第で……撤退手段獲得用のスキルポイントを集めるので精一杯となるか、もう少し臨機応変に動けるだけのスキルポイントを確保できるかが変わってくるからな。
一日変わるだけで結構大きな違いが出るので、聞いておきたいと思ったのだ。
「三日後の予定です。三日後の朝……ギルド所有の訓練場に集まっていただければと」
「分かりました」
メイカさんの答えを聞いて、俺は少し安心した。
三日もあれば十分だ。
撤退手段用のスキルポイントだけでなく、ある程度なら戦闘中必要に応じてスキルを獲得したりするくらいの余裕分も稼げる。
「ありがとうございます」
俺はそう言って、ギルドを後にした。
◇
それから三日間……俺は、とにかくメタル系魔物相手にスキルポイントを稼ぎ続けた。
一番多かったのはもちろん、メタルライノとの遭遇だったが……それ以外にも、時々別のメタル系魔物を倒すこともできた。
中には、「ステルスサーチ」を強化してなければ引っかからなかったであろう魔物も数体いて……その中でも特に珍しかったのは、メタルリッチという魔物だった。
メタルリッチは、メタル属性と死属性の複合なのだが……基本的に複合属性の魔物は、強さの割に魔石の質が高くなっている。
そんな魔物と遭遇できたおかげで、俺は今の実力(というか、それにあわせた狩場)ではまず手に入れることができないはずだった魔石を、奇跡的に手に入れることができたのだ。
メタルリッチから採れた高品質な魔石があれば……実は、「永久不滅の高収入」討伐の際役に立ちうるとある魔道具を作成することができる。
つくづく、このタイミングであの魔物に遭遇できて、ラッキーだったというものだ。
ともあれ……まずスキルポイントについて言えば、俺がこの三日間で貯めることができたのは265300ポイント。
ゴールデンメタルライノを倒した際手に入ったポイントにはほぼ手をつけていないこと、そしてキャッシュバック50を持っていることも考えれば、今俺は実質600000ポイントほど持っている計算になる。
俺が撤退手段にと考えているスキル——「虚空の電光石火」は100000ポイントで取得できるので、退路は余裕で確保できたってわけだ。
ちなみに「虚空の電光石火」は、無双ゲージを消費して一定時間完全な気配断ちと超速移動ができる、「撤退用の国士無双」とでもいえるようなスキル。
まあ、無謀である可能性のある戦いは「永久不滅の高収入」絡み以外ではするつもりがないし……勝てるならこんなスキルに100000ポイントも費やしたくないので、窮地に陥りでもしない限りは実際の取得はしないつもりだがな。
「スキルコード2014 『暗殺術』強化×10」
とりあえず……今の段階では、予めやるスキル強化は「暗殺術」を少しだけとしておこう。
そして現場にて、必要に応じて対人戦に必要なスキルを取得・強化しつつ戦ったり、最終手段に「虚空の電光石火」を取得したりしていくのだ。
敵のレベル次第では杞憂かもしれないし、そうだった場合には、普通に対魔物戦で役に立つ妨害効果の取得に回したいからな。
今日までに集めたスキルポイントはあくまで予備という扱いで、明日の戦闘に挑もうというわけである。
ついでに言えば、ある意味スキルポイント集めより大事な無双ゲージだが……こちらはもちろん、満タンにしてある。
そのために、最後に遭遇したメタルライノは倒さず帰ってきたのだが……まあ明日の戦いでは初手で「国士無双」や「虚空の電光石火」が求められる状況になるかもしれないことを考えれば、そうする価値はあったと言えるだろう。
夜になって、宿に帰還すると……俺は作業部屋で待っていたジーナに、いくつかの魔道具作成を頼むことにした。
「この魔石に、この魔法陣を刻んでおいてください」
そう言って、まず俺が渡したのは、メタルリッチの魔石と「エリアナイザー」という魔道具の魔法陣の絵。
「エリアナイザー」は、魔法を範囲化する効果を持つ魔道具だ。
この魔道具で広がる魔法の効果範囲は、魔石の質によって変わるのだが……メタルリッチの魔石を使用する以上、拠点が馬鹿でかくない限りは拠点全域が範囲内となるだろう。
想定している使い道はこんな感じだ。
例えば明日拠点内に突撃した時点で、新たな強化兵を作るための儀式が行われている最中だったとすると……この魔道具で「術式崩壊」を拠点全体に効かせてやることで、その儀式を停止させることができたりする。
俺に歯が立たないクラスの構成員が、ちょうど作られる最中って可能性も0とは言えないからな。
これを準備しておいて、損は無いだろうというわけだ。
「分かりました。これだけでいいのですか?」
「いえ。あと……『エリアメナス』も、何個か作っておいて欲しいです」
そして俺は「エリアナイザー」の他に、エリアメナスも複数個注文することにした。
「永久不滅の高収入」の拠点には……強化兵だけでなく、強化された使役魔物も高確率で配置されている。
だが、そういう魔物は、儀式を執り行った構成員を殺せば強化が解けるようになっているのだ。
儀式で強化された魔物を、マトモに相手するのはちとしんどいからな。
そういうのが出てきそうな場面(NSOでの経験則から、どこどこでどんな魔物が出てきそうかはだいたい分かっている)ではこの魔道具を使い、気を逸らさせてスルーしようというわけだ。
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