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第二十二話 国士無双スクラップ

お待たせしました!

 左回りに山を登りながら、中腹くらいまでやってくると……ある時点を境に、一気に景色が変わった。

 生い茂っていた木々が完全になくなり、ゴツゴツとした岩肌が一面に広がる。


「いるとしたら……この辺りからだよな。サーチ」


 そんな光景を眺めつつ、俺は探知魔法をオンにした。

 俺が狙っている「スキルポイントがガッツリ稼げる魔物」は、NSOではこういった場所に生息する傾向があったのだ。


 探知魔法を発動しっぱなしのまま、ジグザグと移動して魔物を探していると……5分くらいして、最初の魔物の反応があった。

 そこに直行すると、全身からギラギラと光沢を放つサイの魔物が。


 これが俺の目当ての魔物——メタルライノである。


 メタルライノは、皮膚の代わりに全身が厚さ十数センチの金属で覆われたサイの魔物だ。

 その金属の主な成分は鉄だが、関節の付近など、一部はミスリルでできている(合金というわけではなくミスリルの部分は純ミスリルなので、分離は容易である)。


 この魔物は金属素材として高く売れることから、対メタルの相性がいい冒険者には人気の討伐対象だ。

 だが実はそれだけでなく、ノービスにとってはもっと重要な意味がある。

 この魔物を含め……メタル系の魔物は、基本的に獲得スキルポイントがめちゃめちゃ美味しいのである。


 どのくらいかというと、……メタルライノの場合、一体倒すだけで5000ものスキルポイントが手に入る。

 10体も倒せば、従来のファントム狩りの一日の稼ぎに匹敵するだけのスキルポイントを得ることができるのだ。


 そしてメタルライノは、サーチで効率的に探せば平均20分に1体は見つかるので、一日あたり10体倒すのは楽勝だ。


 それだけでなく……メタルライノの生息域には、メタルライノより強力でスキルポイントも美味しい魔物も少なからず存在する。

 それらも加味すれば、ここでの狩りは、ファントム狩りの数倍は効率的に行えることになるのである。



「さてと。まずは……三日月刃」


 俺はまず、メタルライノの脚の関節めがけ、三日月刃を4回飛ばした。

 するとメタルライノの四肢の膝関節は全て半壊し、メタルライノの動きは一気に鈍くなった。


 メタルライノの関節付近は……身体を動かせるようにするため、複数枚の薄い金属が層になるような構造となっている。

 つまりメタルライノの関節は、他の身体の部位に比べ、構造的に脆いのだ。

 そこに、あまり効率的にダメージが伝わらないような角度から斬撃を加えてやれば……このように、関節を簡単に半壊させることができるのである。


 ちなみに半壊に留めたのにもちゃんと理由はある。

 メタルライノの主な攻撃方法は、「頭部を下から上に突き上げて相手を投げ飛ばす」というものなのだが……この時メタルライノは、全身を上手く使って効率的に力を伝えるようにしている。

 そしてメタルライノの脚関節を破壊した場合、メタルライノはその「全身の連動」が上手くできなくなり、攻撃力が落ちるのだが……関節破壊を中途半端に留めた場合だと、無双ゲージの溜まり具合上のダメージ計算は、全身の連動が完璧にできているときのままのものとなるのだ。


 要は、脚関節の破壊を半端にしておくことで、より少ないダメージで無双ゲージを溜めることができるというわけだ。

 このひと工夫と「フォースリダクション」の相乗効果があれば、一回の無双ゲージ満タンあたりヒールが一回いるかいらないかというレベルまでダメージを減らせる。

 今のはその下準備だったというわけである。


 というわけで、ここから本格的な交戦だ。


「フォースリダクション」


 俺はメタルライノに攻撃力低下の魔法をかけ、メタルライノの近くまで距離を詰めた。

 メタルライノは、目の前に来た俺に執拗に攻撃を繰り返すが、俺の方はといえばガードに使っている両腕に鈍い痛みが走る程度。


「MPには余裕があるし……ヒール」


 ゲームと違って実際に痛みが走る分、慣れるまでは相殺のために多めにヒールを使おう、などと考えつつしばらく耐えていると……無双ゲージが完全に溜まった。


 ここからは、反撃だ。


「国士無双」


 俺はそう唱え、奥義を発動した。



 こうなれば……あとはもう単純だ。

 今の俺の「国士無双」があれば……メタルライノ程度なら、パワーだけでごり押して潰してしまうことができる。


 メタルライノの足元に結界を一枚展開すると……俺は空中にジャンプし、空で結界をもう一枚展開してそれを蹴って急降下し、メタルライノを思いのまま踏んづけた。


 それにより、メタルライノを覆う金属は跡形もなく変形し……メタルライノは絶命した。


 スキルポイントを確認すると、確かに1510から6510に増加していた。

 討伐完了だ。


「……そういえば、そろそろストレージも強化するか」


 とりあえず今回手に入れたスキルポイントに関しては、俺は「ストレージ」の強化に費やすことにした。


「スキルコード1536 『ストレージ』強化×15」


 スキルポイントは5400消費、残りは1110だ。

 メタルライノは、ファントムコアとは比べ物にならないくらい嵩むからな。

 これくらいは強化してもし過ぎとはならないだろう。


 強化したばかりの「ストレージ」にメタルライノを収納すると、俺は次のメタルライノを探すべく再度「サーチ」を発動した。

 今日一日はこんな調子が続くだろうが……せっかくなら、メタルライノ以外のメタル系にも出会ってみたいものだな。


※金属集めが始まってるように見えるかもしれませんが武器は作りません。全部素材は売るので安心してください。


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